The end to the start(終わりから始まりに)
痛い。地獄に落ちたというのに痛みを感じる。ゆっくり目を開けてみる。
天井に電球が一個。周りには真っ白な壁。地獄ではなく天国に来たのか?ガチャという音が聞こえた。音がする方を見た。男が立っている。あの世の案内人なのだろうか。
「やっと目が覚めたか。全くタフな野郎だ」
男は笑っていた。急に頭の中をよぎった物がある。思い出した。
撃たれた後、東京湾に落とされ、そこに菅原が助けにきた事を。ということは、あの男はマスターって事か。
「じゃ……生きてるのか?俺」
横から女が現れた。菅原だった。口にくわえた煙草を取り、木村の口元に持っていった。
「全く。世話が妬けるよ」
煙草をくわえた。煙を吸い込み、肺に入れる。生きてる。
“俺は生きてる。やり残した事はないが、俺は生きてる。たった一つの物を失った。それを奪い返す。今度は攻撃に移る番だ。”
「銃はあるか?」
二人は顔を合わせてからマスターがバックを持ち上げた。
「復讐するのか?」
マスターが一段と低い声で言った。
「個人的問題だ」
バックを足下に置かれた。痛む体を起こし、バックからベレッタを出す。
「今の体じゃ無理だよ。あんた三発も撃たれてるんだよ?」
無視しながら銃のスライドを動かす。金属音が部屋中に響きわたる。
「伊藤が死んだんだ」
「あぁ。テレビで見たよ」
「それだけじゃないんだろ?」
菅原が煙草に火をつけながら言った。まったくその通りだ。
「やめとけ。相手が悪すぎる。自分の組を破滅させる気か?」
部屋の中が静まった。口を開けたのは木村だった。
「失った物を取り返すだけだ」
第一部が終わりました。第二部に続きます