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全ての始まり

ダークなノワール作品だと思います。できればご感想下さい。

ニ○一五年十月二十五日午後十一時六分

 ここは歌舞伎町。別名“眠らない街”。この街は五年前、国会議事堂がテロで爆破されて以来すっかり変わった。今や“闇の街”と呼ばれる様になっている。

 街を歩くと目に入るのが香港の奴等だ。

国会議事堂の爆破事件の翌年から香港のマフィアが本格的に乗り込んできた。当時街を仕切っていた太田組の組長、太田しのぶが暗殺され、一気に街を支配した香港側の(ウー)組は今度は密入国の手引きさせ、香港の奴等を日本に招待させる事にした。忽ち街のあちこちに香港の奴等を見る様になった。そして今に至る。

 俺は木村龍。歳は二十五。一九九○年十月七日生まれ。日本人だが(ラム)組の下で働いている。四年前、街のガイドをしている時に当時の(ウー)組に雇われ、その経緯で(ラム)組の組員になった。ハーフになった気分だ。

 俺は煙草を吸いながら新宿ゴールデン街の裏通りを歩いていた。アダルトショップや中国ソープと書いてあるネオン看板。客引きやホスト、肌を露出させた服を着た娼婦などで溢れている。

 楓林閣と映った赤いネオン看板の前で止まった。自動ドアの前にはサングラスをかけ、黒いスーツを着た中国人の男二人が立っている。スーツの中にはホルスターに収まったベレッタM92Fが見えた。

 木村は平然と二人の間を抜け、店の中に入った。

 店の中は白一色の壁が目立った。右にはレジが置かれたカウンターがありチャイナドレスを着た女が立っており、奥にドアがある。右上には監視カメラが取り付けられていた。正面と左には長い通路があり、通路からは笑い声が聞こえてきた。

 俺は煙草をカウンターの上にあった灰皿に擦りつけた。

歓迎光臨(いらっしゃいませ)

 若い女が広東語で言ってきた。

(ウー)は何処かな?」

 俺も広東語で言った。

「七○二号室です」

 女は左側の通路に手を向けた。

多謝(ありがとう)

 俺は通路を歩きだした。通路を歩いていると部屋からチャイナドレスを着た女が食器を運んでいたり、女といちゃつきながら歩いてる男女が横を通り過ぎて行った。

 部屋の前に着いた。ドアを二回ノックした。ドアが開き、中から女の笑い声が聞こえてきた。

「龍!よく来たな!」

 女に囲まれ口髭を生やした中年の男が笑いながら言った。

―この男は(ウー)(ラム)組の組員で倉庫と呼ばれる場所で(ヤク)や銃などを管理している男だ。

「遅れてすまない」

 俺はソファーに腰をおろしながら言った。

「気にするな。それよりお前も飲め」

 そう言いながら女どもと話始めた。

 俺は酒のボトルを取り、グラスに注いだ。一口飲んだ。悪くはない。コートのポケットから赤のラークを取り出した。フィルターをくわえ、ポケットに手を入れた。煙草に火がついた。隣に座った女を見た。日本人だった。手にはライターを持っていた。

 女は薄い赤の口紅をして、化粧はそんなにしていない。髪はショートヘアーで茶髪。目はぱっちりして、少し痩せている。胸の開いた赤いドレスを着て、身長は木村より少し低いくらい。足を組んでいた。とても大人ぽく、魅力ある女だ。

「何かご用でも?」

「木村龍ね。一目で分かったわ」

「俺もあんたが誰か分かるぜ」

 木村は微笑した。

「あんたは歌舞伎署の刑事課の高橋絵里。階級は巡査部長。一九八六年十一月二十七日生まれ。歳は二十九歳。ついでに住所も言おうか?」

 女は真剣な顔で木村を見ていた。

「結構よ」

 木村は高橋の髪の中に手を入れた。小型盗聴機が出てきた。

「お疲れさん」

 盗聴機に言った。それを床に落とし、踏み潰した。

「何でも知ってるのね」

 高橋は青い文字で書かれたケントを取り出した。

「他にもいろいろ知ってるぜ」

 木村はジッポで火をつけてやった。

「例えば?」

「あんたの上司の不倫相手やそんなとこさ」

 木村は笑った。高橋も笑った。

「怖い人ね。今度一度食事に行かない?」

「それはデートの約束かな?」

「分かってるくせに」

 高橋は頬を膨らませてそっぽを向いた。木村は高橋の首に腕をまわした。

「分かってるって」

 耳元で囁いた。高橋は笑顔で振り返った。

 外から何かの破裂音が聞こえた。とても乾いた音だ。すぐに9mmの銃だと分かった。ドアが勢いよく開いた。日本人の男が二人立っていた。手にはグロック19を握っている。

「誰だ!?」

 壁に寄りかかっていた男が広東語で叫びながら上着に手を入れた。

 一歩遅かった。片方の男に腹、頭の順に撃たれた。男は体から血を吹き出しながら床に倒れた。壁に血と肉片が飛び散り、鮮やかな色の血が流れてきた。女達の悲鳴の合唱が始まった。その中からガシャンとポンプする音が聞こえた。振り向くとオールバックの男が眉間に皺を寄せながらレミントンのM870のソードオフタイプのショットガンを持っていた。撃った。だが、二人の姿はなかった。

 女達が一斉に裏口に逃げていった。木村もバーカウンターの様な所に隠れた。後ろから高橋もついてきた。木村は腰に付けたホルスターからロシア製のトカレフTT33を取り出した。

 この銃に装填されてる7.62mm×25の弾はボディアーマーをも貫く力を持っている。これに撃たれて死ななのは奇跡に近い。

 オールバックの男はフォアグリップをスライドさせた。エジェクションポートから赤い12ゲージのショットシェルが勢いよく飛び出した。

 嫌な静けさだった。突然ギーという音がした。見ると風で裏口のドアがゆっくり開いる。

 それがきっかけだった。オールバックの男の体に9mmの銃弾が浴びせられた。男はソファに倒れた。口から血が溢れていた。目を開けながら死んでいた。

 (ウー)が飛び出た。両手にトカレフを持って撃ち始めた。片方の男の体に当たり、後ろに飛ばされる様に倒れた。

 銃弾はあちこちに当たった。ソファーやガラスのテーブル、酒のボトル、白い壁に当たった。銃のスライドが止まった。弾切れだ。(ウー)はマガジンを抜き出し、次のマガジンを入れようとしていた。

 男は(ウー)にグロック19を向けた。銃声。(ウー)の体に9mmの弾丸が撃ち込まれた。弾丸は体を貫き、後ろの壁に当たった。(ウー)は壁に背を向けて倒れた。もうピクリとも動かなかった。

 透かさず木村は男を撃った。男の胸に三発当て、男は吹き飛んだ。綺麗な血を宙に撒きながら。

 部屋の中は硝煙が立ち込めていた。床には死体や薬莢、ガラスの破片、コンクリートの破片などが散らばっている。

 サイレンが聞こえてきた。誰かが通報したのだろう。

「俺はもう行くぜ」

 トカレフをホルスターに入れながら高橋に言った。高橋は頷いた。

「今度会いに行くわ」

 微笑んだ。軽くキスをした。高橋は顔を赤くしていた。

 裏口に出た。暗く、電灯が一つ不気味に光っていた。木村はすぐ右にある工事用のフェンスをずらした。人一人がやっとぐらいの細い道が現れた。道に入り、フェンスを元の位置に戻し、暗い道を走り抜けた。


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