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第十二話:悪魔《デーモン》を継ぐ者


久しぶりの投稿です。

ちなみに、サブタイにはそんな深い意味はありません


「GOGOGOGO!!!」

『わぁあああ!』

俺は今、子供たちと遊んでいる。

タイトルとしては『いくさ』。いわゆるサバイバルゲームの銃じゃない版。

各々好きな武器、剣や盾や槍や弓や(もちろん本物じゃない。比較的柔らかい木で作ったおもちゃである)を手に敵と戦う遊びである。

ルールは色々あるが、今回は敵殲滅戦。相手チームを全滅させるか、降参させるかで決まる。

ちなみに、やられたかどうかは自己判断。掠り程度ならセーフだが、明らかに決まっていたりしたらアウト。というかなりシンプルな判定である。


ちなみに俺は本気を出していない。当たり前だ。まあ適当に打ち合うくらいだな。

ん?どうも敵サンは俺を潰したいらしく、チーム全員で俺を囲んだ。お前ら・・・他の奴らはどーすんの?

そんな疑問も、すぐに解決した。

「ふふふ・・・リュージお兄ちゃんもここまでさ」

「な!?お前は仲間のはずじゃ・・・ッ!まさか!」

「そのまさかさ。ここにいる全員が、アンタの命を狙っているのさ」

「とうとうリュージ兄ちゃんが死亡キルされるときがきたね」

なんてこった。全員に裏切られてしまった。なんて人望ねぇんだ俺は!・・・まぁ遊びだけどね?うん、遊びだからだと信じたい。

「くくく・・・俺も舐められたもんだなぁ。お前らじゃ・・・まだ俺の首は取れねぇな」

「くッ!だがその自信も今日までだ!みんな、かかれぇえええ!!!」

ワァアアアアア!!!というときの声を上げながら一斉に突っ込んできた。

「ふ・・・まだまだだな。お前に足りないのはッ!情熱思想理想思考気品優雅さ勤勉さ!そして何より――――――速 さ が 足 り な い !」

高速で移動すると、全員に一本ずつ攻撃を加える。

我ながら、大人気ないと思いました。



「ぁあ!今日も負けたぁ!」

そう叫んだのは、敵チームのリーダー的ポジションだった少年だ。

「ははは!俺に勝とうなんて一万年と二千年早ぇんだよ!」

ビシッ!と指を突きつけて勝利宣言。ついでにニヤッとむかつく笑顔、ニヤッ。笑顔は体と心を健康にする。

だがまぁ、その法則が対峙した相手に当てはまるかと言えば、そうではない。

事実、未来を担う、目の前の少年少女達は、胸の奥から湧き上がる怒りにワナワナ震えていた。

「なんで・・・なんでこんな奴に負けんだよぉおおおおお!」

「こんなふざけた野郎に負けたままなんてイヤだ!」

「そうだ!もう一回だクソ野郎!」

ははは、チョロいチョロい。子供なんて俺の人心掌握術にかかればこんなもんさ!


そのあと五回くらい続けたね。いやもう怖いわ子供。そして、ナチュラルに俺を一人にするの止めてくんない?さすがに連続は疲れるだろ。せめて三連にしてくれ。

とても疲れたし、面倒になったため、昼飯の時間だという理由で止めにした。


ニーナの家に戻ると、なにやら嫌な予感のようなものを感じ、自分の直感を信じる形で、なんとなしに厨房に向かった。


・・・嫌な予感が当たってしまったようだ。

厨房では、お玉と鍋蓋を装備した、なんとも笑えるヒロインが二人いらっしゃった。

なにしてんのあいつら・・・。

友人の意外な性癖に、思わぬ形で対面してしまったときの喪失感というかガッカリ感というか。とりあえず、それに似たり寄ったりの残念な感情を抱き、もういっそ見なかったことにしてしまおうと、そのまま厨房を後にした。・・・かったのだが、残念ながら背中から声を掛けられてしまった。

「あれ?リュージだ!」

リズの声だ。どうやら俺からは死角になっていて見えなかったようだ。

見なかった作戦失敗に肩を落としながら、仕方なくリズが座っていた腰掛、その隣まで歩いていき、壁に背中を預けた。

「・・・お前、なんでいんの?」

いや別にいてもいいんだけどさ。このタイミングで声を掛けられて、少しげんなりしたので、少し突き放すような言葉が出てきた。

「なによその言い方!せっかく会いにきたのに!」

「別にいいけどさ。・・・で?なにしてんのこいつら。メインヒロイン争奪戦?俺はハーレムエンドが好みなんだが」

「なんでアンタが主人公なのよ」

「俺はいつだって、自分の物語の主人公さ・・・」

「え?それでカッコつけたつもり?」

本気で不思議そうな顔をされた。涙が出そうになったので、仕方なしに、話題を目の前の現実に向けることにした。

「それで結局なにしてんの?」

なんか二人で打ち合ってるし。お玉で。

表現の上では実に平和的な光景だが、まぁアイツら強いから。メチャクチャ動きが速いんだよね。

「なんか、お昼のメインをパンにするかパスタにするかでケンカになった」

うわぁ、どっちでもいい~。

「・・・どーすんのこれ。このままだと、お玉と鍋蓋が無惨な姿になってただいまお母さんって展開になりそうなんだが。つーかニーナはどこ行った?まだ彼女の『お帰りなさいリュージさん♪』を聞いてないんだが」

ついでに『ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・』も聞いてない。

「村長は仕事中だってさ。残念だったねこのロリコン」

「ロリコンじゃねぇよフェミニストだよ」

別にちっちゃい女の子が好きなのではなく、素直で可愛らしい娘が好きなだけだ。


そのあと、二人で他愛無い会話をしながら、天使と元魔人の戦い(得物はお玉と鍋蓋)を眺めていた。



結局、ベコベコボコボコになってもうお嫁にいけません!状態で、それぞれの武器『調理道具クッキング・ウェポン』は帰還し、よく・・・頑張ったなと、おもわず涙してしまいそうになった。

いやぁ、壮絶な戦いだったな。

天使対元魔人のメニュー(プライド)を掛けた戦いは、こうして幕を閉じた。


お昼のメニューは、結局決着が着かなかったので、あいだをとってライスになった。

そういえば、ライスって読み方には、米とは別に、シラミの複数形って意味があるらしい。・・・・・・やめよう。食欲がなくなってきた。

ご飯をおにぎりにした。おむすびともいう。昔はおじぎりとも呼ばれていたらしい。叔父・斬り!身内殺しとか呼ばれそう。

白米には味噌汁が付き物である。それと漬け物。しかし、どうもここには漬け物が無いらしい。・・・・・・泣くぞチクショウめ。漬け物好きなのになぁ。ホント、あれ一皿でご飯十杯はいけちゃうね。

煮干しの出汁だしのきいた、とても美味しい味噌汁は、俺とニーナで作った。初めての共同作業である。

「なんてこった・・・。この塩加減・・・貴様、組織の回し者か!?」

「ご飯くらい、大人しく食べられないのかい?」

エクスさんの袈裟斬りが炸裂!リュージの心に二万のダメージ!

「いやぁ、賑やかな食事っていいじゃないか」

「お前のは耳障りなんだよ」

サタラの突貫攻撃!リュージの感情に二万五千のダメージ!麻痺になった!

「わ、わかったよ。もう黙ってるよ・・・」

・・・・・・。

「なにか喋ってくださいよ。貴方が急に黙ると、違和感しか感じませんよ気持ち悪い」

リリアの会心の一撃!急所に当たった。リュージの精神に壊滅的なダメージ!リュージはやさぐれた。

「・・・・・・」

「えっと、リュージさん。ファイト、です!」

ニーナに励まされた。心に染みる、優しい言葉。ライフが百倍になった。元気百倍!アンポンタン!



お天道様が、真上から降下し始めた時間帯。俺は、ニーナと一緒に食後の散歩をしている。

「今日もいい天気ですね~」

「あぁ、ポカポカしてるな」

気持ちのいい天気である。とても身体に良さそうだ。健康食品を食べるより、太陽を浴びたほうが長生きするんだぜ?多分。


しばらく歩いていると、少し開けた場所に出た。俺たちがよく、戦をしているところだ。この場所では主に、全勢力を正面からぶつける消耗戦や、一騎打ちなどが行われる。たまに、村の人たちの力比べとかもある。

「・・・リュージさん」

ニーナは、なにやら改まった様子で俺のほうを向いた。

「?どうした?」

なにを言われるのか、皆目見当がつかない。

「これから、具体的にどういったパワーアップをするんですか?」

なにやら含んだような言い方に、ニーナが何を言いたいのか悟った。

「あぁ・・・バレてたか」

俺が、なんの目処も立っていないことが。

「見ていればわかりますよ」

クスッと小さく笑うニーナ。なんてこった。そんなにわかりやすいか俺。

「今のままじゃ、リュージさんたちは目的を達成できないんですよね?」

「そう、だな。うん、その通りだ。今のままじゃ、この先、とりあえず俺はとても敵わない。絶対的に力が足りない」

そう。確かに、エクスを振るい、刀、剣は扱えるようになったが、それでは足りない。バリエーションは全然増えてないし、なにより決定打に欠ける。

「なにかが・・・。そう、もう少しでなにかが出そうなんだ」

あと一歩、というところまでは来ているんだ。あとは、その回答の手前に聳える扉を押し開けるだけ。しかし、その扉はあまりのも重く、堅い。

しばらくの沈黙の後、ニーナは表情を和らげた。

「そうですか・・・。そこまで辿り着いているのなら、私に出来ることは、ほとんどありませんね。あとは、リュージさん自身の力で、解を得るしかありません」

「そう・・・だよな。やっぱ、自分で何とかしないと・・・」

俺が言うと、ニーナは、でも。と続けた。

「答えが出るまで、そばで支えることくらいは、私でも出来ますよ?だからリュージさんは、ゆっくりと、自分のペースで、解を求めてください」

そういってニーナは、俺の手を握り、一度力を込めて、離した。

「・・・ありがとうな。なんか、元気出たわ」

いえ。とニーナは答えた。

そうだよな。俺がしっかりしないとな。

そう思って、空を見上げた。太陽はまだ、元気に輝いている。


その時。

何かを感じた。ちりちりとした、嫌な感覚。何かが見えているわけではないし、聞こえるのは行き来する村人達の喧騒だけだ。

しかし、確かに感じる。昼時に感じた嫌な予感とは似て非なる、無機質で、それでいてねっとりとした感じ。

見られている。というよりも、狙われている?

そんな嫌な感情に従い、顔を直感的に背後に向け、ただなんとなしに、建物の上、屋根に目を向け―――


地味な色のローブで頭を含めた全身を覆った、誰か(・・)が、こちらに向かって、凝縮させた鋭い殺気と共に矢を放ったのは、それとほぼ同時だった。

軌道は、俺を少し逸れる位置。そして、ニーナの頭の位置―――!?

「危ないッ!」

え?という声を上げたニーナを、押し倒す形で移動させ、上から覆い被さる形で落下途中だった俺の、ちょうど頬の所を掠め、倒れたニーナの頭の右上の地面に、その矢は突き刺さった。

すぐに振り向き、屋根の上を見ると、ちょうどそのマントの裾が隠れるところだった。

「野郎っ・・・!」

俺は一気に駆け出し、神様に上げてもらった脚力で、屋根まで跳んだ。

向こうには、ローブをなびかせながら走る姿があった。

相手は、屋根から屋根へ跳びながら、かなりの速度でダッシュしている。俺も、それを追いかけ、勢いを殺さずに、屋根を飛び跳ねる。

前を走るローブを目で追いながら、全力で屋根の上を駆けていると、突然、そのローブ姿が視界から消えた。屋根から下りたのだ。

見逃すまい、と懸命に駆け、やっとの思いで屋根の淵に辿り着くと―――その眼前に広がっていたのは、広い森だった。



森の手前を少し入り、今からここを追いかけても意味が無い。と判断した俺は、今度は路上を駆けた。置き去りにしたニーナのところに戻るためだ。

元の場所に戻ったとき、そこには人だかりが出来ていた。

ニーナ!と声をかけると、その人だかりはこちらを向き、俺を確認すると、まるで海を割るように道が出来た。

それを通って、ニーナに駆け寄ると、ニーナは先ほどと同じ位置に座り込んでいた。

「あ・・・リュージさん」

俺を見つけると、ニーナは体を起こした。

「大丈夫か?怪我とか無いか?」

「えぇ、大丈夫です。・・・・・・それよりも・・・さっきの人は・・・」

その問いかけに、俺は首を左右に振った。

「すまん。森に逃げられた・・・」

「そう、ですか・・・・・・とりあえず、家に戻りましょう」

そういってニーナは、いまだ地面に刺さっていた矢を引き抜き、歩き出した。

「あ、あぁ・・・」

俺は慌てて、その背中を追いかけた。



家に戻り、先ほどの出来事を話すと、リリアとサタラの顔に緊張が走った。

エクスも人化し、五人で緊急会議が開かれた。

最初に口を開いたのは、ニーナだった。

「犯人の目星はついています。おそらく、インサー帝国の仕業でしょう」

インサー?なにそれどこそれ。

「インサー帝国というのは、ここ一、二年で成長し始めた国で、この村から少し離れた場所まで勢力を伸ばしているんです」

帝国ってことは、皇帝が治めてるのか。へ~。あのリュークブルナイがすぐ近くにあるのに、大した度胸だなぁ。

「先日。帝国から一通の手紙が届きまして・・・。配下に下らなければ後悔させる。と書いてあったんです」

なんとも直接的な文面だな。そうとう自信があるのな、自分に。

「しかし、配下に下ってしまえば、村の人たちにも影響が出ます。なので、あくまで交渉で手を打とう。と返事をしたんです。しかし・・・」

「帰ってきた答えが・・・コイツってわけだ」

そういってサタラは、先ほどニーナを狙った矢を手にした。

「先ほどの人物が、帝国の者か、雇われかはわかりませんが、息がかかっているのは確かだと思います」

そこまで言い切ると、とりあえず、言いたいことは言い切ったようで、ニーナは何も言わない。


「で?結局どうするんだ?帝国潰すの?皇帝泣かすの?とりあえず、ニーナを傷つけようとしたことを後悔させる方向で」

許さないよ?え?俺スマしてるけど、実はブチ切れてますからね?

「・・・多分、今後はリュージさんも狙われると思います」

え?なんで?いや向こうから来てくれるならウェルカムだけども?ぶっ殺すから。

「先ほど私を庇ってくださったことで、リュージさんが私のボディーガードだと思われてしまった可能性が高いからです」

そういって、ニーナは顔を伏せる。どうやら、俺を巻き込んでしまったことを悔いているようだ。

俺は思わず、鼻で息をしてしまった。

「はっ!何を今更」

「え?」

よく理解できない様子のニーナに、俺は補足説明する。

「いいか?俺は、いつだってニーナを守ってやりたいと思っているし、そうしているつもりだ。お前が困っているなら手を貸すし、ピンチなら助け出す。だから、今更気にすることなんて何もない」

「でも・・・」

まだ納得がいってない様子のニーナは、俯いてしまう。仕方が無いので、俺はニーナの両頬を押さえ、顔を上げさせる。

「ニーナ。これは俺がやりたいからすることだ。もしお前が関わるな、って言っても、俺は絶対お前を助ける。俺はお前を守りたい。だから今回は、あの場に居合わせて良かったと思ってるぜ?」

「・・・リュージさん」

「だから、むしろあの暗殺者に俺のことを知ってもらえて良かったんだ。教えてやろうぜ?ニーナのそばには、恐ろしく強い『悪魔デーモン』がいるってな」

あぁ。自分から化け物宣言しちまった。

でも、後悔はねぇな。ご先祖様、アンタの異名。十七代目当主、折坂竜司が譲り受けるぜ?

ニーナはしばらく、俺の顔をじっと眺めていたが、やがて目元に涙を浮かべながらも、その顔に笑みを浮かべた。

「・・・はい!ありがとうございます!」

それは、命を賭けてもお釣りがくるほどに、美しい笑顔だった。


リュージ「インサー帝国?ブッ潰して差し上げるぜぃ!」

作者「・・・そーだね」

リリア「・・・どうしたんですか?」

サタラ「珍しく覇気がねぇな」

作者「いや・・・別に―――」

エクス「期末試験で赤点をとってしまったのだ!」

作者「あぁもう!なんで言っちゃうかなぁ!」

リュージ「ちなみになんの教科だ?」

作者「・・・古典」

エクス「もろ苦手教科だね~」

作者「うぅ~・・・今回は、試験一週間前から、ネットを控えてたのに・・・」

サタラ「あぁ、だから話が全然進まなかったのか」

リリア「まぁ普通に、話を思い付かなかったというのもあるでしょうけど」

作者「・・・否定はしません」


作者「あぁあああ・・・せっかくの冬休みに、赤点者用の課題とかマジいらねぇよ!なんの意味があるんだよ!敗者に追撃、傷口に塩か!?休みくらいゆっくりさせてくれよ!」

リュージ「仕方ねぇだろ諦めろ。課題なんてやれば終わるだろうが」

作者「・・・うるせぇリア充」

リュージ「ぁん?なんか言ったか?」

作者「何も言ってません~♪いいからさっさと話始めろや」

リュージ「テメェあとで絶対にシバく・・・!」


リリア「次回!インサー帝国の皇帝が住まう城に、真正面から突撃するリュージ一行。待ち受けるは数千の兵と、帝国三大将を名乗る猛者達!」

サタラ「ニーナの命を狙った暗殺者との因縁の対決に、皇帝が口にする真実!」

エクス「ふるえるたかぶる異世界バトル、『転生した俺は勇者として魔法世界を救うらしいですよ?』次回もお楽しみに!」


サーシャ「作者のヤル気と」

リズ「冬休みが交差する時」

ニーナ「物語は始まる!」


リュージ「・・・交差したらな」

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