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第三十五話:無くしてはじめて、気付くもの

天使「帰ってきました」

元魔「まあ、文句は後でいうとして。そういえば作者、ちょうど期末試験が終わったんじゃないか?」

天使「まぁ・・・・・・どうせ結果はわかりきっているので聞きませんが」

作者「ま、まだ結果はわからないですから!」

元魔「はいはい。そーですねー」

作者「つーめてぇ!」

 

「―――――――――――――はぁッ!!!」

 俺は、あわてて目を覚ます。

 死んだ曾お祖母ちゃんが見えたぜ。『まだこっちに来ちゃあいけないよ』って言われた。川の向こうで叫んでた。ありがとう曾お祖母ちゃん。


 というか、身体がまったく動かないと思ったら、あれだ。

 身体中が包帯やら何やらで締め上げら、腕から謎の液体を流し込まれていた。一見すると、改造中みたいだ。

「はー。身体がダルい。あと、めちゃくちゃイテェー。つーか、よく生きてたなー俺」

 うっわ。頭ガンガンする。やべえな、これ。後遺症とか残んねえよな、ちょー不安なんだが。

 ダメだ、あんまり記憶がない。大丈夫かなー、俺。

 おぞましいまでの不安に飲み込まれそうになったそのとき、まるで病室みたいなこの部屋の扉が開いた。


「おや?目が覚めたのか。よかったよかった、気分はどうだい?」

 立っていたのは、真っ白の白衣を羽織った、長身の美女だった。一見、十代にしか見えない肌やらなにやらといったその見た目とは裏腹に、そこはかとない大人の色気に溢れた、なんとも不思議な女性だった。

「は、はぁ・・・・・・。えーっと、失礼ですがアナタは?」

 明らかに年上、しかも大人なオーラ満載の彼女に、とりあえず丁寧に尋ねる。俺だって、敬意くらい払います。

 一方彼女はといえば、一瞬ポカンとするもすぐに納得したように笑顔になった。

「そうかそうか。いやすまない。目が覚めたキミとは初対面か。ここ最近はずっと顔を合わせていたから、つい知り合いのように接してしまった」

 説明すると彼女は、スッと背筋を伸ばし、きれいな物腰に柔らかい笑顔を浮かべる。

「では、自己紹介をしよう。私はミーシャ・ワシリー。この病院で医者をしている、今回のキミの担当医だよ。気軽にミーシャと呼んでくれて構わない。よろしく、リュージ・オリザカ君」

「担当医、ってことは、この治療もミーシャさんが?」

 尋ねると、彼女は笑って答える。

「そうだよ。いやー随分と派手な怪我で、苦労させられたよ。しかし、うん。キミは運がいいね。後遺症もなく、状態はまさに上々だよ。今は麻酔で身体が動かないだろうが、それが切れれば日常生活にはほとんど支障をきたす事はないだろうさ。当然、腹に開いていたドでかい風穴も、しっかりと塞いでおいたよ。面会も、もうしばらくしたら許可しても問題ないだろう」

 言いながら、ベッドの横に置いてあるイスに腰掛ける。必然的に、俺の枕元まで近付いた。

 美女が近くに来たので若干緊張しつつも、なんとか言葉を紡ぐ。

「えーと、ありがとうございました。おかげで命拾いしました」

「感謝なら、自分の運にもしておいたほうがいいぞ。この【科学都市ナーガ】が近くにあったこと、そして適切な応急処置を施してくれる仲間がすぐ近くにいたこと、後遺症が残らなかったこと。キミはかなり、恵まれているよ」

 まあ、そうだな。ちょっとくらい自分に感謝しても、ばちは当たらないかなー。とか考えていると、引っかかる単語に気付いた。

「うん?あの、ミーシャさん。いいですか?」

「どうした?どこか痛むのか?」

 医者らしく患者を気遣う台詞に、ちょっと慌てて訂正。

「あぁ、いえ。そうじゃなくて・・・・・・科学都市、ナーガでしたっけ?それって、どういうところなんですか?」

 問うと、ミーシャさんは不思議そうな表情を見せた。

「ほう?ナーガを知らない人間がいたとは。どんな放浪者でも、噂くらいは耳にしていると思っていたのだが・・・・・・。世界は広いものだなぁ」

 しみじみと言われてしまった。世界は広いってのは間違ってないけど。そりゃあ別世界まで含めたら無限に広がるでしょうよ。

「いやー、すいません。情報に疎くて・・・・・・」

 適当にごまかす。なんか、悪いことをしたみたいな気になったので。

 俺の苦笑を見て、ミーシャさんも笑いながら答えてくれる。

「あぁ、いいよ別に。気にすることはない。私だって世俗には疎いからね。じゃあ、まあ教えてあげようか。キミにとっては寝起きの話になるだろうから、簡単にだがね」

 ミーシャさんが続ける。

「ここ、【科学都市ナーガ】はね。簡潔に言えば“完全独立科学研究機関”ということになるのかな?どこの国にも属さず、そこの組織にも属さない。あるのは利害関係だけ。大陸随一、世界最高の科学都市。科学技術の最先端だよ。わかったかな?」

「はぁ・・・・・・まあ、なんとなくは。要するに、織田政権成立以前の堺とかってことっすかね。あとは、と○るの学○都市みたいな」

「うん?なんのことかはわからないが、理解はしてもらえたようだね。まあ、細かいことは、退院後に案内でもしてあげよう。患者のアフターケア・アフターサービスも、医者の仕事だ」

 言って、立ち上がったミーシャさんは、そのまま扉のほうへ歩いていく。どうやら帰るようだ。

 ・・・・・・じゃなくて。

 危うく、流れのままに流してしまいそうだったが、うん。本当に危なかった。

 俺には、聞かなくてはならないことがあったではないか。しっかりと、その結末を知らなければならないことが。

「あの、ミーシャさん!俺と、俺と一緒にいた女の子は?フィールはどうなったんですか?!」

 慌てて尋ねる俺の質問に、ミーシャさんはあぁ・・・・・・、と漏らし、振り向く。

「キミの言う女の子というのは、あの子のことだろう?フィール・パーチカル君。彼女はすでに目覚めているよ。病院内での適度な散歩も可能な程度には、体力も回復している」

「そう、ですか。・・・・・・よかった」

 ミーシャさんの言葉に、俺は安堵の息を漏らす。本当によかった。


 しかし、ミーシャさんの表情は、どこか優れない。俺を見る目にも、どこか哀れみの色が混ざっていた。

 俺の視線に気付いたのか、ミーシャさんは途端に表情を整え、優しさと冷たさの入り混じった瞳を俺に向けながら、しかしどこまでも“医者”らしく、あくまで事務的に事実だけを述べた。


「しかし一方で、問題も存在している。魔力回路の損傷による魔力の運用制限。彼女は今、ほとんど魔法が使えない体になってしまっている」


「・・・・・・・・・え」

 思わず、声が漏れた。

 魔法が使えない。魔法世界において、それは決定的に致命的ではないか?今まで普通に使っていたものが使えなくなる。つまり、五体の一つを失ったことに等しいのではないか?いや、もしかしたら、あるいは。それよりも、重いものであるか・・・・・・。

「安心したまえ、というのは、おかしいかもしれないが」

 唐突に、ミーシャさんが言葉を挟む。俺の思考が一時停滞したところで、彼女は続けた。

「彼女の損傷は、キミの行為のせいではない。あの程度の問題は、すでに私が解決済みだ。彼女があぁなってしまった原因は、外的な精神魔法によるものだ」

「外的な・・・・・・?―――――――――あのときか」

 フィールとの戦闘の、本質的な原因。始まりの要因。

「話によれば、キミは魔法に疎いのだったか。私自身、魔法を専門とするわけではないので、それほど詳しいというわけではないが、医者として、それなりの知識を有している」

 言って、彼女は再度、俺の近くへと歩み寄ってくる。

「操作魔法、もっといえば、精神干渉魔法、とでも言おうか。そういった類のものは、おまじないや暗示のようなものから、それこそ、脳に電極を差し込んで弄繰り回す様な、えげつないものまで強弱の振り幅が広い。彼女に使用された魔法は、彼女の安全のことを、必要最低限以下でしか保護していないものだったのだろう。精神崩壊、人格破壊、なんて可能性も高かった。魔法回路の損傷だけであったとはいえ、それは最悪の状況よりはまだマシ、というだけだ。そんな状況に置かれ、あれほどまでに落ち着いて、自分の現状を受け入れられているフィール君は、相当に心が強かったのだろう。あるいは意思か」

 彼女は、慰めなのだろうか。いや、おそらくは、ただの事実なのだろう。言葉を紡ぐ。

「こんなことを言ったところで、キミの気持ちが楽になるわけではないだろう。私は、ただ真実を伝えているだけだ。私は医者だからな、患者に虚言は吐かんよ。まあ、私の言葉で、キミの気持ちがどう変化するかはわからないが、そうだな。まあ、医者として言えることといえば、キミだって重症だ。今はしっかりと休んで、自身の回復に努めたまえ」

 彼女は伝えるべきことを全て伝え終わった、というかのように、扉のほうへと戻っていった。

 そして、再びそこで、歩みを止め、振り向く。

「それと。これは医者としてではなく、一人の人間として言っておくが、キミが深く考えるだけ、彼女に気を使わせることになるぞ。キミが行った行為は、まあ世間一般から見れば罪かもしれない。人を一人、あぁいや、キミも含めて二人か。人を二人、殺めようとしたのだからな。だが、キミの選択は悪くなかった。あのレベルまでの魔法で操られた彼女を、結果として救い出したのだからな。自らの命もろとも、という点は、畏怖を抱くとともに、尊敬の念を抱いているよ」

 彼女は、再び扉に向き直り、ようやく開いた。

 部屋から足を踏み出し、完全に退出したミーシャさんは、あくまで背を向けたまま、呟くように付け足した。

「まあ、なんだ。あまり気にしないほうがいい。キミは、楽にしていたまえ」

 そして、扉は完全に締め切られた。


 閉じた真っ白な扉を眺めながら、すでにいなくなったミーシャさんの言葉を反芻する。

 生まれ芽生える様々な感情を一通り閲覧し、すべてを飲み込んだ。

 気持ちは、ひどく落ち着いている。眼は、しっかりと前を向いている。

 動けるようになったら、真っ先にフィールに会いに行こう。彼女の元へ、しっかりと現実を受け止めにいこう。

 なんていわれるかなんて想像できないし、なにをされるかも分からない。それでも、しっかりと。


 そこまで一通り考えて、そういえばずっとコミカルな部分がないなー、と思い出した。

 最後は俺らしく、かるーく締めようかな。


 ミーシャさんは、やっぱり言うことが大人って感じで、凄かったです、まる。


 ◆



 食事っていうのは、生きるために必要な栄養摂取、という目的以外にも、そこはちょっと、楽しさ・おいしさ、なども含まれてもいいのでは、と思う。

 贅沢なわがままであることは分かっている。しかし、一度知ってしまえば求めてしまうのは、人のさがである。

 つまり、何が言いたいかといえば・・・・・・・・・。

「ミーシャさん!俺は人間です!よって、もっと人間らしい食べ物を要求します!とりあえず、今ここに出されている、なんかネチョネチョのゲル状のもの以外で!」

「うむ?何を言うか、リュージ君。それは、我が病院で開発した、最新の病院食なのだ。身体にいいぞ?むしろ、そればかりを追求したからな」

「原因がわかりましたよアンタ実は料理下手だろぉ!?」

「いやいや。そんなはずがないだろう?まあ、とりあえず、何も言わずに何も感じずに何も思わずに口にしてみたまえ。食べる前から好き嫌いをするほど、キミは子供ではないだろう?」

「だからって、そんな危険物にチャレンジするほど大人にはなれません!つーかそんな大人は嫌だー!!!」

「ふふふ。まぁまぁ、そういうな。ほら、口を開けたまえ」

 ほれほれ~。と、謎のゲル状の物体をフォークに刺して口に押し込もうとしてくるミーシャさんを何とか押し止めて、というか思い止まらせる。医者を殺人者にするわけにはいかない。

 ゲルを俺に食べさせることを諦めたミーシャさんは、どこか不満そうに。

「ふむ。本当に、健康にはいいのだが・・・・・・。食えないこともない。なんなら、毒見役でもやってやろうか?」

 言って彼女は、フォークに刺さったままのブツを、自らの口に運んだ。

「・・・・・・へ?」

「あむ・・・・・・・・・。ほれ、死んでいない」

 むしゃむしゃと、紫色のブツを頬張るミーシャさん。え、大丈夫なの?だってそれ、なんか緑色の煙出してるんだけど・・・・・・。それに、紫色の泡がブクブクと、赤い液体とともにあふれ出ていて・・・・・・。

「本当に大丈夫か!?」

 お兄さん、心配になっちゃうよ!医者なんだから、しっかりと身体をいたわって!



「さて。話を戻そうか」

 口元に付く赤紫色の液体を拭き取り、キリッと決め顔を決めるミーシャさん。

「と、ミーシャさんは決め顔ddddddddd。おっと、世界の修正が入ったか。規制って怖いな」

「ふん?たしかに、寄生魔法は恐ろしいが、それが?」

「あ、いえ。こっちの話なんで気にしないでください」

「?そうか、じゃあそうしよう。で、話なのだがな・・・・・・」

 ミーシャさんは懐から、折りたたまれた一枚の紙を取り出した。

「それは?」

「あぁ、これはね。ちょっとした【契約書】だよ」

 言って彼女が開いた紙の一番上には、ほかよりも太く、そして濃く書かれた一行が踊っていた。

「【契約&誓約書】って書いてあるんですけど・・・・・・」

「あぁ、誤差だ」

 医者として、その大雑把さはいかがなものか。というか・・・・・・。

「誓約って、俺はいったい何を誓わされるんですか?ていうか、何をかけた話なんですか」

 不安いっぱいに尋ねると、ミーシャさんは、どこか嫌そうな顔をする。苦虫を噛み潰したような。あんなゲテモノを、涼しい顔で平らげた、あのミーシャさんが。

 1拍も2拍も間を置いた後、彼女は、言った。

「なにをかけるかといえば・・・・・・・・・命、だな」


 本当に。医者としてどうなんだろうか。



元魔「で。前書きに書いた文句についてだがな・・・・・・」

天使「まあまあ。サタラ、まずはこちらを見てもらいましょうか。前話の後書き。そこでのシエンの言葉です」

魔王『これってさ、決まった二人が二回ずつって決まりなんだよな』

天使「『これ』というのはつまり、この後書きのことなのですが・・・・・・」

元魔「オレたち、こういう形式に変わってから、二回も後書き担当してませんなぁ?えぇ、おい。どうなんだよ作者コラ」

天使「サタラ。酷い顔をしていますよ。作者なら、前書きが終わったと同時に逃げましたよ。天使である私にも感知できないレベルの、超高度な幻惑魔法と移動魔法を同時併用して」

元魔「・・・・・・逃げることには、常に全力だなぁ、ヤツは。いつか潰すが」

天使「その時は、ぜひ私も呼んでください」


天使「久しぶりに、カードが帰ってきました」

元魔「じゃあ、さっそく引くか」


 ● 空を自由に飛びたい


元魔「・・・・・・どうしたんだ、コイツ」

天使「疲れているんでしょう。そっとしておきなさい」

元魔「しかしあれだよな。空を飛ぶっていったら、そういえばオマエ、こないだやってなかったか?あぁ、あれはジャンプだっけ?」

天使「ここで書いてあるのは、いわゆる『跳ぶ』ではなく『飛ぶ』。つまり、跳躍ではなく、飛行のほうでしょうね」

元魔「できるのか?オマエは」

天使「まぁ、やろうと思えば出来なくもない。といったところでしょうか」

元魔「どういうことだよ。つーか、出来るのかよ。ホント、規格外だなぁ、天使って」

天使「サタラは出来ないんですか?」

元魔「嫌味かコラ。あぁ、まあいや。できねえことはねぇよ?あー、いや悪い。ちょっと言い過ぎたか。自由に飛行ってのは、ちょっとキツイかもな」

天使「と、いうと?」

元魔「なんていうのかな。こう、自由に『空を飛ぶ』って魔法自体はないけど、例えば炎とか風とかを操って空を飛ぶって感じか?まあ、オレに関しては、空間掌握系の魔人だったからな。そういうことが出来ないわけでもない、か?でもよ、そうやって空中を移動すると、スゲー不安定でめっちゃ怖い」

天使「高所恐怖症?なんていうか、可愛らしいじゃないですか。高いところが怖いって」

元魔「べっ、別に怖いわけじゃねえよ!なんていうかこう・・・・・・あぁ、あれだ。ジェットコースターってあるだろ?それが、速くて高いのが怖いってわけじゃあなくってよ。なんていうか、今にもコースターがぶっ壊れそうっていうか・・・・・・例えば、レールがこんにゃくで出来てるとか、そういう不安定さに対する恐怖だよ」

天使「こんにゃくのレールとか、逆にイメージしづらいですが・・・まあ、言わんとすることはわかりました」

元魔「オマエが規格外なだけで、みんなが同じことが出来るとは思うなよ」

天使「はぁ・・・・・・よくわかりませんが、ゴメンなさい?」

元魔「よし。じゃあ次だ」


 ● やること多すぎてワロスwww


天使「やはり、疲れているようですね」

元魔「疲れてるっていうか、壊れてるだろ、これ」

天使「まあ、彼が壊れているのは元々ですし、今更って感じもしますが。元々エンジンが壊れている飛行機が、さらに翼も折れましたさあ大変ってくらい、どうでもいいことです」

元魔「まあ、もともと飛べねえしな。翼があろうがなかろうが」

天使「でも、やることが多いというのは、間違っていないようですね」

元魔「というか、時間が足りないんだろ?作者が仕事をする時間がないから。ていうか、アイツの活動時間自体が短いからな」

天使「ヤル気もないですから」

元魔「真性のクズだな」


天使「それで。次回の話ですが・・・・・・。あぁ、これこれ。はい、サタラ」

元魔「うん?えーっと、なになに?ほーほー。次回はあれだな。『カガク』だな」

天使「そうですね。ちょっとしたバトル、の予定らしいですよ?そこまでいくかはわからないので、あくまで予定ですが」

元魔「ふーん。じゃあ、あれだな。楽しみにしてればいいのか」

天使「期待しないで待っておけば大丈夫です」

元魔「じゃあ、今回はここで終わりだな」

天使「えぇ。それでは皆様。また次回」

元魔「えーと・・・・・・アディオス?」


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