第十三話:喧嘩を売るならド派手にいこうぜレッツパーリィイイイ!!!
とっても久しぶりの投稿。安定の低クオリティー
俺・リリア・サタラ・エクスの四人は、朝の草原を歩いていた。
リリアの転移魔法が使えればよかったのだが、魔力温存ということで、もう少し近付いてから使うそうだ。天使のほぼ無尽蔵の魔力で、何を心配してるんだこのチートと言ったら、きっと総力戦になるからだ、と言われた。
ニーナは村に置いてきた。
また、あの暗殺者(クソ野郎)が襲わないとも限らないが、村の武闘派の方達が守ってくれているから大丈夫だろう。結構強いからあの人たち。
しばらく歩いていると、遠くに壁が見えてきた。町を守る城壁だろうか?
壁から先っぽだけ飛び出ている建物が、きっと皇帝のいる城だと思う。責任は取れない。
「・・・そろそろですね」
そういって、先頭のリリアが歩みを止めた。
「ん、なに?転移?あのチート魔法使うの?」
「えぇ。この距離から一気に城内に侵入しましょう」
城内に侵入・・・ねぇ。
「どうした?なんか不満でもあんのか?」
サタラが、俺の顔を覗き込んでくる。あぁ、バレた?
「いや、まぁ不満っつーか・・・俺的には、正面からドォオオン!がベストなわけよ」
「ドォオオン!というと?」
リリアの質問に、俺に代わってエクスが答えてくれた。
「要するに、城壁か城門を破壊しつつ、派手に入りたい。ってことだよね?」
「あぁ、そう。俺はそう言いたかったんだ!」
それを聞くと、サタラが賛同してくれた。
「なるほどな・・・。確かに、激しいほうがオレ好みだな」
サタラさん・・・、笑顔が怖いです、黒いです・・・。
それを見たリリアは、少し考えた後、一つ頷く。
「わかりました。今回の目的は脅しですから、確かに、インパクトは強いほうがいいですね。・・・・・・でも
、あくまで脅しですよ?無闇に殺してはいけません」
殺すな、か。なるほどなかなかハードな任務だぜ・・・。だが、頼まれたからには断るわけにもいかんな。スパ~ ←タバコ吸ってるポーズ。
「安心しなよリュージ君。今回のボクは特別仕様だよ?」
そういって、くるりと一回転。
「なんと今回は非殺傷!しかもスタン機能付き!ビリビリ電気で痺れさせちゃうぞ☆」
・・・なんとなく、すごいのは伝わった。
「てーことは、オレも手ぇ抜くか。とりあえず、肉体強化だけしとこ」
そういいながら、サタラはシャドーボクシングをする。やべぇ、なにそのキレ。世界取れんじゃね?あ、余裕だな。
まぁ・・・多分、肉体強化しない状態でも、本気で殴ったら人なんて即死だろうけどな・・・。あえて言わんがな。俺も死にたくないし!
俺たちを一通り見渡すと、リリアが小さく頷いた。
「では、飛びますよ」
そういうと、リリアを中心に、地面に魔方陣が広がり転移。
目を開けるとそこは、先ほど先っぽだけ見えた、あのでっかい城の目の前。正確には、城門の手前だった。
「いやぁ~、にしても頑丈そうな扉だねぇ。それに大きいね!どうする?やっぱり・・・やっちゃう?」
ニッコニッコしてるエクスに笑顔を返すと、エクスは光に包まれて、一本の刀に変わった。
そんじゃ、いっちょ派手にいきますか!
「派刀流・・・『波紋』!」
ドォオオオン!という、望みどおりの馬鹿でかい音と共に、鉄で出来た壁は崩れ落ちた。
さぁて、パーティーの始まりだぁ!・・・・・・この刀、本気で振っても斬れないんだよねぇ・・・。んじゃ、とりあえず、ニーナを狙った分として、全力で殺りに行きますか。
「やぁやぁ我こそは!○○村が剣豪折坂竜司なり!・・・・・・ブッ潰すぜぇ・・・インサー帝国!」
「まぁ、なんでもいいさ。オレも、ニーナを狙ったことに関しては、許す気はねぇからな・・・」
やる気マンマンな俺たち二人を見ながら、リリアはため息。
「はぁ・・・では二人とも。殺さないように、気を付けて下さいね?」
こういう場面では普通、死なないようにとかな気がするが、まぁそんな些細なことはどうでもいい。とりあえず、この城落とさないわけにはいかねぇよ。
「レッツ・パァリィィイイイイイイイ!!!」
こうして、俺たち三人(四人?)と、一国の戦争が始まった。
◆
リュージside―――
城が広いので、ひとまず全員バラバラになったので、俺は一人で、城の庭で兵士達の相手をしている。先程破壊した門は、城の庭に入っただけで、城本体に入るには、もう一枚門を破壊しなければならない。
まぁ今はそんなことよりも、ここの兵達を蹂躙する。
俺たちの侵入にいち早く気が付いた兵に続き、休んでいた兵やらなんやらも含めいっぱい出てきたが、とりあえず俺は、目の前の敵をブッ倒す。
エクスを振り回し、兵を無力化していく。今回のエクスは、スタンガンのように電流を流して、相手を無力化するらしいけど、正直あまり意味がない気がする。
俺が全力でぶん殴ってるから。
今のところ、二十人くらいは倒したかな?まぁ、もう数えてねぇやメンドクセぇ。
しばらく進むと、城壁が見えてきた。
「はい破壊!」
まぁ俺からしたら、岩の壁だろうがダイヤの壁だろうがオリハルコンの壁だろうが関係ないからね。
・・・ブチ破ってから後悔した。
「お・・・おぅ・・・」
壁壊したら、その向こうに目測百人くらいの兵隊さんが、武器構えて待ってたわ。いらねぇよそんなサービス。壁を開けたら着替え中の美少女が~~って展開は・・・・・・ないか~ここじゃ。
しばらく戦っていると、あれ?なんか周りに空間が・・・というか、兵達がどんどん離れていく・・・。おい!そういう風に自然に人をハブくんじゃない!自分と周りとの距離に気が付いたときの悲しみを知らんのか貴様ら!
なんてやっていると、向こうの兵達の後方に、変なローブを着た人たちが固まり始めた。
そいつらは、唐突に謎の言葉を発すると、持っていた杖から変な光が・・・うん、魔法だね。
「ウォオオオオッ!?」
上空から大量の火の玉が降ってきた。恐ろしやぁ恐ろしやぁ・・・気象庁様、本日は晴天なのでは?本日の天気は晴れ。所々で火の玉が降るかもしれないので、外出の際は十分に御気を付け下さい。・・・・・・どうやって?
気をつけたってどうしようもないでしょ火の玉は。折りたたみの傘なんて一発で終わるね。つーか、折りたたみってなんであんなに脆いの?ちょっとした突風ですぐ壊れるんだけど。備えた意味ないじゃん。これからは、携帯性と同時に、強度にも力をいれて欲しいね!
まぁ、そんな現実逃避はやめにして、マジでどうしようかと、出来る限りに思考を高速化させる。
その時、脳裏に一つの記憶が浮かび上がった。
そういえば俺。サタラと初めて闘ったときに、アイツの魔法ぶった斬ったっけ。どうやったんだ?あれ。振ったら出来んのかなぁ・・・。怖いなぁ・・・なんて考えていると、魔法の火球がもう目の前まで迫っていた。
悩んでる暇はないか・・・!
空から降ってくる、大量の火球。その中で、俺に直撃、もしくは近くに落ちるものは、あわせて七発。
(イクぜ・・・エクス!)
『了解!でも、ちゃんと中心を狙わないと意味ないよ?』
この速度、この数なら問題ない!
刀を肩に構え、黄金の光を宿した得物を高速で振るい、七閃。
その斬撃全てが正確に火球の中心を捉え、霧散していく魔力を引きながら、魔法は消滅していく。
「・・・覇刀流―――『七星』」
残った火球が周囲に降り注ぐが、どれも俺の体に届かない。
爆炎が晴れるとそこには、驚愕の表情を貼り付けた兵士達がいた。
「・・・なんだよ、今の」
ちょうど俺の正面に立っていた男が呟くと、それに続くように「魔法斬りやがった」「マジかよ・・・」「ばっ、化けモンだぁ!」と言う声が沸き起こる。オイ、今化けモンっつったの誰だ?・・・誉めてやろうその通りさ。
後方にいた奴らが、蜘蛛の子を散らすように逃げていき、前衛である兵士達は怖気づく。が、そこはさすがに帝国の前衛兵士。怯みはしたがすぐに持ち直し、その手の武器を握り締めて迫ってくる。
振り下ろされる剣を避け、交わし、逸らす。隙が出来れば刀を叩き込み無力化していく。
そうこうしていると、人の向こうから魔法による攻撃が始まり、範囲外まで全力で跳ぶ。
跳んだ先は、先程破壊した壁の穴だった。城内に潜入できたはいいが、そこも兵でいっぱいだ。
「はぁ・・・・・・ホント、なんでこんなにいんの?」
俺の疑問は、勇敢な衛兵達の怒号に飲まれて消えていった。
◆
しばらく戦っていると、目に見える範囲からは、敵がいなくなった。いや、倒れてるのはいっぱいいるけど。
静かになった廊下を歩いていくと、少し広いホールのような場所に出た。
ここなら、誰かがきてもすぐわかるだろ。そう考え、ひとまず壁に背を預け座り込む。
「あぁ・・・疲れた」
『お疲れ~~。すごい無双ッぷりだったね』
「でも、一人一人刀で相手すんのはさすがにキツイな・・・こんなとき、リリアみたいなチート能力があったら、無双どころか一掃できたのにな」
『ははは、仕方ないよ。それに、今のままでも君は十分強いよ』
そうかな・・・そうなのかな?
と、そこで気が付いた。
「なぁ・・・。あの階段で上に行ったら、皇帝とかいるかなぁ」
視線の先には、上の階へと続くであろう階段がある。さすがに、エスカレーターとかエレベーターとかは無いよねぇ・・・。
『皇帝に限らず、お偉いさんが上層の階にいるのは、どこの世界でも共通の常識だと思うなぁ~』
ですよねぇ~。じゃあ、あの階段を登りますか!・・・腰に響かなきゃいいけど。腰痛持ちなんじゃよ、ワシ。
「はぁ・・・さて。休憩もしたし、さっそく上の階に―――」
とそこまで言って、なんか大きな気配が近付いてくのに気が付いた。
階段の方に視線を向けると、なんかいかにも将軍ですって格好の、三十くらいのオジさんが現れた。
「ここから先に行かせるわけにはいかないな」
ここからさきにいかせるわけにはいかないな。ひらがなにすると、とても読みにくいセリフを吐きながら、その男は階段を降りてきた。
赤い鎧を身に纏い、馬鹿デカイ両刃の剣を握り締めた男は、威風堂々とした態度で、階段を降りきる。
「・・・どうしたオッサン。トイレはこっちじゃないぜ?ボケてんのか?」
しかし男は、俺の軽口には付き合わず、声をだす。
「ほう・・・お前が侵入者か。外の兵達に手に負えんようだから、どんな者かと来てみたが・・・少しはやるようだな」
「そいつはどうも」
あぁ・・・このオッサン。きっとできるな。もう、纏っている雰囲気が、その辺の兵士とは比べ物にならない。
なんか濃い。
手に持った大剣を地面に突き刺してから、オッサンは言った。
「私は、インサー帝国三大将が一人、コボルト・パーチバルだ。私が出てきたからには、ただでは帰れないと思え」
三大将・・・ってことは、コイツレベルのヤツがあと二人もいるのか・・・。テンプレだと残りの二人は、それぞれリリアとサタラのところに行っているはずだ。まぁ、アイツらなら大丈夫だろ。俺より全然強いし。
てことは、俺は目の前のコイツに集中していればいい。
コバルトは、腰を落として大剣を構える。
(エクス。スタンを止めて、いつもの刀に戻ってくれ。こいつは、無力化できるほど簡単じゃない)
『わかってるよ』
どうも、こっちの方がしっくりくるな。スタンモードでも、重量も形状も変わらないのだが、普段の刀は、不思議と手に馴染む。
オッサンの大剣と比べると、明らかに細い俺の刀であるがしかし、そこに弱々しさは一切感じなかった。コイツがいれば、大丈夫。
俺も刀を構え、眼前の敵を見据えた。
side out―――
両者は、互いの実力を量るように睨み合う。
周囲から聞こえていた雑音が全て掻き消され、完全に二戦士だけの空間となった瞬間。
予備動作一つなくコバルトが動いた。
ドバッ!と地面を鳴らして高速突進しながら、両手に握った大剣を腰に構え、引き絞る。
回避は間に合わないと感じたリュージは、攻撃を受けつつも衝撃を打ち消そうと刀を構え―――。
「―――グッ!?」
恐ろしいまでの衝撃がリュージの体を襲い、そのまま吹き飛ぶ。
ダガァアアアアン!という轟音と共に、背中から壁にぶち当たる。
「―――くっ!」
そこへ、追撃とばかりに大剣が突きこまれ、慌てて回避する。
「ほう・・・・・・よく避けたな」
そう呟くコバルトに向かって、リュージは一気に加速し、
「うるせぇ!」
お返しとばかりに刀を振るい、叩きつける。
ガァン!という刀剣のぶつかる音が立て続けに響いた。
高速で繰り出されるリュージの攻撃を、しかしコバルトは正確に弾いていく。
そして、そんなリュージの連撃に生じたわずかな隙を見逃さずに、再度大剣を叩きつける。
咄嗟に反応し、刀を使って衝撃を受け流したリュージであるが、攻撃のあまりの重量のせいで完璧にとはいかず、手に痺れを感じた。
それでも、すぐさま刀で斬りつけるが、引き戻された大剣に阻まれる。
そんな攻防を何度か繰り返し、リュージを二度三度と、大剣が掠める。
「どうした、動きが鈍くなっているぞ?」
なおも続く攻撃を、必死で流すしかないリュージ。
(くっ!このまま防戦が続くと・・・!)
リュージside―――
このままの防戦続きでは、俺が負けるのは明白。なんとか切り抜ける方法は・・・。
「――――――!?」
俺の刀にブチ当てられた大剣の衝撃を殺しきれずに、再び壁まで飛ばされ、そのまま激突。土煙を上げる。
―――その衝撃で、頭の奥でずっと閉じられていた扉が開かれた。
そうだ。あるじゃないか。この状況を覆しうる、最高の裏技が!
俺は、うる覚えの魔法を使い、コボルトに向けて火球を飛ばす。コボルトにぶつかる直前ではじけた火球は、一気に広がり、爆炎の壁となる。
今だ。
(エクス!もう1本、刀を出せるか!?)
『え?・・・うん、出来るよ。ボクがいつも使うように、魔力で刀を生成するよ』
エクスが答えると、俺の左手に、新たな刀が現れた。鋼色ではあるが、淡い紅の光を放つ刀。
俺が全力で駆け出しコバルトに近付いたのと、コバルトが剣で爆炎のカーテンを裂いたのは、ほぼ同時だった。
コバルトからしたら、いきなり目の前に俺が現れた形になるだろうが、そこはさすが三大将の一角。
すぐさま反応し、俺に大剣を振り下ろす。
俺は、右に持った刀でそれを往なし、背中に回していた紅い刀を振り込んだ。
コバルトからは死角になってたであろうその刀に、咄嗟に反応し回避行動を取ったのは、さすがとしか言いようが無い。が、完璧ではない。
わずかではあるがしかし明確な斬撃が、コバルトの鎧に入る。
「―――ぐぅ!」
俺の二刀を見たコバルトの表情に、わずかな焦りが見えた。
しかし俺の連撃は、それでは終わらない。
左の刀を下から振り上げ、それに呼応するかのように右の刀を突きこむ。それを引き戻すと同時に、左の刀を腰に振り、防がれれば逆から斬りつける。
そんな勢いで、かれこれ十五発ほど斬撃を繰り出す。
戦場で戦ううちに自然と生まれた、そして磨かれた、【二刀流】。
剣道でも、マイナーではあるが一部では使用が認められている。しかしその場合は、長い刀と短い刀を使用するのだが、戦場で使われることを前提とした覇刀流の二刀は、どちらも長刀。
正直、裏技中の裏技である。
銀と紅が入り混じった剣光は、流れるようにコバルトに振るわれる。
ついに、鎧の隙間から、生身の肉体に攻撃が通った。
「ぐぅ・・・・・・おおおおおお!!!」
ここへ来て初めて、コバルトの表情が崩れ、野太い咆哮とともに(何かの魔法の効果だろうか)赤い光を帯びた大剣を振るった。
「うぉおおおおおお!!!」
それを往なして弾き、俺はさらに連撃を加える。コバルトの手から離れた大剣が飛び、背後で爆音が響く。
そして、黄金の光を乗せた銀と紅の剣戟は、ついにコバルトの鎧を破壊する。
最後の左突きを繰り出し、その剣尖がコバルトの腹に突き刺さる。
「ぐっ・・・がは!」
「覇刀流・・・二刀【流星】」
ここでようやく。俺は、俺の突破口を発見した。
◆
「・・・これでよしっ」
とりあえず止血をして、コバルトの応急処置は終わった。
「・・・なんのつもりだ」
なんのつもりって・・・。
「いや、ほっといたら貧血で死ぬじゃんアンタ」
「殺せばいいだろう。私はオマエに、オマエの二刀流に負けたんだ」
頭お堅いのなこの人・・・。俺は、あのなぁ・・・と頭を押さえながら言った。
「そんな理由で死ぬんじゃねぇよ。その考えだったら、一度負けたら終わりじゃねぇか」
「当たり前だ。敗者は弱者。弱者は強者に食われるのみだ」
なんで俺は、オッサンにこんなことを諭そうとしてるんだろうか、と軽く頭痛を感じながら、俺は仏のように生命の尊さについて説くことにした。
「アホかアンタ。確かに、一度負けたらそいつは敗者で、敗者は弱者なのかもしれない。でも、敗者がずっと弱者でなきゃいけないなんて決まりは無い。一度負けたならもう一度挑戦すればいいし、百回負けたら百回立ち上がればいい」
だから、と。そこで言葉を一度区切り、付け足す。
「納得いかないならもう一度、俺に挑んで来い」
なっ・・・と息を呑むコボルトを気にせず、俺は続ける。
「人の実力が、生まれた時点で、全部が全部格付けされてると思うなよ。誰だって努力したっていいし、誰だって失敗していいし、誰だって負けていい。大事なのは、最後にどうしたか。本人が、最後の最後に何を思ったかだ」
そう。誰だって負ける。練習試合で負けてしまっても、そこから反省し、再度奮起し、本戦で勝つ。いや、たとえ勝てなくとも、その努力は無駄ではないし、勝利を目指したその気持ちは、とても尊いものだ。
俺はそれ以上は何も言わずに、階段を登っていった。
『今回も色々言ってたけど、ここで区切っていいのかい?』
「あぁ。ここから先は、アイツ本人が決めることだ。俺には、道を示すことは出来ても、誘導する資格なんてねぇよ」
これは自分で答えを出さなければいけない問題だ。正しい解答なんてないし、間違った解答もない。本人がなにを信じるかが大事なんだ。そして、相手の解答が気に入らなければ叩き潰す。それが俺流。
『・・・ははは。君は相変わらずだね』
どういう意味だ。
◆
階段を登るとまたまた長い廊下が。
なにこれイジメ?侵入者対策?まぁいいや。このまま進もうそうしよう。
「適当に進んでれば、なんか出てくるだろ」
兵士とか。
『本当に適当だね・・・まぁ近くに魔力を感じたら知らせるよ』
ありがとうございます!俺、魔力とか言われてもいまいちよく分かりませんから。MPみたいなもんだと思ってるから。
永遠続くかと思われた長~い廊下を歩いていると、突然、エクスから反応があった。
『リュージ君・・・いるよ。次の角を右に曲がった先だ』
言われたとおりに進むと、そこにはいかにもって感じの、木でできた扉があった。
「・・・いるな。この先に」
何か、大きな威圧感を感じる。さすが皇帝?
「んじゃ、いくか」
そういって扉に手をかけ、押し開ける。
入った先は、豪華な部屋だった。家具一つとっても、アンタルが持っていた物に劣らないだろう。まぁ、王様と皇帝だからな。大して違いないだろう。
そして、入って正面においてある大きな机にやわらかそうな椅子。
そこに腰をかけた女性、というか女の子がいた。
「あなたが侵入者?」
女の子が問う。
「そうそうワタシ侵入者。んで、君が皇帝かい?」
聞くと、少女は笑顔で答えた。
「そうよ。私が皇帝のアリサ・エルクリア。ところで侵入者さん。あなたたちの目的は何なの?」
「ん?報復。うちの可愛い村長ニーナの命を狙った罪で」
しかし、相手がこんな小さな女の子だと、手が出しづらいな。皇帝っていうからてっきりオッサンだと思ってたのに。お尻ペンペンとかにするか?
そんなことを考えていると、女の子、エルクリアが意外な事を口にした。
「?何のこと?ニーナって、この間対談したあの娘よね?命を狙った覚えなんてないけれど・・・」
「―――――――――え?」
え?どーいうこと?ニーナの読みが外れたって事か?そしたら俺、スゲー迷惑な奴じゃん!いきなり城に攻め込んできた賊ってことになっちゃうじゃん!
「え?マジで!?マジで違うの?」
「う~ん・・・。とりあえず、私はそんな指示出してないけど・・・」
うは~、詰んだ。犯罪者人生確定~!俺一応勇者なのに!
「なぁ・・・。しつこい様だけど、本当に違うのか?」
「・・・・・・あ!もしかしたら、ダイソンさんかも!」
え?なにその、初めてサイクロン式掃除機を開発・製造する会社を創設しそうな人。
「誰それ」
俺の質問に、エルクリアがあごに人差し指を当てながら答える。なにそのポーズ可愛い。
「ん~とね。この国の上層部は今、二つに分かれちゃっててね。無理やりにでも国土を広げようとする強硬侵攻派と、内政を良くしようとする内政優先派って感じでね。皇帝である私が、内政優先って姿勢でいるから、最近はあんまり目立ってないんだけど・・・。最近、侵攻派のリーダーであるダイソンさんが、なんか怪しいっていう知らせを受けていたの。多分、ダイソンさんの指示で、ニーナさんが狙われたんだと思う。きっと、報復を仕掛けてくるのを理由に、村に攻め入るつもりだったんでしょうけど・・・」
そこで一度、俺をチラッとみて。
「どうも戦力を見誤ったみたいね」
まぁ、こっちには天使とか元魔人とかいるからね。チートやチート!
するとエルクリアは、唐突に頭を下げた。
「そういうことなら、ごねんなさい。私たちの問題に巻き込んでしまって・・・もっと早くに対処しておくべきだったわ」
素直に謝ってくれた。素直な娘は好きですよ。というか、そういう理由ならエルクリアが謝る必要はないだろ。
「あ~~、まぁそういうことなら仕方ないんじゃないか?とりあえず、お前が謝る必要はねぇよ。簡単なことじゃねぇか。そのダイソンって野郎をぶっ潰せばいいんだろ?どこにいんの?」
元凶たるそいつを殴らない限り、俺の報復は止まらないZE!
するとエルクリアは、う~んと首を捻る。
「私としては、是非ともあなたに殴ってもらいたいのだけれど・・・最終的な判断はこちらでさせてもらってもいいかしら?」
あぁ、やっぱ皇帝としての仕事ってやつ?
「おう。俺はそいつを気の済むまで殴れるならそのあとはどうでもいいぜ」
そういうとエルクリアは、にっこりと笑って答える。
「ありがとう。協力感謝するわ」
◆
その後、いつもの四人とエルクリアを含めた合計五人で、掃除機おじさんダイソンの家に向かった。
到着したのは、城のすぐ近くに建っていたデッカイ豪邸。ブルジョアめ・・・爆破してやろうか?
でかい正門のところには、結構強そうな守衛が数人いたが、エルクリアの皇帝権限により無効化。すげーこーてースゲー。
俺たちが続いて入っていったら、さすがに何かを言おうとした守衛だが、エルクリアの「私の友人に手を出さないで」という一言で引き下がってしまった。皇帝スゲー。
そのまま建物の玄関まで行き、そこでメイドさん(侍女さんともいう)に案内され、応接間的なところでダイソンを待っていた。
しばらくすると扉が開き、いかにも成金といった感じのオッサンが出てきた。
「これはこれはエルクリア様。わざわざお越し頂いて・・・申し訳ありません。突然の訪問で大したお持て成しも出来ませんで」
張り付いたような笑顔のまま、そんなことを言うダイソン。しかし、それに気付いているあろうエルクリアは全く気にした様子はない。
「構わないわ。すぐに終わるから」
そうですか、と答え、ダイソンは対面の椅子に腰掛け、用意された紅茶を一度口に含み、続ける。
「それで、どういったご用件でしょうか?」
「そうね。手短に済ませましょう・・・」
そこで言葉を区切り、エルクリアは宣言した。
「ダイソンさん。あなたには現職から引退してもらいます」
それを聞いたダイソンは、一瞬呆けたあと、その顔に微笑を浮かべた。
「ほう、それは突然ですね・・・。いったいどういうわけですか?いかにあなたが皇帝といえど、こちらが納得できるだけの理由を提示していただきたいのですが」
「ここにいる人たちは、先日対談したニーナさんからの使いよ。そのニーナさんの命が狙われたの。今回の対談で、彼女らには手出ししないという決定を下したはずなのだけれど?」
「えぇ、その通りですね。ということは、私がそれを指示した犯人であると言いたいのですか?」
ええ、とエルクリアが頷くと、またもや微笑を浮かべるダイソン。
「しかし、証拠はあるのですか?確かに私は強硬侵攻派ですが、まさか皇帝であるあなたの決定にまで逆らうつもりはありませんよ?それとも、なにか証拠でも?」
「最近のあなたの不審な行動についての報告は受けているわ。どうやら、暗殺者とつながりを持っていたようね。物的証拠はないけれども、皇帝である私が、あなたに不信感を抱くには十分でしょう?」
少々無理矢理な気もするが、まぁ信頼できない部下をそばに置くというのは、皇帝にとっては問題なのかもな。
「・・・そういうことならば、仕方がありませんね」
そういうと、ダイソンさんは唐突に立ち上がり
「では、ここで死んでいただきましょう!」
バタン!と扉や天井が開き、数人の男どもが現れ―――
一瞬で倒された。俺・リリア・サタラ・エクスだけでなく、エルクリアまでもが一瞬で刺客どもを伸してしまった。
「なっ・・・!?」
ダイソンの顔が驚愕で染まる。
「馬鹿な・・・!どいつも高額で雇った手練だぞッ!?それを一瞬で・・・!」
その言葉に、エルクリアは軽く答える。
「あら?まさか、あなたが知らないわけではないでしょう?国民の長たるものは強者であれ。つまり皇帝とは―――――――――最強の称号なのよ!」
言葉が終わると同時に床を蹴り、ダイソンの懐に一瞬で潜り込むと、そのまま胸に掌底をぶち込む。
吹き飛び、壁に激突するダイソン。グエッだってwww
つーか強いなエルクリア。まぁ見た目から結構舐めてましたから、正直ガタブルですごめんなさい。
「さぁ。あとは好きにしなさい」
そういってエルクリアは下がる。よし・・・!
俺は座り込んでいるダイソンまで歩み寄り、胸倉をつかんで無理矢理立ち上がらせる。
「よう・・・ダイソン?テメェ、よくもうちのニーナを狙ったな。死ぬ覚悟は出来てんだろうなぁ」
俺がいったいどのような表情をしているかはわからないが、「ひぃ!」とか言ってるこいつの顔を見れば、まぁなんとなく怖い顔してんだろうなぁとかは予想できる。
「テメェの犯した罪は万死に値する・・・・・・が、うちのニーナはおそらく、俺が実行したがっているありとあらゆる行動を望まないだろう」
しかし、と俺は続ける。
「あろうことかテメェは、エルクリアまで狙った。最初は一発殴るだけで許してやろうと思ったが気が変わった」
そして、そのままダイソンの体を空中に投げる。
「よって、空中15コンボの刑に処す」
神に上げてもらった身体能力と、前世での俺の経験により可能となった殴る蹴るの横行。空中なので避けたり受身を取ったり出来ず(そもそもこいつにそれだけの身体能力があるかは不明だが)されるがままの暴力の嵐。まぁ全く罪悪感は感じませんが。
地面に落ちたときにはもうすでに、意識がありませんなこのオジサン。
着地し、ドサッと落下するダイソン。
なるべく怪我をさせないように、痛みだけを伝えたため、パッと見無傷だが、痛みは尋常じゃないので、ダイソンさんに意識は残っていない。
「よし。じゃぁこのゴミどうする?焼く?やっぱこのまま埋めるのは大地に失礼だろ。灰にして埋めるか、もしくは川に・・・いやそれだと自然が汚されるな・・・」
俺が真剣に考えていると、エルクリアが声をかけてきた。
「あの~・・・出来れば殺さない方向でお願いしたいんだけど?」
「・・・え?」
殺しちゃ駄目?
「そんな心底不思議そうな顔をしないでよ・・・」
なぜに呆れ顔なのですかエルクリアさん?
あぁ、そういえばさっき、そんなこと言ってたっけ。俺が。もうホント、自分の中にある殺人衝動が止められなくて。ニーナはそんなこと望んでないよな。あいつは優しいから。・・・・・・やっぱ殺して、ニーナには適当に言い訳を・・・。
「ダメですよ」
な!?リリア、また俺の心を呼んだのか!?
「顔に書いてありますよ。やっぱ殺して、ニーナさんには誤魔化しておこう、とか考えているんでしょう?」
マジでか!?俺ってそんなに顔に出やすい人間なのか!?これじゃあスパイとか出来ねぇじゃん!
「それだけ素直ってことさ」
ありがとうエクス。でも問題は解決してないよ。
「素直過ぎんのもどうかと思うがな。素直の方向がおかしいこともあるし」
追撃はヤメてサタラさん!俺のライフはもうゼロよ!
そんなやり取りを、エルクリアは微笑みながら見ていた。まぁ目の前にオッサンが倒れてるんだけども。
「とにかく、彼の身柄は私たちで預かるわ。後日、お詫びもかねてそちらに伺いたいのだけれど、よろしいかしら?」
ということで、俺たちは帰路についた。
「いやぁ、疲れた疲れた」
帰りの草原。俺たちは、行きと同じメンバーで歩いていた。
「それにしても、今回は派手にやったね。一国に喧嘩を売るなんて」
「本当に。今までの比じゃないくらいの大事ですよ」
二人の言葉に、俺は苦笑する。
「あはは・・・。でもまぁ、後悔はしてねぇよ」
「だな」
俺の言葉に、サタラが同意してくれる。そして、きっとそれが、この四人の総意だ。
「そんじゃ、さっさと帰りますか。ニーナも待ってるだろうしな」
そして、これまでの闘争と区切りをつけるように、改めて一歩を踏み出した。
そのとき。
ズンッ!とした重圧を感じて、思わず足元を見直し。再度正面を向くと。
その口元に微かな、しかしなぜか感情を感じさせない笑いを浮かべた男が立っていた。
「久しいな、人間」
地獄から響くような声。喉が渇き始めていることにも気づかずに、俺は声を絞り出す。
「魔、人・・・・・・!」
それは、どこまでも無感情に。それでいて強大に。一本道に立ち塞がる。
まるで。これまでが、ただの序章であったかのように。
いやぁ、遅れてしまって申し訳ありません。
そして、このあとがきを書いている今も、正直あまり時間がありませんゆえに、今回はこのような簡潔な短文で失礼させていただきます。
これからも当作品をよろしくお願いいたしますm(_)m




