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第九話:真夜中の決意


早いけど、短いです

どうして、こうなった?


では皆さん。大変申し訳ないが、早速回想に突入させていただきたい。



「皆さんスゴいですね!」

「いや、かなり苦戦した上に、結局倒せてねぇんだが・・・」

「それでもスゴいです!」

さっきから俺たちのことをべた褒めなニーナだが事実。あの時、魔物が逃げてくれなかったら・・・俺はどうなっていただろう。


・・・ゾクッと、背筋に寒いものが走る。

あまり、考えないでおこう。今は、もう過ぎたことだ。

「では、村をあげて宴を開きましょう!今夜は泊まっていってください!」

思わぬ所で寝床が手に入り、じゃあ是非!となった。


・・・そうだ。そこで夜中までドンチャン騒ぎして、疲れたから途中で寝させてもらったんだ。

リリアとサタラは別の部屋があてがわれ、俺はニーナの家の寝室で寝た。

そこはベッドではなく布団だったが、布団で寝るのは小学生以来。懐かしさに包まれながら、疲れからかすぐに、深い眠りに落ちた。



実に平和的な後日談だ。

うん。ここまではいい。

なんの問題もない。・・・・・・はずなんだが。


夜も更けたそんな頃。太陽が昇るまでに、あと何時間だろうか・・・。

今、俺の近くにあるのは―――枕元に着替え、その横にはエクスカリバー。

敷き布団・掛け布団・枕の睡眠三種の神器の他に、なにか温かいものがある。

柔らかくていい匂いがする。いい柔軟剤使ってますね!


・・・お分かり頂けただろうか。

「・・・すぅ」

俺と同じ布団で、俺の腕の中で、可愛らしい寝息をたてているのは、他でもない。村長ニーナだ。

前にもこんなことあったっけ?なんか近しい感じの・・・。

つーか寝床でのトラブル多すぎだろ・・・。なんだ?今流行りなのか?マイブームなのか神様よ。


と、現実逃避もほどほどに。どうしようかなぁ・・・。ニーナの寝床は、俺の隣の部屋だったので、きっと間違えたのだろう・・・。なんて適当に推理するくらいには、俺は落ち着いた。

かなり熟睡しているようで、ニーナは全く起きる気配がない。問題なのは、この状況を誰かに見られてしまうことだ。

セクシャルハラスメント、略してセクハラとしてボコボコにされることは目に見えている。最悪殺されるかもなぁ・・・。

「ん・・・んぅ・・・」

目の前には、まだ幼い、しかし将来は確実に可愛らしい美少女になるであろうニーナの、あどけない寝顔がある。

が、なぜか緊張しない。子供とはいえ、こんなにも可愛い女の子と、同じ布団で寝ているなんて、緊張と興奮とその他諸々の感情が爆発して気絶してもおかしくないのに・・・。

「・・・あっ」

そこまで考えて。俺はようやく原因がわかった。

(・・・妹に、アイツに・・・似てるんだ)

そう。この気の抜けた、安心しきった寝顔は、かつて俺が生きた世界、その世界に取り残してしまった、妹の表情にそっくりだった。顔の造形こそ違うものの、表情・雰囲気何もかもが・・・そっくりだった。

(もう・・・会えないんだろう、な)

改めて、その事実を確認した俺の心には、よくわからない感情が生まれた。

突然胸の奥に現れたこの感情が、なんと表現するものなのか理解できなかった。が、1つだけはっきりしているものがある。

(もう一度・・・会いたいな)

今のこの生活に、環境に、なにか不満があるわけじゃない。

この世界には、今までに無かったものがたくさんあり、俺の心を躍らせた。

神の願いを承諾したのは自分だし、リリアだってわざわざ危険な旅についてきてくれた。俺を独りにしないでくれた。サタラも、エクスだってそうだ。それに、ここにいるニーナや村の人、ここにはいないアンタルや城の人や町の人たち。

今までにない、未知の体験も、これまでだって経験したことのあることでさえ、この世界では新鮮さを感じる。


でも・・・。

前の世界にしかなかったものだって、あったはずだ。どちらも素晴らしい世界だ、そこに優劣なんてない。でも、懐かしく感じてしまうのだ。前の世界・・・俺が生まれ、育ち、生きてきた世界が。

この気持ちにも、いつかは決着が付くのだろうか。その時俺は、一歩成長するのだろうか?


しかし。この胸に残った、言いようのない感情を、捨てたくない。と思っている自分もいた。


結局、俺は子供なのだ。何も知らず、何も理解できず、ただただ己の感情に動かされる餓鬼がきでしかないのだ。

が・・・あの時。

神様に、この世界を救ってくれと頼まれたときは微かに。

そして、あの破壊されたセテロの町と、傷付いた人たちを見て、助けたい。と、心の底から湧き上がったあの気持ちが間違っていたなんて、俺は思わない。思いたくない。

だって。俺自身があれを否定したら、全てが嘘になるじゃないか。

俺たちが必死で戦ったあの時間が、あそこにいた人たちの想いが、この世界が・・・。


だから俺は、戦い、この世界を守る。

もしかしたら、あの世界に帰れるかもしれない。という淡い希望もあるが、この世界を救いたいという想いもある。

だって。

たとえこの世界が、俺の生まれた世界でなく、俺とは別の存在だったとしても。


俺は今。間違いなくこの世界で、生きているのだから。



俺が再び目を覚ましたのは、朝日が昇り始めたのであろう、淡い光に包まれた時間帯だった。

俺の腕の中には、いまだニーナが、俺の腕を枕にして寝ている。

夜中に目覚めた時は、腕枕なんてしていなかったので、きっとニーナが寝ぼけて、体勢が少し変わったのだろう。

というか、俺の腕なんかで寝て、首が痛くなったりしないのか?

そう考えた俺は、そっと腕を抜き、ニーナの頭と敷布団の間に、枕を通す。

「・・・ん・・・ふぇ?」

と、どうやら目が覚めてしまったらしいニーナが、可愛らしい声を出した。軽く悶絶しそうなのを押さえ込み、とりあえず寝起きの挨拶をした。

「おはよう、ニーナ。いい夢見られた?」

という俺の声を、しばらく頭で解析したあと、顔が急速に赤く染まり、しかし早朝だと気付くと、声を張り上げることはせずに小声で、しかし十分に驚きが感じられる声で聞いてきた。

「なななななな・・・なんでいるんですかリュージさん!?」

と、少しずれた質問をしてくる。寝起きで、まだ完全に覚醒していないようだ。

「・・・ニーナ。ここは、俺にあてがってくれた部屋だろ?」

「・・・え?」

ニーナは、ゆっくりと部屋を見渡す。しばらくの沈黙があったあと・・・。

ひやぁ!という悲鳴に似た声と共に、布団から飛び出した。

「ごごごゴメンなさい!夜中にお手洗いにいって、寝ぼけて間違えたんだと思います!本当にゴメンなさい!」

そういって土下座をするニーナ。いや、そこまで謝らんでも・・・。

俺は上体を起こし、ニーナの頭を撫でてやった。

「謝らなくていいよ、ニーナ。俺、夜中に目が覚めて、そのときにもう気付いてたけど、そのまま寝たし」

「気付いたなら起こしてくれれば・・・」

「いや、あまりにも可愛らしい寝顔だったんで、起こすのが躊躇われた」

「か、可愛いって///」

お~、顔がさらに赤くなっていく。

「まぁ、目も覚めたことだし、俺はそろそろ起きるかな。ニーナはどうする?」

「あ・・・えっと、私ももう起きます」

「そうか。じゃあ出よう・・・とっ、その前に」

「・・・?」

俺は、壁際に歩いていき、意識を集中させる。

「あの・・・なにを?」

「ん?あぁ・・・いやちょっと、外に人の気配がないかと・・・」

「え?」

何のことかわからない。という顔をするニーナ。

「このまま、二人一緒に、同じ部屋から(・・・・・・)出て行くのを誰かに見られたら、マズいだろ?」

「・・・あ」

と、そこでようやく気が付いた。というような声を上げ、急激に顔を赤らめる。朝から大変だなぁ・・・。

「よし。誰もいなさそうだな。行くよ、ニーナ」

「あ・・・はい///」

そういって、俺たちは廊下に出て行った。

あ、着替えとエクスは持ったよ?



仕事がある、と言ったニーナとは途中で分かれ、俺は屋敷の裏庭に移動。今、刀と剣の朝稽古をしている。

「ねぇ、リュージ君」

「ん、どうした?」

一通り終わって少し休憩、というところで、エクスが話し掛けてきた。

「昨晩、なにか難しいこと考えてなかった?」

あぁ、あのことか。

「さすが以心伝心、俺のパートナー。全部お見通しってわけか」

「いや、内容まではわからないよ。ボクも寝ていたからね。ただ、そんな感覚が伝わってきた気がしただけさ」

そういうエクスの顔は、心配してくれている表情だった。少し・・・嬉しいな。

「ありがとな、心配してくれて。でも、大丈夫だ。もう結論は出たから」

そういうとエクスは、安心した表情を浮かべ、それは良かった。と言った。


そう、自分で出した結論だ。だからもっと・・・強くならなきゃな。

「よし!んじゃもうひと頑張り、いきますか!」



朝食後、リリアが集まって欲しい、というので、朝食後、昨晩リリアとサタラが寝た部屋に三人で集まった。

「昨日戦った魔物について・・・少しわかりました」

ん?わかったって言うのに、なんか元気がないような・・・。

「どうした?」

「いえ、少し驚いただけです。今、説明します」


「まず、昨日の魔物。この世界ではバーンアイズというらしいです。元々の生息域は、ここよりもさらに北のほうで、数が少なく、稀少だそうです」

バーンアイズ。直訳で【燃える目】か。

ちなみにこの世界には、英語と同じ物が存在する。この辺りじゃ公用語ではないらしいが・・・。

「そして、もっとも驚く情報が・・・」

なんとなく。本当になんとなくだが、ごくりと息を飲み込んだ。


「昨日戦ったのは、まだ子供だったようです」


・・・は?子供?昨日のが?

「・・・マジかよ」

隣でサタラが毒づく。

俺も驚きを隠せない。

「あれで子供って・・・成長したらどうなるんだ!?」

「そこまではわかりませんが・・・昨日戦ったのは、生後数ヶ月から一年ほどのものです」

・・・二度と会いたくない。成長したものにも会いたくない。

「つーか、じゃあなんでこんなところにいたんだ?もっと北にいるんだろ?」

そう尋ねるサタラに、考えてました。とばかりに、リリアが答える。

「おそらくですが・・・逃げてきた。という可能性が高いと思います」

「逃げて・・・って、あんな強い怪物が、何から逃げるんだよ」


「・・・魔王じゃないでしょうか」


・・・あ。確かに、北のほうっつったら魔王のテリトリーだ。

「てことは・・・魔王はあれよりももっと強ぇってことか!?」

恐怖でしかねぇよそんなの。歩く災害か?

「・・・とりあえず、今のままじゃマズいってことだろ?」

サタラが確認する。そうだ。いくら早く着いても、弱ければなんの意味もない。

「えぇ。ですから、もうしばらくここに滞在し、力を蓄えましょう」



「・・・てなわけなんだが」

ニーナに一通り説明をした。ちなみに、俺が転生者でリリアが天使でサタラがもと魔人でエクスが剣で・・・ってことも説明した。その上で、もうしばらく滞在したい。と言った。

「・・・わかりました。貴方方の正体には驚きましたけど、信じます。皆さんいい人ですから」

そういって笑ったニーナは、とても可愛らしいとともに、『あぁ、なるほど。これは村長だわ』と納得してしまうような、威厳とはまた違う、優しさのようなものを感じた。

「それに、皆さんは恩人ですからね。好きなだけ滞在してください。村の皆も喜びます♪」

「・・・ありがとな」

俺がお礼をいうと、ニーナはニコニコと笑いながら、いえいえ。といった。本当にいい娘、というかいい人だ。


しばらく滞在する、ということは、ここで何らかのイベントが起きるということかぁ!?


えぇ~今回は、基本的にリュージ君パートなので、皆での次回予告はナシです。


それでは皆様。次回もよろしくお願いします♪

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