第三十七話:懐かしい声
村長「皆さん、お久しぶりです。今回もお話を読んでくださるんですね!ありがとうございます。私は、前書き・後書きを担当させていただく、村長です!」
魔王「・・・・・・おい、どうした。緊張が空回りしてるのか?ていうか、村長ですって。ちゃんと名乗れよ」
村長「え?あ、ホントだ!え、えぇっと・・・あれ?」
魔王「・・・・・・どうした」
村長「シ、シエンさん・・・。私、名前なんでしたっけ・・・」
魔王「・・・・・・はぁ」
村長「シ、シエンさん!?どうして溜め息なんですか!」
魔王「はいはい。んじゃあ、後書きへ続く」
村長「シエンさん!?無視ですか!私は無視ですか!」
精神を集中。どうやら今回は、かなり回線が弱いらしい。繋がりが脆く、気を抜けば途切れてしまいそうだ。
きっかけはおそらく、俺のセンチメンタルが及ぼした精神の安定。
つまり、ダイヤルがたまたま合っただけのラジオと同じだ。だからこそ、今度はそれを微調整し、よりクリアな状態を目指さなければならない。
ゆえに、俺は極限まで集中する。頭には、蝋燭の先端で揺らぐ小さな火をイメージさせる。
(それで。説明はしてもらえるんだろうな?)
『あぁ、もちろんだよ。ボクに出来る事なら、と言いたいところだけど、実際ボクから出来ることなんて何もない。せいぜい、こうやってキミに電波を飛ばすくらいだよ。限りなく精度の低い電波をね。だからまぁ正しくは、ボクに話せることは何でも話そう、といったところかな?』
(それでいい。俺としては、唐突にオマエがいなくなったことを知って失った一日分を取り返せるだけの説明があれば、それ以上はない)
『そう言われると、ちょっとプレッシャーかなー。・・・・・・ていうかキミ、そんな話し方だっけ?いや、というか、そんな雰囲気だっけ?精神状態おかしくないかい?』
(うるせえな、いいだろ別に。電波悪くて、集中してないと雑音が走るんだよ。だから、精神を落ち着かせてるんだ)
『はー、なるほどね。まあ、ボクとしては別に構わないけど。新鮮で面白いし~』
(面白いって・・・・・・あぁいや。また話題が逸れるところだった。じゃなくてよ、教えてくれよ。とりあえずオマエ、今どこにいるんだ?)
『・・・・・・さぁ?』
(・・・・・・さぁ?じゃねえよ!!! ブツッ!)
「あ、切れた」
やべぇ。興奮しすぎた。こんなくだらないやり取りとツッコミで、貴重な繋がりが絶たれてしまった。なにやってるんだ俺は!ていうか、なにしてるんだよエクスは!!!
『ブブ・・・ブブブ・・・・・・バツンッ! あれ、繋がったかな?おーい、リュージくーん?聞こえてるー?リュゥウジくぅうううううん!!!』
(うるせぇ!耳元、ていうか脳内でデカイ声を出すな!頭カチ割れるわ!)
『ははは。ゴメンゴメン。久しぶりにキミの声が聴けて、テンションが上がっていたんだよ。まあ本音を言えば、ぜひ生声を聴きたいものだけどね』
(あぁ、そうかい。俺もそうだよ)
『うん。ボクはまた、キミに会えることを楽しみにしているよ』
(・・・・・・いや、これで終わらせるわけがねえよ。話を続けろよ。ていうか、もっと情報を寄こせ。どこにいるかは分からないっつっても、別に分かることだってあるだろ)
『無茶言うねー。ボクは一応、囚われの身なんだよ?だって、人間モードにもなれないんだよ?ずーっと聖剣状態の囚われ姫なんだよ?』
(剣ってお姫様カテゴリーなのか?)
『あのねー。ボクの精神は女の子だよ?その辺り、1人の男の子としての気遣いが足りないんじゃないかい?』
(いや、だってもうオマエって、俺の一部みたいなものじゃん?っていうのは、さすがに言い過ぎだけどよ。なんつーか、ほら。家族?みたいな)
『・・・・・・あれ?リュージ君、どうしたんだい?いつもだったらここで、いっそ本当の家族になろうぜ結婚しよう。くらいほざくじゃないか。あ、いや、言うじゃないか』
(ほざくっつったな今。え、俺ってどんなイメージ?)
『ゴミ虫』
(一言で終わったな。もうちょっとこうさ・・・・・・いや、もういいや)
『うんうん。一通り落ち込んだところで、話を戻そうか』
(普通そこは落ち着かせるべきだろうと思うけどまた話が止まるのでもう何もツッコまない)
『賢明だよ。で、ボクが今いる場所だけれど。どうやら、魔人たちの拠点の1つのようだよ。本拠地ではなく、あくまで仮拠点みたいだけどね』
(仮拠点・・・・・・。それって、まさか海を挟んだ大陸の向こうとかではないよな)
『違うと思うよ?だってほら、彼らの目的って、秘宝集めでしょ?』
(・・・・・・ひほう、ひほう・・・秘宝?って、なんだっけ?)。
『いやいや。この物語、つまりボクらの旅の目的の根幹じゃあないか。ほらほら、思い出して。彼らの本来の目的、っていうか、魔王の当初の目的を』
(ふむ・・・・・・。察するに、その秘宝を集めると竜が現われて、1つだけ願いを叶えてくれるんだな!)
『それは星の模様の七つのボールだよ。パンツくれる竜が現われる』
(あぁ、そうか。じゃああれか。擦ると、三つだけ願いを叶えてくれるオッサンが現われるという・・・・・・)
『そんなアラビアンなランプではない』
(じゃあ、どんな秘宝だよ)
『いや、ほら。三つある大陸に、それぞれ二つずつ、計六つの秘宝を集めると、天界に行けるっていう、あれだよ』
(・・・・・・おぉ、そういや、あったな。そんな設定。で、その秘宝集めが、どうしてオマエが同じ大陸にいるっていう根拠になるんだ?)
『いやだってさ。彼らはこの大陸から、世界に侵攻していたんだよ?今はシエン君が抜けたことで、そこまで大々的にはやっていないけれど、それでもこの大陸を拠点にしているのは変わりない。秘宝を集めたら、結局どこかに集めないといけないんだよ?だから、この大陸に秘宝を集める。そして、秘宝を溜め込むための拠点が、つまり僕が今いるココ、というわけさ』
(はぁ・・・・・・。よくわからんが、まあわかった。要するに、オマエはこの大陸にいると)
『ねえ。そんな大雑把な理解しかしてくれないなら、ボクの説明いらなかったんじゃないの?』
(いやいや。そんなことねえって。オマエの説明のおかげで、希望が見えた)
『・・・・・・はぁ。もういいや。そろそろ、ボクのほうが限界みたいだし、今回はこの辺りで終わりにするよ。キミ、身体の状態は、もう上々みたいだし、今後はどうする予定なんだい?』
(あー、そうだな。もうしばらくは【科学都市ナーガ】にいることになるな。入院費が足りなくて、ちょっとばかしドラゴン退治のクエストをこなさなきゃならないんだ)
『ふーん。そりゃ大変――――――あれ?リュージ君、武器はどうするんだい』
(・・・・・・い、いや、最悪、なんかこう、棒切れとかでも)
『落ち着いてリュージ君!キミが平常心を乱すと、本当に電波が悪くて音声ガッサガサになるから!』
(俺、剣がないとドラゴンとか絶対倒せないんですけど・・・・・・)
『うーん・・・・・・あぁ。どうやら、ボクが残していった刀が一振り、あるみたいだよ』
(ああ、あれか。俺が最後に使ってたヤツか。よかったー・・・・・・)
『あぁ、でも。1つ注意だよ。何度も言っているように、現在、ボクの力は極端に弱まっている。残った刀も、今まで通りにいくとは思わないことだ。戦闘中にポッキリなんて、目も当てられないからね』
(あの、ちょっと洒落にならなんだけど)
『洒落じゃないからね。本気で心配してるんだよ?』
(・・・・・・冗談だ。わかってるさ。まあ、気をつける。オマエも気をつけろよ)
『うん、ありがとう。何かあったら、出来るだけ連絡するよ。ちゃんと迎えに着てね』
(あぁ。待ってろ)
通信が切れる。ブツリという切断音が、嫌に頭に残った。
「・・・・・・はぁ。今まで気にしてなかったが、意外と疲れるのな、これ」
いつの間にか滲み出ていた汗を拭う。繋がりが弱くなっている分、余計に精神をすり減らすようだ。
しかし、精神を切り詰めての会話がアレって・・・・・・。どんだけ適当なんだ、俺は。
「・・・・・・うっわ、パンツまで染みてる」
全身からお漏らししたみたいだ。はぁ・・・・・・気持ち悪い。
「風呂、行くか」
思いついて、ベッドから立ち上がる。散歩する程度の自由はあるのだ。風呂に行くくらいいいだろう。リハビリだリハビリ。ほら、湯に浸かってやるリハビリもあるじゃん?
道に迷いながら、他の人の目を盗みながら、ようやく浴場にたどり着いた。
いや俺、まだ怪我人だったなーって思い出して、怪我人って勝手に風呂に入っていいんだっけ・・・・・・よーし、誰にも見られなきゃ大丈夫だろ!という結論に至り、さながら伝説の傭兵並みのスニーキングテクニックを発揮。見事、誰の目にも留まることなく浴場にたどり着いたのだ。
浴場にこっそりと近付く俺の図。
・・・・・・やべぇ。覗き魔的な変態にしか見えない。
「・・・・・・まぁ、それでもいいか。この際」
たとえ変態と誤解されようが、俺は気にしない。いやむしろ、中途半端なヘタレ変態だとは思われたくない。
なるなら、完全な変態。いわば完全変態。ムッツリという蛹状態を経て、俺は、蝶になる!!!
うん。茶番は終わりだ。さて、風呂に入ろう。多分、数日振りの風呂に。
◆
「これは・・・・・・取っていい、のか?」
完全に忘れていた。失念していた。俺、包帯まみれじゃん。
このままじゃあ、風呂には入れんぞ。湯気だけでも湿ってしまう。いやでも、すでに汗で湿っているわけで、なかに貼ってあるなんかよくわからない湿布的な何かも、濡れていて気持ち悪いし・・・・・・。
「まあ、取ったからって死ぬわけでもないし・・・・・・いいか」
そう判断した俺は、とりあえず腕に巻いてあった包帯を外す。続いて、足。最後に腹の包帯を巻き取る。
「・・・・・・これ、なにが貼ってあるんだ?湿布、じゃあないよな。軟膏の匂いもしないし」
よくわからんが、とりあえず剥がす。
瞬間。
「痛っ!?痛い痛い痛いヤバイこれはヤバイッ!!!」
唐突に、全身を激痛が襲う。
震える手でなんとか、剥がした物を、元の場所に貼り付ける。
―――――――――嘘のように痛みが引いた。
「・・・・・・なにこれ怖い」
一度剥がしたせいだろうか、僅かな痺れが残るが、肉体を裂かんばかりの激痛は消えた。
さすがに怖かったので、風呂に入ることは諦めた。
包帯も、自分で巻いたはいいが、浴室を出てしばらくしたところで出くわしたミーシャさんには、一発でバレた。さすが医者。
「あぁ、それはね。簡単に言えば、貼り付けることが出来る麻酔だよ」
「麻酔?これがですか?」
包帯を巻き直してもらいながら、ミーシャさんの説明を受ける。顔近い身体近いなんかいい匂い。
まあでも、医療行為なので我慢。ていうか、患者と医者の関係なんだから、変に意識する必要もない。だってもう、裸だって見られてるだろうし。
「通常の麻酔だと、痛みを感じることはないが同時に、痺れで身体の自由が上手く利かないだろう?それはね、麻酔同様に痛みを麻痺させるが、身体の自由は確保されるという、優れものだ。しかし、きちんとした法則で貼らなければ効果は弱まり、一枚でも剥がしてしまうと効果が消えてしまうんだ」
あぁ。だから、剥がしたときは激痛が走り、貼り直した後は少しズレていたせいで、わずかな痺れがあったのか。
しかし、痺れを感じさせない麻酔かー。科学ってスゲー。
「まあ、これは単純な科学だけではなく、魔法との併用なのだよ。自分で言うのもなんだが、素晴らしい技術だろう?」
「・・・・・・そうっすね」
いや、凄いのは分かる。これが技術的にどれだけ優れたものか、どれほど素晴らしいものなのかは、分かるんだが・・・・・・。
「なんかこう、地域密着型っていうか、庶民的っすよね。これなんて、民間用の道具じゃないっすか?」
「いや、これはまだ、市販されていない。貼り付けに、ちょっとしたコツのような物があってね。パターンを誤ると、身体に悪影響が出る場合がある。便利な分、欠点も存在する。そこは、改良の余地アリだな」
あぁ・・・・・・。じゃあ、俺は結構危ない状態だったわけですね。やっぱり、医師の許可なく適当なことはしちゃいけないと。
そういえば昔、妹に出された薬を飲んだら酷いことになったなー。お医者様は正しいね。とくに、町の医者とか信頼感半端ねぇ。
「まったく。キミはまだ怪我人なんだぞ。散歩程度なら許可したが、さすがに今回のはやり過ぎだ」
「はい、ごめんなさい」
大人しく謝るしかない。調子に乗ってごめんなさい。
「はぁ。ほら、全部終わったよ。風呂に入るのは明日から。朝になったら、それを剥がしても大丈夫だろう」
「明日かー」
まぁ、朝風呂も好きだからいいけど。つーか、今回のがリリアにでもバレたら、スゲー怒られるんだろうな・・・・・・。黙っておこう。
その後。ミーシャさん経由で情報が漏れ、結局リリアに怒られましたとさ。
魔王「落ち着いたか?」
村長「は、はい・・・。先ほどは失礼しました。しっかり思い出しましたよ。私はニーナ、ニーナです」
魔王「そうそう。んで、ニーナ君?前書きでは、自分の名前を忘れるほどテンパッてくれたわけだが、前回の収録が終わった後の特訓は、いったいどんな効果が出たんだ?」
村長「う、うぅ。すいません、いきなりミスを犯してしまいまして・・・」
魔王「うん、まあいいわ。なんかもう慣れた、っつーか諦めたわ」
村長「えぇ!?そんなぁ!」
魔王「キミはもう、そういうキャラなんだろう?ずっとそういうキャラで売っていくんだろう?」
村長「別に、狙ってやっているわけじゃないですよ!そういう、嫌らしい考えなんてありませんよ!」
魔王「うんうん。もう何も言うな。キミは、ずっとそのままでいい」
村長「いい台詞っぽく言ってますけど、要するに丸投げですよね!」
魔王「はいはい。もうこの話はここまでだ。いやー、悪かったな。変な話題を振ってしまって。うん、今回は全面的に俺が悪いな」
村長「うぅうう・・・・・・もういいです。確かに話が進みませんし」
魔王「はっはっはー。ちっこいのが何か拗ねてるー」
村長「ちっこいって言わないでください!年齢からしたら正常な体格ですよ!ていうか、どうしてわざわざ煽るんですか」
魔王「悪い悪い。なんかこう・・・若気の至り?」
村長「いや、若くないでしょう、シエンさんは」
魔王「そういやそうか」
魔王「それでな。今回は、作者から重要なお知らせがあるんだと」
村長「・・・あの、とっても失礼ですけど・・・。作者さんのお知らせが重要だった試しが、あまりない気が・・・」
魔王「まあまあ。とりあえず見てみようぜ。ほら、オープン」
● 今後の前書き・後書きは、ニーナ&シエンのペアで回してもらうぜ☆
村長「・・・・・・」
魔王「・・・・・・」
村長「って・・・えぇええええええ!!!???」
魔王「おいおいニーナ君よ。今更、この程度で驚くこともないだろう」
村長「い、いえ、あの・・・シエンさん?」
魔王「なんだ」
村長「あの、凄い汗かいてますよ?それに、あの・・・そんな力強く握った拳をガタガタ震わせて・・・」
魔王「言うな」
村長「いえ、あの・・・あ、はい、わかりました。もう何も言いません」
魔王「くっそ、なんで俺まで・・・」
村長「あ、でもほら、見てくださいよシエンさん!裏にもなにか書いてありますよ!」
魔王「なに!?もうこの際、俺が出ることは別に構わんが、なにか弁明があるなら許してやらんこともない!」
● なお、二人をメインに毎回ゲストを呼ぶという形で進行していく。二人を選んだ理由は、特にない。あえていうなら、なんか面白かったから!メンゴォ!アーンド、ガンバ!
魔王「・・・・・・ッ!」
村長「ちょっ!シエンさん、どこから出したんですか、その剣!」
魔王「いや、悪いなニーナ君。ちょっと、殺さなければならないヤツを見つけた」
村長「待ってください早まらないで!」
魔王「安心しろ。必ず帰ってくるって!放してくれニーナ君!俺は、行かねばならないのだ!必ずや、かの諸悪を切り刻んでみせる!」
村長「シエンさん!キャラ変わってますよ!」
魔王「えぇい!だったらもう、コレを終わらせてからにする。それなら、もうキミに拘束されるいわれはない!それでいいだろうニーナ君!」
村長「うぅ・・・。も、もうそれでいいですよぉ・・・」
魔王「つーわけで、今回はココまでだアディユー!」
村長「適当過ぎますよ!?え、えぇと、皆様。どうやら次回以降も、私たちが担当のようです。至らぬところも多々ありますが、今後とも、私たちをよろしくお願いいたします。あぁ、シエンさん!もうちょっとですから!えー、と。では、はい!今回はこの辺りで、みなさま、次回もお楽しみに!シエンさん!扉はちゃんと開くんですから斬らないでぇ!!!」




