支えだった姉とピエロのわたし
プロ作家の妹×ピエロな妹。
「はははっ、文章がメチャクチャっ」
「そう? 一生懸命書いたんだけど、わたし」
「マジか、一生懸命に書いてこれか。才能あるぞ」
「才能? 作家の?」
「お笑いのだよ。まったく」
小説家の姉。
それが、わたしの生きる意味。
わたしは、何もできない。文章もダメだし、勉強も、運動も全くダメ。高校も、なんとかして合格できたレベル。
姉は、18歳だけど、専業作家。人気もある。
人気の作家だから支え、ではない。
本当に、昔から、この人は何でもできていた。
今は、お姉ちゃんは入院している。
死ぬかもしれない、らしい。
まるでダメな小説を書いて、この人の所に持っていく。そして、笑われながら、頭を優しく撫でてもらう。
わたしの幸せ。
いつまでもあると思っていた、幸せ。
いつまでもないといけないと思っていた、幸せ。
「もしかしたら、君は書けるかもしれない。文章力も、あるかもしれない。
私より凄い作家になってくれよ」
それが、妹のわたしが聞いた最後の姉の言葉だった。
「読んでよ、お姉ちゃん」
墓に、語りかける。
「まだ早いよ、その中に入るのは」
返事は、ない。
もう、お姉ちゃんは、笑ってくれない。
生きる理由が、なくなった。
わたしは、どうすればいいのだろう。
お姉ちゃんが死んで、数週間経った。
『文章力も、あるかもしれない。
私より凄い作家になってくれよ』
言葉が頭から離れない。
ぐるぐるしている、ずっと。
「わたしに、文章力が?」
自信がない。
「お姉ちゃんより凄い作家?」
無理だ。だって、真面目に作ったことがない。
『文章力も、あるかもしれない。
私より凄い作家になってくれよ』
ぐるぐるは止まらない。
「じゃあ、やろう」
自信はないけど、ぐるぐるが止まるなら。
あの世のお姉ちゃんが満足してくれるなら。
妹のわたしにとって、お姉ちゃんは、理想で、生きる理由だったから。
ありがとうございました。




