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第二十五話:【過去編Ⅰ】捕らわれた者たちへ FOURTH ~穿けないパンツはただの布だ~

お久しぶりです!えぇ、約三ヶ月ぶりになるわけですね。はい、いろいろありましたとも。

まぁ、とりあえず本編をご覧ください

「・・・・・・これ、オレが来なくても良かったんじゃねえか?」

思わず呆れた表情で呟いてしまうオレの目の前には、無残にも敗北し地面に転がった男たちの姿があった。

「しっかし、あれだな。ここにはエクスがいるはずなんだが、どこにいるんだろうな」

辺りを見ても見当たらないし、魔力の流れも散ってしまっている。おかしい、といえばおかしい。しかし、あのエクスだから、という一言で済ますことも、出来なくはないというのもまた事実なんだよな。

さて、どうしたものか。と唸っていると。


――――――――――――ゴォオ!


と、唐突に風を切る音が聞こえ、目の前を黒い物体が高速で通り抜けていった。

壁に激突し、ズルズルと床に滑り落ちていくそれは、人だった。

「えーと・・・・・・。おいおいおい、どういうことだ、これは。今、から出来てたよなぁ」

まあ、別に驚くことではないが。ただ、不思議ではある。ので、とりあえず壁に手を当ててみる。

が、なんてこったマジでただの壁だ。

「・・・うーん?・・・・・・うーん、どうしたもんkがばッ!?」

再び壁から飛び出してきた黒ローブの男に激突し、思い切り背中から地面に倒れこむ。

とりあえず、上にのしかかっている気絶した黒ローブ男は邪魔なので蹴り飛ばし、打ちつけた背中を擦りながら起き上がる。

「いてて・・・・・・。なんだよこの壁。人間排出機かなにかか?」

しかし、放っておくわけにもいかないので、とりあえず壁に掌を押し当てる。


触った感触では、やはり壁だ。しかし、そこからは、僅かだが魔力の流れを感じる。

壁に触れながら、少しずつ横に撫でていき、ある一点の前で立ち止まる。さらに横に移動し、また止まる。

そんな馬鹿みたいなことを何度か繰り返し、そしてようやく一息をつく。

「ふー。思ったより数が少なくて助かったぜ」

オレは短く呟き、指を一つ鳴らす。

それだけで、まるでガラスが割れるように、壁が崩れ去った。


「おや、サタラ君?一体どうしたんだい、こんな所で」

男二人の胸倉をそれぞれ片手で持ち上げつつ、さらに1人を片足で踏み付けながら笑顔を保つ鬼神、というかエクスがいた。

それを見たオレは、頭を抱えて床にうずくまりつつ叫ぶ。

「ほぉらーだから言ったじゃーん!!!やっぱオレ必要ないってばぁああああ!!!」

「ははは、いきなりどうしたんだいサタラ君。わざわざここまで来てくれたって事は、もしかしてボクを助けに?」

「そのつもりだったけどもー帰る!こんだけつえーヤツがいるんなら1人でも十分だってば!」

そんなオレの絶叫が届いてるんだかいないんだか、エクスは笑いながら、というか、ちょっとだけ頬を紅く染めながら俯きつつ。

「うーん、恥ずかしいな~。サタラ君に助けてもらえるのはうれしいけど、自分のピンチを見られて嬉しい人はいないしね~」

いないしねーっつーか、とりあえずお前はピンチじゃねえ。どっちかっつーと、持ち上げられた男たちのほうがピンチだ。

ふふふ~、と笑顔のまま、ドサリと荷物(男たち)を落とすエクス。おい、もうちょっと丁寧に扱ってやれよ。

まあ、これ以上このテンションに付き合っていても仕方ねえな。ここらで話題を変えとくか。

「つーか、ここはなんなんだ?魔法で意図的に隠されてたってことは、つまりなんらかの重要拠点とかそういうモンだってのは分かるけどよ。あれか?秘密基地っつーか現地要塞っつーか、作戦会議室みたいなところか?」

辺りの惨状を見る限り、エクスの一方的な暴行だけというわけではなく、こいつ等の必死の抵抗の痕が見て取れる。相当やばいモンを隠し持っていたとかか?とにかく、死んでも守り抜く、といってもいいほどのオーラが残っている気がする。

そんなオレの、結構ヤバめな思考を読み取ったのか、エクスは厳かに口を開く。


「―――――――――盗品さ」


「・・・・・・ワッツ?」

やべぇ、意味わかんな過ぎて思わずおかしな返しをしちまった。え、なに、盗品?

「えーとつまり、それはあれか?この学校に隠された秘密兵器とか、恐ろしい秘宝とか、そういうあれか?秘密裏に運び出して世界征服だぜーとかか?」

オレが何とか捻り出した必死の『まあそれならなくはないかな~』案だったのだが、しかしその希望は、エクスによって完全に否定された。

「ノンノン。盗品っていうのは要するに、この学校内から漁ってきた、うーんとまあ、変態的アイテムの数々さ」

エクスの言う、変態的なアイテムというブツの内容は、正直全く聞きたくなかったし知りたくもなかったのだが、変なところで空気の読めないエクスは、しっかりの全てを教えてくれた。

「分かりやすく具体例を挙げると、女子生徒のリコーダーとか女子生徒の体操着とか、すごいものでは女子生徒のイスなんてものまで――――――」

「オーケー分かった。もう何も言うな」

女子生徒という単語が三回目を数えたことにより頭痛を覚えたオレは、頭を抱えながら天井を仰ぎ見る。

はぁーあーあ。何やってんのかなーオレは。リュージとエクスがピンチだっつーから、スゲー焦りながらここに来たのになー。なんつーかオレ、こういうこと多くない?オレが担当する相手って、こういう奴らばっかりなのかな。あーもう、オレのあの焦りとか一抹の不安とか全部返してくれよー。

しかしオレの嘆きは、それほど長くは続かなかった。というか、すぐに中断せざるを得なかった。

その原因は、エクスが掲げたモノだ。

「これ、見てごらん?」

その手に握られたものを見て、オレは息を飲んだ。


「――――――女性用下着、だと・・・!?」

オーケー落ち着けオレ。さあ心を落ち着けるんだ。深呼吸すーはーすーはー。・・・・・・よし。


「とりあえず、どうして女性用下着が学校に置きっぱなしになっているのかという部分にツッコミを入れたいんだが・・・・・・。なんだ、この学校ではノーパンが流行ってるのか?」

「ふふ、随分と落ち着いたねサタラ君。でもまあ、世の中にはそういう趣味の人もいるってことで、そこはスルーしようか」

この部分をスルー出来るのは、相当な熟練者だけだと思うんだが・・・・・・。仕方がない、ここは寛大なエクスに免じてやろう。

「んで、それがどうしたんだよ。パンツを掲げてる変態に絵になってるぞ」

まあ、それをやってるのが幼女って時点で、色々アウトだと思うがな。異質すぎるわ。

「まあまあ。ほーら、これ。この部分をよく見てみなよー」

と言いつつ、オレの鼻先まで女性用下着を・・・・・・あぁもうめんどくせぇ。オレの鼻先までパンツを近づけてくる。

最悪な絵だよなー。だってほら、女二人がパンツに顔を近づけてジロジロ眺めてるんだぜ?一部のマニアが大興奮じゃねえか。

「ほら、この部分。ここだよここ。キミなら見れば分かるだろう?」

仕方がないので、もう色々投げ捨ててパンツを凝視すると・・・・・・、あぁ。なるほどこりゃちょっとヤベぇな。

「わかったかい?これは、それなりにマズイだろう?」

「あぁ。結構面倒だなぁ。・・・・・・でもその分、コイツらの目的も、なんとなく察しがついたな」

そう。ここから読み取れる可能性として。もっとも有力で唯一といってもいい可能性。


「放っておけば国、いや。最悪、世界が引っ繰り返るぜ」

思わずニヒルに、そう呟いてしまった。



リリアが敵をボッコボコ、というか、軽く精神崩壊させたあと全員を拘束しつつ一階への階段を下り、エクスと、彼女を助けに行ったであろうサタラを探してると。

壁際に積み重ねられ、拘束された大量の男性が目に入った。

「うっはー。随分と派手なオブジェだなー」

その光景に慣れてしまった俺がいるんだがなぁ・・・・・・。慣れとは恐ろしいもんだぜ。

そんな素敵(笑)な飾りを見流しながら、床に座り込む凛々しいサタラと、イスに座ってフラフラするエクスに声を掛ける。

「よう、お疲れ・・・・・・って、どうした?」

全員を討伐し終えたはずなのに、何故か暗い、というか、どこか緊迫とした表情で俯いている。なんとしても食い止めなければならない出来事があり、しかしその壁があまりにも高すぎて、あまりにも硬すぎる現実の目の当たりにしてしまったような。

そんな、絶望にも近い表情で俯くサタラ。

「お、おい・・・・・・サタラ?」

なんだよ、その表情・・・。まだ終わってないっていうか、まだ黒幕が隠れているみたいな・・・。

「サタラ君。キミから言うかい?なんなら、ボクが伝えてもいいけど」

「そういう類の内容じゃねえだろ。別にオレから言っても構わねえよ」

とか、若干シリアスな雰囲気を漂わせているが・・・・・・。コイツら、なんでパンツ囲ってんの?

「おい、その女性用下着はなんだ?お前どちらかの物か?」

「んなわけねーだろうが!そしたらオレたちのどっちかがノーパンってことになんじゃねえかッ!」

「そういうことに、なるな」

「目線上げろ」

じゃあ何なんだよ、という視線を向ける俺に代わって、リリアがそのパンツの正体に気がつく。

「それ・・・・・・“闇”じゃないですか?」

え・・・“闇”?なんのこっちゃ。

「おい、闇ってなんだ?属性?」

「リュージ。また忘れたんですか?」

「は?忘れるって・・・・・・なにを」

・・・いや待て。なんだか、何回もこんなやり取りをやったことがある気がするが・・・・・・デジャブ?

「あっ、思い出した」

そうかそうか。闇ってのはあれだ。魔王が取り付かれたとかそんな、俺の物語の黒幕的な存在だった気がする。あぁ・・・あの“闇”かー。

影薄いなー、黒幕なのに。

「んで、なに。このパンツがラスボスなの?コイツを引き裂けば俺たちの冒険はおしまいなのか?」

「んなわけねーだろうが。寝惚けてんのかぁ?」

サタラに睨まれてしまった。確かに寝起きで寝惚けてるけど、そんなに怒らなくてもいいじゃない。

「んじゃあなんなんだよ。そのパンツのどこが闇なんだ?」

俺がちょっと不満げに聞く。そんな俺の脇腹に、リリアが拳を入れてきた。チョー痛ぇ。

「とりあえず、そのパンツという表現を連呼するのをやめましょうか」

「じゃあなんて言えばいいんだよ。パンツはパンツだろ。それ以上でもそれ以下でもない、穿けるパンツはただのパンツだろ」

「何を言っているのか分かりかねますが・・・・・・」

はぁ、とリリアがため息を吐き、場の空気が何故か重くなる。え、俺変なこと言った?

「もういいです。では以降、それは“ブツ”と呼称することにしましょう。面倒なので異論は一切認めません」

唐突に独裁政治が引かれてしまった。おい嘘だろ。ここは放置国家じゃ・・・・・・おっと誤植。

法治国家じゃなかったのか。

「それで?その“ブツ”が一体どれほどに強力なものなのか、分かってない人が一名いるわけだけどー」

「すいませんねーなんせ俺パンピーなもんで」

「そうだよね。自称勇者の無職住所不定だもんね」

おや?そういわれると俺って、結構なダメ人間に聞こえるぞ?いやいや、そんなわけがない。

「まあまあ。とにかく話を戻そうじゃないか。んで、その“ブツ”がなんだって?」

はぁ、と今度は全員でため息。えー。

「仕方がありません。正直、私も全てを把握している自信がないので、サタラとエクスと主体に話を進めて頂いてもよろしいですか?必要な部分は、私が補強していくので」

「おう、構わねえぜ」

こうして、なんかいつもの構図通り、俺は聞き手に徹するのだった。



「えーと、つまりね。簡単に言っえば、その“ブツ”は一種の兵器ってところかな」

「・・・・・・」

状況が状況なので、俺は何もツッコまない。

「おいコラなんだその表情は。わかってるよお前が言いたいことは。でもな、事実なんだから仕方ねえだろ。エクスは別にふざけてねぇよ」

「そうそう。まぁ正確には、兵器の能力が宿ってるってとこかな。それも、最強クラスのね」

「まぁ、オレには正確な情報まではわからねえけど、そうだな。“闇”の濃度的に言えば相当だ」

「ふーん。んで?その闇属性兵器ってのは、具体的にどういった効果があるんだ?」

「うん?そうだねー・・・・・・あぁそうだ。リリア君」

「?はい、なにか?」

今まで聞き手に徹していたリリアが、唐突に話を振られて若干戸惑う。しかしリリアは、エクスが続けた言葉に表情を固めた。

「キミなら知っているかな?“魔剣レーヴァテイン”っていうのを」

「・・・・・・はい。知っています」

返答までに、間があった。その反応は気にはなるが、しかしそれ以上に。

「それなら、俺も知ってるぞ?」

そう、知っていた。俺も。

「おや?これは意外だね。キミがこっち系の物を知っているのかい」

本当に意外そうな顔をするエクス。おい、お前今まで、俺のこと完全にお荷物扱いしてただろ。

とか、またぞろコミカルな流れになってしまいそうなタイミングで、リリアが舵を取ってくれた。

「おそらくですが、リュージが知っているのは、伝承として、伝説の武器としてですよね」

「ん?よく分かったな。そうそう、俺がいた世界の伝説上の武器だよ。えーと、確か北欧神話だったかな?そこにそんなような名前のがあった気がする。世界樹の頂にいる、雄鶏ヴィゾーヴニルを殺すことができる・・・とかなんとか。ラグナロクのときにスルトが振るった炎の剣って説もあるらしいけど」

と、俺が昔ネットで調べた情報を記憶から引き出すと、今度はリリアが、意外そうな表情をした。リリアよ、お前もか。

「・・・・・・驚きました。まさかリュージが、神話についてそれほどの知識を有していたなんて」

「ははは、見直したか!これは俺が中学生の頃に調べたんだ!」

という俺がテンションを上げて自慢すると、唐突にリリアは、あぁ・・・とちょっと残念なものを見るときの表情になった。

「それって、いわゆる厨二病ってヤツですよね。確かにその時期の男子は、そういうことを調べ始めますしね」

・・・・・・一瞬で看破されてしまった。脆いなー俺。ちなみに、今も患っていたりする。

「・・・おっほん。とにかくだ。その剣がどうしたって?まさか、そのパンティーに宿っている力の正体が、その魔剣だったりするのか」

まっさかー、とかそういう雰囲気を狙っていたんだが、しかしエクスは、そんな俺の期待をまたしても裏切ってくれた。

「おやおや?リュージ君のくせに、今日はやけに察しがいいね。これは、明日にでも世界が滅びるかな?」

「洒落にならねぇこと言うんじゃねえよ。まぁ、確かにリュージらしくはないけどよ」

「ふむ・・・。どうやらお前らは、喧嘩がしたいらしいな。ちょっと表に出な」

「はいはい。やめなさいリュージ。それとサタラも笑顔で拳を鳴らさない。エクス、その謎のポーズを止めなさい」

「チャンピオンのポーズ」

何故か俺が挑戦者だった。俺がチャレンジャーだった。まぁ、戦力的に見てもそうですよね。つーか・・・・・・。いつもながら、話が進まねーな。ここは俺が舵取りをしてやろう。

「んで。そのパンティーにスゲー力が宿ってるとしてよ。それでどうなるんだ?どれだけの力を有してようと、パンツはパンツだろ?」

面倒なのでパンツを連呼させて頂いております。ごめんね。

「ううん。そんなことないよ。パンツはパンツでも、ただのパンツじゃあない。世界を滅ぼす力を持ったパンツさ」

「オッケーオッケー。とりあえず、章替えしとくか」

「え、ここで替えるのか?」

許せサタラ。このカオスを収拾するには、これしかないんだ。



要約すると。

つまりあのパンツには、どういうわけか、伝説の魔剣“レーヴァテイン”の力が内包されていて、それを使えば国どころか、世界を変えることすらも可能である、ということだ。

うーん、カオス。どうしてこうなった。

「しかしあれだろ。原因はどうあれ、何はともあれだ。とにもかくにも、コイツを処分するほうが先決だろ。どうする?焼く?」

「そんなんで魔剣がどうにかなるわけねぇだろうが。舐めてんのか、あぁ?」

「なんでそんなにキレてんだよ」

チョー怖ぇよ。そのへんのヤンキーならチビッて逃げ出しちゃうレベル。

「とにかく、常套手段としては封印、となるでしょうね」

「封印、ね。まあ、いいんじゃないのか?よく分からんが」

というわけで、リリアがその超人的な、というか天使的な力を使い、封印する方向に決まった。



というわけで、パンツを床に置き、それを四人で手をつないで取り囲んでいる。

「ではみんな。私に魔力の供給をお願いします」

という合図で、全員が自分の体内の魔力を高める。

まぁ、俺は1から作らないといけないんだけどね。はい、作業作業。

全員が無言になり集中し、リリアに魔力を集める。リリアは、受け取った魔力を圧縮し、その瞳と眼前に、直径5cmほどの、小さくも、しかし恐ろしく複雑怪奇な魔方陣を編み出す。サタラとエクスは、おぉ・・・とか感嘆の声を上げた。正直俺には全くわからんが。

その時間は、数秒にも数分にも、数時間にも感じられた。

そして、その魔方陣が回転を速め、放たれる光も濃密になっていく。


カッと一瞬だけ大きく光り、その光が、床のパンツを包み込む。

「さぁ・・・あとは、気合の勝負だよ」

エクスが呟き、全員の意識が高まる。それに比例するように、パンツの光は強くなり、そしてついに、その光がパンツを押さえ込む。


「・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・。なんとか、成功ですね」

疲れた表情のエクスが握っていたのは、手のひらサイズにまで小さくなった、黒いキューブだ。鮮やかな黒をしたそれは、漆黒というのが正しいのか。

「こりゃまた、随分とイカしたフォルムになったじゃんか。で、コイツはどうするんだ?」

「決まっているでしょうサタラ。こんな物騒な物を放置するわけにはいきませんし、私たちが持っているしかありませんよ」

そう結論付けるリリアは、そのままそれを、俺に突きつける。え、なぜ俺?

「なぜと言われても・・・・・・ただ、なんとなくとしか」

「そんな曖昧な理由で、世界を破滅させる兵器を俺に預けるなよ!」

「わかりましたよ。じゃあ、多数決を取りましょうか。リュージが持っているのがいいと思う人ー」

・・・・・・・・・だと思ったよ。そりゃー全員手ぇ上げるでしょうよ。無言で決まりごとのように満場一致でしょうよ。

「・・・・・・はぁ。まぁ、こうなったら別にいいけどよ。逆らっても無駄だろうし」

みんなよりも大人な俺(涙)は、1つため息を吐くだけで場を収め、ただし。と続けた。

「俺が持ってやってもいいがよ。もし、もしも誤作動を起こして世界を破滅させちまっても、絶対に俺のせいじゃねえからな」

「うわダッセー。それが大人の言うことかよ自称君よぉ」

サタラの絡み方が非常にガラが悪かったが、しかしこの際無視だ無視。こんな娘に育てた憶えはないぞ!育てた憶えもないがな!

サタラと俺で、お互いにメンチを利かせ合いながら「あぁ?」「あぁあ!?」と一昔前のヤンキーみたいなことを繰り広げていると、みんなの頼れるお母さんであるリリアが、呆れ顔で俺たちを仲裁する。

「はいはい。なぜ二人はそうもガラ悪く喧嘩できるんですか。ほらサタラ。女の子がそんな眼をするんじゃありません。リュージもリュージです。なにを女の子に絡んでるんですか」

「だってーコイツが俺を馬鹿にしてくるからー」

「はー馬鹿を馬鹿にして何が悪いんだよ!バーカバーカ!」

「んだとコラァ!バカって言ったほうがバカなんだって常套句を知らねーのかテメェ!」

「それこそがバカの常套句なんだよ!リュージごときが偉そうにしてんじゃねぇよ立場をわきまえろよ自称勇者のニート野郎が!」

「ニートバカにすんじゃねぇぞぉ!ニートってのはなぁ、世界最古の人類、アダムとイブの生活を見習い再現したぁ、人類の原点にして完成形なんだよ!・・・・・・誰がニートだゴラァ!立派に勇者やってんだろうが!」

「だったらとっとと魔王でも何でも倒してこいや!いつまでダラダラ脱線してんだよ!過去編とかやってる暇があったら本編を進めろや!」

「知るか!んなもん作者に言いやがれ!こっちだってなぁ、とっとと魔王ぶっ飛ばして世界の危機救って一息つきてぇんだよ!それをダラダラと先延ばしにしやがって・・・・・・なーにが過去編だふざけてんじゃねえぞ。過去ほじくってる暇があったら未来でも開拓しろや作者ぁ!」

「オレに向かって作者への不満を言うなよ!なんかオレが責められてるみたいな気分になるじゃねえか!」

「え、あぁ悪い。そだよな、お前M属性だから、責められたら感じちゃうもんな。ゴメンゴメン、俺の配慮が足りなかったわ」

「だッ、誰がMか!?お、オレは別にそういうんじゃねえよ!」

「おやおやー?焦っちゃって可愛いじゃないのよサタラちゃーん。そーんな紅くなっちゃってぇ、どうしちゃったんでちゅか~?」

「・・・・・・ッ殺す!!!」

本気の拳が、俺の腹に一直線に飛んできた。スゲー痛い。あれ?内臓元の位置にあるかな。

「やっぱり、いつも通りになるんだねー。ちょっと前まではシリアスだったのになー」

エクスの呟きが遠いよ。あ、やばい。腹の痛さが半端じゃない・・・。

(意識が・・・・・・遠のく)

そしてそのままドサリと、俺の体は地面に倒れこんだ。



『うん。まああれは、全面的にキミが悪いよね』

まぁ、ですよね。完全にセクハラだったしね。

『サタラ君だって、突然あんなのことを言われたら焦りもするさ。まったくキミは、一話分くらいはシリアスを貫くくらいのことは出来ないのかい?』

一話分っつーか、この物語の構成がおかしいんだって。一話分がやけに長くないか?ジャ○プとか、あぁいう週刊誌だったら、ちょうどいい場面転換だろうけど、あいにくここは週刊誌じゃないから。

『・・・なんか最近、キミを筆頭にメタ発言が目立つね。まあ、もう気にしないけどさ。ところでリュージ君。今の状況をざっと説明したりしようか?』

ん?あぁ・・・まあそうだな。どうせ俺、今気絶してるんだろ?

『そうさ。原因は、主にサタラ君によるものなんだけれど、元を辿れば全部キミ自身の自業自得だよ』

うーん・・・・・・吐血寸前だったんだが。

『いやいや。気を失ったキミは知らないだけで、実際に吐血はしていたからねー。まあ、そんなものは些細なことさ』

口から血ぃ吐き出すって、結構な重症だと思いますけど。

『いいんだよ、リュージ君だし』

おいこら。・・・・・・まぁいいや。んで?結局、今回の件はどうなったんだ?

『あぁ。今回の件については、とりあえず一件落着といったところかな犯人たちは全員捕らえられて、死者はゼロ。今は帝国で取調べ中さ。どうやら、彼らがあの兵器を発見したのは偶然らしいよ。それに、あのパンツはもともと、あの学校にあったものじゃない。彼らの言をそのまま信じるなら、ちょっとアンダーなワールドの、ちょびっと怪しげな商人が売っていたらしいよ。掘り出し物としてね。その力を知ったからこそ、彼らは今回のようなことに及んだらしいけど・・・・・・』

どうしたんだよ。正直、あんなもの使われてたら、俺たち終わってたぞ。

『どころか、世界が終わっていたさ。まあそれも、あれが使われなかった原因なんだけどね』

あ?どういうことだ?・・・・・・って、あぁ。そうかそうか。使ったら困るのは自分たちだもんな。

『その通りさ。彼らの目的は、別に世界の破壊じゃあない。あれはあくまで奥の手。キミの世界で言うところの核兵器と同じさ。背後にこれだけの戦力があるぞって威嚇するために使うつもりだったらしいよ。まあ、そのまえにボクたちが発見しちゃったわけだけどね』

・・・・・・まぁ、そのことは別にいいや。うん、まあよくやってくれたよ。ところでさ、あれは結局どうするんだ?いくら封印したところで、あれが化け物兵器であることは変わらないだろ?

『うん?まぁそれは、キミが持っておくっていう現状を維持すればいいんじゃないかな?パンツ形態じゃないから、持ち歩いても犯罪者にはならないからね。安心していいよ』

おっ、そりゃ安心だな。パンツのまんまで持ち歩いてたら、確かに色々と誤解を生むからね。じゃなくて。

安心できるかよ。パンツだろうがキューブだろうが、兵器であることには変わりねえんだっての。

『だから、大丈夫だって。あれはね、相当に危険な兵器だからこその対策がされてるんだよ。誤作動とかで発動するようなものじゃないから』

余計にこえーよ。そんな厳重な対策されてるなんて知ったら、余計に持ってたくねぇよ・・・・・・。あぁーその辺に埋めてぇー。

『まぁまぁ。もうこの際、新武器が手に入ったーって素直に喜んでおきなよ。きっとそのうち、キミの役に立つから』

いつだよー。俺が魔王側に寝返って世界を破滅させるときにしか役立たねーよー。

『ほらほら。それよりも、もうそろそろ起きたほうがいいんじゃないかい?みんなが待っているよ』

あぁ、そうなの?ていうかこれって、意識して起きれるものなのか?

『大丈夫大丈夫。はーい意識を落ち着かせてー。はい、一度深呼吸。目を瞑ってー。それじゃあ、これからボクの声をよく聞いてねー。ボクが三つカウントしてから手を叩くと、キミはハッと目を覚ますよー。はい、スリーツーワーン・・・はいっ!』

パンッ!



「・・・・・・ないわー」

うん、ないわ。いまどき、あの起こし方はないわ。こりゃ、あとでお仕置きだな。

「しっかし、またベッドの上かー。なんかあれだな。俺、運び込まれすぎじゃね?なんで毎回、最後で気ぃ失うかね。もうそこまで行ったなら最後まで気張れや俺」

「まあ、いいじゃないか。それだけ死力を振り絞っているってことだろう?」

「うへあ!?」

は!スゲー恥ずかしい声を上げてしまった。まあそりゃビックリするよ。俺じゃなくてもビックリするよ。完全に1人だと思ってたのに、なんでエクスさんは、俺の横に立ってるんだ?別に俺がチキンなわけじゃないからね!絶対みんなだって驚くからさ!

「まあ、今回は自業自得だけどね。あぁ、これはさっきも言ったかな?」

ペロッと下を出して笑う。チックショー可愛いなーコイツ。文句言う気も失せた。

というわけで、いい加減にもういいだろうと。もうそろそろ聞いちゃってもいいだろうと。俺はエクスに尋ねた。


「んで、今回はどういうオチをつけて終わらせるんだ」

「ははは。つかないねーこれは」

笑ってんじゃねえよ。

は~、どうすっかなー。どうやってオチつけようかなー。

あぁ、もういいや。なんかめんどくせえや。もう全部がめんどくせえわ。なんつーの?えーとつまりあれだ。例えるならー・・・・・・あーもう例えるのもめんどくせえよ。

もういい。これで終わらせる。次で終わらせる。誰も文句とか言わないでね。苦情とか、一切受け付けてないから。それじゃあ。


――――――勇者リュージは、新しい装備を手に入れた

――――――装備しますか

          はい ・ ⇒いいえ

作者「と、いうわけで皆様。お久しぶりです。えー、もう懐かしいですね。小説を書くためにパソコンをパチパチ叩くのも久しぶりですね」

リュージ「ホント、ここまでくるのにめちゃくちゃ時間が掛かったな」

作者「仕方ねえじゃん。だって今回のこの、えーと過去編シリーズ?まあ結局一つしか話を書いてないわけだけれど、これはあれだぜ。思いつきで始めてみた企画であって、こういう話にしようとか、こういうコンセプトに基づいた話にしようとか。まったく考えていなかったんだからな。終わらせ方も決めてなかったし」

リリア「究極の見切り発車でしたね」

作者「もうね。話が全く思いつかないんですよ。これはあれかねー、スランプかねー。なんかもう、年がら年中スランプな気がするんですけどねー。才能がないことをスランプと言い訳しているだけなんですよねわかってますよーだ」

リュージ「おいおーい。もう限りなくめんどくせえよ。絡み酒みたいになってるんだけど」

サタラ「まあ、なんか元々こんな感じのヤツだった気がしないでもないけどな。あれじゃね?無事三年生になれて安心してるから、気が緩んでんじゃねえか?」

エクス「その程度で緩まる気なんて、いっそ外してしまえばいいんじゃないかな?わざわざ張るような気じゃないだろうにね」

作者「・・・あれ。エクスさん?アナタ、そんな毒舌を吐くような子でしたっけ」


アリサ「それで?いつの間にか出番がなくなり、ついには触れられることさえなくなった私へのフォローは、ちゃんと用意してあるんでしょうね」

作者「・・・・・・大丈夫だよ。キミならきっと、また出れる」

アリサ「フォローじゃなくて慰めじゃない!」


作者「えー、今回は時間がないので、この辺りで締めさせていただきます」

リュージ「はー・・・。しょうがねえなぁ。んじゃ、いつもの~」


エクス「ふるえるたかぶる異世界バトル『転生した俺は勇者として魔法世界を救うらしいですよ?』」

アリサ「次回はいよいよ本編が進むはず!?お楽しみに!」


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