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支えだった姉とピエロのわたし

作者: 鍋の地
掲載日:2025/12/08

プロ作家の妹×ピエロな妹。

「はははっ、文章がメチャクチャっ」

「そう? 一生懸命書いたんだけど、わたし」

「マジか、一生懸命に書いてこれか。才能あるぞ」

「才能? 作家の?」

「お笑いのだよ。まったく」


小説家の姉。

それが、わたしの生きる意味。

わたしは、何もできない。文章もダメだし、勉強も、運動も全くダメ。高校も、なんとかして合格できたレベル。

姉は、18歳だけど、専業作家。人気もある。

人気の作家だから支え、ではない。


本当に、昔から、この人は何でもできていた。


今は、お姉ちゃんは入院している。

死ぬかもしれない、らしい。


まるでダメな小説を書いて、この人の所に持っていく。そして、笑われながら、頭を優しく撫でてもらう。

わたしの幸せ。


いつまでもあると思っていた、幸せ。

いつまでもないといけないと思っていた、幸せ。




「もしかしたら、君は書けるかもしれない。文章力も、あるかもしれない。

私より凄い作家になってくれよ」

それが、妹のわたしが聞いた最後の姉の言葉だった。


「読んでよ、お姉ちゃん」

墓に、語りかける。

「まだ早いよ、その中に入るのは」

返事は、ない。


もう、お姉ちゃんは、笑ってくれない。

生きる理由が、なくなった。

わたしは、どうすればいいのだろう。




お姉ちゃんが死んで、数週間経った。


『文章力も、あるかもしれない。

私より凄い作家になってくれよ』

言葉が頭から離れない。

ぐるぐるしている、ずっと。


「わたしに、文章力が?」

自信がない。

「お姉ちゃんより凄い作家?」

無理だ。だって、真面目に作ったことがない。


『文章力も、あるかもしれない。

私より凄い作家になってくれよ』

ぐるぐるは止まらない。


「じゃあ、やろう」

自信はないけど、ぐるぐるが止まるなら。

あの世のお姉ちゃんが満足してくれるなら。


妹のわたしにとって、お姉ちゃんは、理想で、生きる理由だったから。

ありがとうございました。

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