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文学

老婆の末路

作者: 千路文也


 とあるスーパーにいつまでも自分の地位から離れずに若者に職を渡さない老婆がいた。その老婆は常にニタニタと気味の悪い笑みを浮かべながら若者に近づいてボディータッチを行い、自分のモノにしようと企んでいる。その企みなど若者側もお見通しなので何とか老婆に復讐しようと画策していた。そして、老婆にギャフンと言わせる名案を思い付いたと思うと、若者達が一斉に老婆の周りを囲んでしまう。


「あんたら何やってるの。仕事の邪魔して!」


 無論、人の邪魔をして仕事の妨害をしているは老婆の方だ。それなのに自分は悲劇のヒロインで誰の迷惑もかけてないとばかりの言葉を言うのだから許しがたい存在なのは言うまでもない。怒りが収まらない若者達は唾を撒き散らしながら老婆に向かって暴言の限りを尽くす。


「辞めろ、辞めろ、辞めろ!」


 若者達は手を叩きながら老婆に向かって暴言を言い続けた。こういう策略的な老婆に限って打たれ弱いのは周知の事実であり、老婆は濃い化粧をくしゃくしゃにしながら眼球に涙を浮かべて座り込んだ。ひくひくと涙を流しながら、こう言うのだ。


「あたしが何したって言うの!」


 この老婆はまったくもって反省の色を見せない。自分が非劇のヒロインだと思い込んで自分の考え方だけが正しいと思い込んでいる典型的なパターンだ。容赦ないブーイングを与えるだけでは手ぬるいと判断した若者達は老婆の四肢を掴んで羽交い絞めにしたと思うと、拳の雨を振らし続けた。醜い老婆は殴られた事によって更に顔を醜くして顔を真っ赤に腫らせていた。だが、これだけでは日頃の恨みなど晴らせないと思った若者達は、顔面から血を噴出した老婆を外に連れ出しお客さんの前で残酷ショーを繰り広げたのだ。老婆がいつも通勤している車に老婆の身体を縛りつけ、容赦なく石ころを投げつける。それを見ていたお客さんも日頃の恨みとばかりに石ころを投げつけ始めた。


「死ねええええ。クソババアアアア!」


「いつもいつもお客様に対して無様な接客態度をしやがって!」


「お客様は神様なんだよ。てめーはその常識を知らねえのか!」


 無慈悲なお客様達は石ころをお持ちになって、老婆の身体めがけて直接クレームを叩きつけていた。放物線を描いて投擲された石ころはフロントガラスに当たってガラスが砕け散ると老婆の顔面に無残にも破片が飛び散る。既に老婆の顔は自身の血によって真っ赤に染まっているではないか。若者達及びお客さん達が騒いでいると店長やその他の社員達も集まってきた。皆、日頃から老婆に不満を持っていたようで地面に落ちているペットボトルやアルミ缶を手に持って至近距離で老婆に投げつけていた。普段温厚なおばちゃん達も目の色を変えて老婆を責めたれる。


「おどれ、いつもいつも廃棄商品をせびりやがって。変わりに空き缶をくれてやる!」


「日頃の不満を受け取りやがれ、このくそったれババビッチが!」


 お客さんのみならず店長や社員さえもを巻き込んだ公開処刑は夜遅くまで続いた。既に虫の息となった老婆は翌朝、海鳥やカラスに眼球をつままれ、肉片を食われていた。近所で犬の散歩をしている飼い主ですら何食わぬ顔で老婆の死体に近づくと、犬に糞をするように指示していた。


「どれどれ、ワシもここでションベンでもするかの」


 老婆の無残に壊された顔面に向かって、犬の飼い主は黄色の液体をぶっかけるのだった。こうして近所のスーパーには平穏が訪れて、老婆の操り人形になる者は現れなかった。




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