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第四十八話:To the next stage

ここからが俺の本気だ!(次のステージは次話からです)

「・・・・・・・・・」

「やぁ、君たち。今回はどうやら、色々と大変だったみたいだね。まずは、お疲れ様と言わせてもらおうか。イレギュラーの存在は、我々の方でも感知できているよ」

「え、えぇ、はい。これはどうも・・・・・・」

 答えたリリアも、どこか目が泳いでいる。後ろに立つ俺達も、また同様だ。あのレーヴァテインですらも、僅かに頬を引き()らせている。

「あの、ドメクさん?その男は・・・・・・」

 高い背丈に中性的で整った顔立ち。大きな瞳に、どこか虚ろな光を灯しているソイツは。

「やぁ、リュージ君、さっきぶりだね~・・・・・・・・・あ、キラッ★」

「いや、無理しなくていいって」

 そのあまりにも惨めな姿に、思わず同情してしまうぜ。なぁ、おい。バール(・・・)よ。

「ドメクさん?その、説明をしていただいても?」

 俺たちを代表して、リリアが戸惑いながら、バールを指差す。それに対してドメクさんは、あくまで笑顔を浮かべながら答える。

「うん?ああ、この男のことかい?彼はねえ、知っていると思うが、今回キミ達を混乱させた元凶だよ。たまたま(・・・・)わたしの近くに現れた彼を、たまたま(・・・・)わたしが得意とする拘束魔法を使って、たまたま(・・・・)うまく捕らえられたというだけの話だ」

 この人、たまたまっていうけどそれってだいぶスゴイことしてるぞ。俺があれだけ手を焼いたバールを、そんなさっきの今で捕まえたって・・・・・・、実質、一発で仕留めたようなもんだろう?や、やっぱ化け物だわ、この人。俺の後ろでシエンが「ほう。なかなかやるな」なんて呟いてるし。あ、好戦的な目をしている。放置しておくと、このままドメクさんにケンカを吹っかけそうだ。オマエ、ついさっきまで十一回死んだとかで元気なかったくせに。

 身体のどこかを何かで拘束されているようには見えないバールだが、なるほど。ただ立っているだけでも、その姿勢が不自然だ。勝手に動こうとすると効果が発揮する、自分の意思で自身を拘束させるタイプの魔法のようだ。少しでも勝手に動けば痛みが走るとか、そういう類か?

「わたしとしては、彼の処遇は君たちに委ねようと思うのだが、それでも構わないかな?」

 ドメクさんの提案に、俺達はただただ、頷くしかなかった。


 ◆


「さて。それじゃあ、事情聴取といこうか」

 腕組みをして、拘束したバールを睨み付けるシエンと俺たちは、ナーガ警備隊中央総隊本部の一室を借りている。

 俺たちは、コイツから話を聞きだす必要がある。

 ここに来るまでに、シエンが俺たちに言ったのだ。

 森が火事になった、あの日。俺がフィールと出会い、そして、エクスがいなくなった、あの場所に。バールがいたかもしれない、と。

「あはは、みんなしてそんなに睨まないでよ~怖いなー♪」

「なるほど、これは少し、頭にきますね。エクスが言うのとどうしてこうも違うのでしょうか」

 リリアが、本当にイラついたような表情を見せる。

 でも、今そんなことどうでもいい。いや、不機嫌になったリリアの表情も非常に可愛らしいのだが、それはあとでじっくり堪能するとして。

「おい、バール。エクスについて、洗いざらい吐いてもらうぞ」

「わお怖い★そんなに脅さなくたって吐くさ。ここまで追い詰められたらそうするしかないしねー」

「あ、そのまえにフィール君♪キミとは久しぶりだねー★あの時はどうも、勝手にキミを使って悪かったね♪」

「は?フィール、オマエ、コイツと会ってるのか?」

 思わず後ろに立つフィールを振り返る。確かに彼女は、バールに操られていたらしい。しかし、直接会っていたのか?いや、そういえば、初めて会ったときに、そんなことを言っていたか?彼女は、口元を固く結びながらしばらく黙っていたが、やがて。

「・・・・・・あぁ。その男とは、あの森で出会っている。リュージ君を殺せと言ったのも、ソイツだ」

 それを聞いた時、頭の中で全てが繋がった気がした。

 あの日、森に火が上がったのは、俺たちを分断するため。フィールを使ったのは、俺をあの洞窟に留め、俺の元に駆けつけるであろうエクスを捕らえるため。フィールがあの時操られていたのはおそらく、今回リリアやフィールが記憶を改竄されたものの亜種、のような能力だろう。

 エクスを攫い、フィールから魔法を奪った、張本人。

 俺たち全員に改めて緊張が走るなかバールは、顔に笑顔を浮かべて、明らかに余裕を抱いている。

「おいバール。変な気を起こすなよ?こっちは、世界を壊せるだけの戦力があるんだからな」

 シエンの言葉は決して誇張ではない。それは、バールにも分かっていた。だからだろう、彼は意外にも素直に、エクスについて話し始めた。

「エクス君は僕が捕らえたよ★そして、僕らの隠れ家に連れて行って、それから僕はこの町に来たのさ♪いや~ホント、人使いが荒いよね~まあ僕は人じゃあないけどね♪」

「リュージ、この男を殴ってもよろしいですか?」

「耐えろリリア。拘束した相手を攻撃するのは色々とマズイ」

 社会問題になる。バレた日にゃニュースになるぞ。というか、それが可能なら俺が先に殴ってる。

「オマエのことなんてどうでもいい。エクスはどこにいる」

「うん?そうだねー、ここからそう遠くはないよ?まあ、すぐそこかって言われたら違うんだけどね~★近くもないし遠くもないところってなんていうんだろうね?近場でもないし遠地ってわけでもないし~♪言葉って難しいね~♪」

「おい、いい加減にしろよ。オマエの与太話に付き合ってられるほど、今の俺は優しくねえぞ」

 彼の物言いが僅かに頭に来て思わず、バールに詰め寄る。しかし、それさえも男は、面白い見世物でも見るかのように、薄い笑みを浮かべたまま。

「安心しなよ、リュージ君。キミたちが想像するようなことは何も起こらないよ。僕たちは、エクス君にはなにもしていない。せいぜい、捕らえておき易いように、力を弱めさせているだけだ」

 声を僅かに低くして、言った。

「僕たちの目的は、別に彼女をどうこうしようとか言うものではない。彼の狙い(・・・・)は、その先にある」

 その先?いや、そもそも彼とは、誰を指しているんだ。

「いや、先というよりも、別というべきなのかな?これも、言葉の難しさっていうか、まあ僕の教養が低いってだけかもね♪あはは、魔人に教養もなにもないか★」

「お、おいバール。じゃあ、オマエたちの目的ってなんだ!?そもそも、彼ってのはいったい誰なんだ!」

 真実に近付きつつあるのを感じて、声が焦る俺に対し、バールは変わらず、あくまで自分のテンションを保っていた。

「いずれ全てが分かるさ♪それが見れないのは少し残念だけど、彼はきっと目的を達成してくれるだろうね★」

 拘束されているはずのバールの腕が、わずかに動く。口元をニヤケさせ、思わず浮かんでしまった笑みを押さえきれないといった具合で。

「―――――――――!!!リュージ、いや全員、その男から離れ―――――――――っ!!!???」

 直後。決して狭くはないこの部屋の壁や天井を全て吹き飛ばすほどの、強烈な爆発が起こった。

 慌ててリリアが張った魔法のシールドに全員が覆われて、強烈な爆炎に目を細めるなか、俺の耳は確かに、バールの言葉を捉えていた。

「この町から南にある樹海の遺跡に行ってみな?そこに、エクス君はいるよ♪まっ、信じるかどうかはキミの自由だよ~★」


 爆発が収まると、そこにバールはすでにいなかった。

 ヤツが座っていた椅子があった場所にリリアが近付き、焼けて剥がれた床に手を添える。

「・・・・・・・・・おそらく、ですが。彼は死にました。ここから移動した形跡がありません。たとえ転移系の魔法を有していたとしても、痕跡を残さないのは不可能です」

「あぁ、辺りにもいなさそうだぜ」

 いつの間にか部屋の端まで移動していたサタラは、大半が吹き飛んだ壁から外を見渡して言った。

「命を捨ててまで・・・・・・ヤツは、それほど組織に義理堅い男だったのか。あるいは、統率者に対する忠義か」

 そんな彼の最後を目の当たりにして、フィールが声を漏らす。

 だが、その言葉を聞いたシエンが首を横に振った。

「いいや、そんなことはないだろう。リュージには言ったが、ヤツには命の重要さが理解できていなかった。そういうヤツだったんだ。だから、自分の命を使い捨てることに抵抗がなかったんだろう」

 使えると判断すれば、命さえも使い潰す。たとえ、自らの命だろうとしても。

 つまるところ、そういう男だったのだ、バールとは。

 自らの命を持って、誰かの計画を動かした。どこまでも軽く、誰よりも命の重さを軽く捉えていたその男は、俺たちの誰にも出来ないことを、あまりにも簡単に成し遂げてしまったのだ。


 ◆


 事の顛末をドメクさんに伝えた俺たちはその後、救護活動から戻ったミーシャさんを交えて会議を開いた。今後の旅について、周辺の情報、そしてバールの残した言葉について意見を聞くためだ。

「南の樹海・・・・・・リュージ君。その男は、確かにそう言ったのだな?」

「はい、間違いないです」

 いたく真剣な表情を浮かべるミーシャさんに俺が返すと、彼女はどこか、悩むような仕草を見せた。

「司令殿。南の樹海とは、やはりあそこのこと、でしょうな」

「あぁ。間違いないと思うよ、ミーシャ君。そのうえ、遺跡と来たか・・・・・・」

 手を組んで俺たちを見つめるドメクさんも、どこか重たい表情を浮かべていた。

「失礼ですが、お二人とも。その樹海について、なにかご存じのことがあれば、教えていただきたいのですが」

 二人を急かすように、リリアは問う。

 エクスに単独行動をさせたことを理由に、彼女が拐われたことに一番責任を感じているのだ。

 急かされたミーシャさんは、しばしリリアを見つめ、ようやく口を開いた。

「その樹海の名前は【惑いの海】。あまりにも深い樹木は、磁気や電波を狂わす特殊な音波を常に発している。人の耳には捉えられない音域だが、それを聞き続けると脳や精神に影響を与えることもある。例え近道になろうが大きく迂回するほどに、この町の人間は、決して近付かない場所だ。ある意味、ドラゴンなんかよりも(たち)が悪い。なんたって、防ぎようがないからな」

 そこまで言ったミーシャさんの言葉を、ドメクさんが引き継ぐ。

「その音波の影響で、その周囲に生息する魔物は軒並み凶暴で好戦的だ。理性を失っているからね。しかし、その森よりもさらに危険なのが、キミたちの仲間がいるという、その遺跡だよ」

 そういうとドメクさんは、手元のパネルを操作する。すると、突然室内は暗くなり、代わりに巨大な立体ウィンドウが現れた。

 画面には 、薄黒い色合いの石を積み重ねて出来ている建造物が映し出されている。

「これが・・・・・・」

「そう、これがキミたちのいう遺跡【スグマルの遺跡】だ」

 映し出された遺跡は、一緒に映る人物と比較して見るに、かなりの大きさを誇っている。

「我々の祖先がこの町を作り上げるよりもはるか昔に建造されたと言わせている。しかし、この遺跡はあくまで飾りに過ぎない」

「飾り?どういう意味だ?」

 サタラが訪ねるが、なるほど。俺には読めたぞ。

「地下に迷宮が広がっている、とかだろ」

 俺が指摘すると、ドメクさんはわずかに驚く。

「ほう、よく気が付いたね。我々でさえ、当初は発見できなかったのに」

 別になんてことはないさ。俺たちの世界じゃ、ありがちな設定だったからな。地下迷宮や、地下に広がるダンジョンなんて。

「リュージ君の言った通り。この遺跡の地下には、広大な迷宮が広がっているんだ。そしてそこには、古くから生き残った強力な魔物が闊歩している。それらが地上に溢れ出るのを防ぐための遺跡であると、我々は考えている」

「広大な地下迷宮に、強力な古代の魔物・・・・・・。そんなところに、エクスが?」

 俺の言葉に一番に反応したのは、ミーシャさんだった。彼女は、俺たちの顔を見つめる。

「そう、問題はそこだよ。キミたちの仲間は、本当にそんな所にいるのかい?その、バールという男が、キミたちを陥れるために吐いた虚言という可能性が高いぞ。確かに、救出難易度は非常に高いが、同時に誰かを捕らえておくにはかなり不向きな場所だ。強力な魔物が闊歩している迷宮内に、安全に誰かを監禁でき、なおかつ人が集まれる場所なんて・・・・・・」

 おそらくそれは、心配からくる言葉だった。医者として、そしてここまで共に過ごした知人としての気遣いだった。

 しかし、それでも。

「それでも、俺たちは行きます。手掛かりが他にない以上、それが唯一の突破口かもしれませんし。それに、もし仮に本当だったとして、そんな所に仲間を一人置いておくわけにはいかないんで」

「・・・・・・そうかい」

 ミーシャさんは、笑ってくれた。多分、俺が言っていることは、不明瞭で不明確で無謀なことなのだろう。

 でも、大丈夫だ。俺には、世界最強のパーティーが一緒にいる。

 皆を見回す。その顔は、一様に笑っていた。

 全員を代表するかのように、サタラが一歩、前に踏み出して、ニヤリと笑った。

「行こうぜリュージ。オレたちの大切な仲間を迎えに」

 本当に、いちいちカッコいいぜ、コイツは。


聖剣「はっはー、ボクだよ☆」

魔王「おーエクスか。久しぶりだな」

村長「ここしばらくご無沙汰でしたね」

聖剣「全くだ!いやもうストレスが溜まりに溜まってね!今日はここで、存分に発散させてもらうよ!」

魔王「まあ、話の流れを見る限り、オマエの出番はもうしばらくお預けっぽいしな」

聖剣「まったく。作者さんはボクのことが嫌いなのかな?」

村長「いえ、でもエクスさん、一部では大人気みたいですよ?」

聖剣「えぇっ、ホントかい!?いや~嬉しいね☆」

魔王「あぁ。一部のコアなファン、小さな女の子が大好きな方々にな」

聖剣「・・・ボク、中身は500歳オーバーなんだけど、その辺考慮してもらえているのかな?」

魔王「大丈夫だ。アイツらは何よりも見た目を重視するからな。まあ中には、実年齢に拘るヤツもいるらしいが」

村長「エクスさんは人気者ですからね!みんなが大好きですよ!」

聖剣「あはは~・・・・・・ちょっと複雑、かな」


魔王「GW明け最初の週末が終わったわけだが・・・作者は未だに調子を取り戻していないらしい」

村長「五月病、というヤツですか?環境の変化から来る疲れやストレスで気持ちが落ち込むという、あの」

聖剣「まあ、作者は年中五月病みたいなものだからね。五月病、というより毎月病といったところかな?」

魔王「それただのうつ病じゃねえか」

村長「さ、作者さん、ファイトです!」

魔王「ちょうどいい。ニーナ。全国の気だるげな読者様方に、ここは一つ声援を送ってやったらどうだ」

聖剣「おお、いい考えだね!」

村長「ふえぇええ!!??な、なんですかそれ!そんなこと急に言われても・・・・・・!」

聖剣「大丈夫だよ、ニーナなら大丈夫だって☆」

村長「い、今以上にその☆が頭にきたことはありませんでした・・・」

魔王「ほらほらニーナ。オマエなら出来るって」

村長「う、うぅうううう~・・・・・・・・・ぜっ、全国の皆さん。・・・・・・ファ、ファイト、です!!!」

聖剣「はいカット☆」

魔王「それじゃあ次は、もうちょっと色っぽく言ってみようかー」

村長「ま、まだやるんですか!?」


(必然的な自主規制)


村長「も、もうお嫁にいけない・・・///」

聖剣「大丈夫。その時はボクが貰ってあげるさ☆」

魔王「最悪、リュージが余ってるぞ」

聖剣「おぉ。勇者が相手なんて、将来玉の輿・・・ではないか。リュージ君だし」

魔王「まあ、そうだな。ありえん」

村長「ゆ、勇者っていったい・・・・・・?」


魔王「さて。次回からはいよいよ【惑いの海】。題をつけるなら、聖剣救出編、といったところか」

聖剣「やっと迎えに来てくれるんだね~」

村長「皆さんが勢揃いするのも、そう遠くない、かもしれないということですね!私、楽しみです!」

聖剣「ボクも楽しみだよ。特に、レーヴァテイン君とはじっくりとお話してみたかったからね」

魔王「あぁ。リュージの隣に立つ正妻はボクだよ、的な修羅場か」

聖剣「そんなんじゃないよ!単純に、彼と共に戦う剣として、似通った境遇の彼女に興味があっただけだよ!単純にシンパシーからの興味だから!」

魔王「そんなわけで。次回をお楽しみに」

村長「皆さん、また会いましょう!」

聖剣「ホントに違うからね!?ボク、別にポジションに拘ってなんかないからね!いつの間にか自分の立ち位置奪われていたからって、別に拗ねてなんかないからね!」

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