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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
第四部 死神令嬢、真実を知る

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80・回り出す最悪の歯車(後半モクレン視点)

◆◆◆


かつて、錬金術師達が禁断の魔道具である『これ』を製造し国から弾圧され、百年後に魔法科学者と名を変えた時。


我々は、魔道具三原則なる決まり事を国から命じられた。


其の一、魔道具は主人に危害を加えてはならない。


其の二、魔道具は主人の命令には絶対服従すること。


其の三、魔道具は主人の幸福のみを追求せよ。



この三原則に共通することは、禁断の魔道具への恐怖だと言える。


確かに『これ』は脅威に思える。

だが『完成させてわかった』のは、『これ』は予想よりも出来ない事が多いということだ。


まあ、所詮は魔道具に過ぎないのだから、当たり前か。



◇◇◇




「え、ロスベール公爵が、私に謝罪し心を入れ替える⋯⋯ですか? ファウスト様」




私はカルミア様から『モクレンがロスベール様に殺されるかも知れないから、一緒にファウスト様に頼んで彼を止めてもらいたいの』と言われ、羆魔獣が片付き落ち着いた現場をマグノリア騎士団に任せてから、ファウスト様の元へ向かった。



モクレン様はまだ王城の地下牢におられるだろう。


ならば鉄格子を破壊してでも助けたいが、ここで私が暴れてしまうと余計モクレン様の立場が悪くなる。



だから、権力の塊である浄化の聖女カルミア様と共に、ファウスト様を味方につけてモクレン様の救出をすべきと判断した。


⋯⋯モクレン様なら、まず権力のある味方を作ることから始めるだろうから。



と言う流れでカルミア様と共に馬車に乗り王城へ向かい、ファウスト様の部屋へ行くと、彼は即席乾麺――カップ麺を食べながらロスベール公爵が心を入れ替えると言ったのだ。


なるほど、心とは入れ替え可能なのかと思っていると、くぅ⋯⋯と私の腹から空腹の音が鳴る。



そう言えば、昼食の準備中にモクレン様は緊急逮捕され、私達は魔獣と闘ったのだ。


時刻はもう夕方だ。何もなければ、今頃昼食どころか晩御飯である。


空腹状態の私に、ファウスト様が



「ツミキ様。良かったらカップ麺をお召し上がりになりますか?」



と聞いてくれた。




「魅力的なご提案ですが、遠慮させて頂きます。ご飯の前に何かを食べるのは、調理する方に失礼ですから」


「正解! それに、カップ麺はどう足掻いても非常食。栄養的に良いものではありません。⋯⋯それに」




ファウスト様は困ったようにへにゃっと笑い



「これ、新商品なんですけど、あんまり美味しくなくて⋯⋯」



と肩を落とした。



そんなファウスト様へ、カルミア様が焦ったように



「カップ麺の話してる場合じゃないですっ! ファウスト様、ロスベール様は心を入れ替えるんですよね? それなら、二度とこんなことしないよう注意してくださいよっ!」


「⋯⋯ああ、そうでしたね。それじゃ、行きましょうか」




ファウスト様はカップ麺を手に持ったまま、ソファーから立ち上がった。


私達も立ち上がり、カップ麺で片手が塞がっているファウスト様と一緒にドアを開ける。


そして、王城から少し離れたプルトハデスの大教会へ向かった。


夕暮れに染まる薔薇の庭園を歩きながら、カルミア様は先程より一段階高い声で



「あ、あの⋯⋯ファウスト様♡ あたし、実は貴方のことカッコいいなって思ってたんですっ♡」



と目を潤ませながら彼の片腕に抱き着いた。


カルミア様はモクレン様にしていたようにファウスト様へ甘え出す。

きっと、モクレン様の次はファウスト様なのだろう。


そんなカルミア様へ、ファウスト様は



「カッコいい? ええ、そうでしょうね。だって、伝説のホストでしたから」



と笑って答える。


確か、モクレン様が倒れた際に彼が元ホストだと雑談の中で聞いた。


ファウスト様も色々とあったのだなあと思っていると、カルミア様は



「ゲッ、元ホスト⋯⋯? ま、まあ元ですからね、元!」



と一瞬怯んだものの、気を取り直したようで再び甘えだした。喉元過ぎれば熱さを忘れる、と言うやつなのか。



そんな我々はプルトハデス大教会に着くと、ファウスト様が



「すみませんツミキ様。扉を開けてくださいますか?」



と、困り顔で笑う。


確かに、彼は片手にカップ麺、もう片手にカルミア様だ。ドアを開けるのは無理だろう。



私は大教会の扉を開けた。


そして、一面ステンドグラスの室内を歩き、女神プルートが描かれた宗教画の前で立ち止まる。

その両隣には女神像が立っており、絶対不可侵な雰囲気を漂わせていた。




「あーツミキ様、右の女神像の裏に突起がありますでしょ? それを押してもらって良いですか?」


「? これですか?」




両手が塞がってるファウスト様の指示で、不敬ながら女神像に触れると、服の装飾に隠れた突起を見つけたので、それを押す。


すると。




「!? しゅ、宗教画が左右に、割れた!? しかも、地下へ降りる階段ですか!?」




大教会には、隠し部屋があったのだ。


こんなところに、ロスベール公爵がいるのか?




「ファウスト様、これは⋯⋯」


「実は⋯⋯ロスベール公爵は大怪我をされて療養しておられるのです。それに、彼は次期教皇王。彼の身を我々プルトハデス教は護らねばならないので」


「ま、まあそうですが⋯⋯」




何だ? 言語化出来ない警戒を抱く。


だが、カルミア様が



「大怪我を負って反省したってこと? 弱ってるならチャンスじゃん! モクレンを豚箱から出して、二度とこんなことしないでって早く言わなきゃ!」



と声を弾ませた。



確かに、私がやらねばならないのは、ロスベール公爵にモクレン様の逮捕を取り消させ、彼を豚箱から出すことだ。


それに、私はユーフォルビア一族。

戦闘には自信がある。


もしこれがロスベール公爵の罠で、中に大量の聖騎士団が武器を構えていたとしても、私の敵ではない。



寧ろ、ロスベール公爵が私を罠にかけようとするなら、逆に正当防衛と言う名目でボコボコにして、モクレン様に二度と近付くなと脅すことも可能。




「ロスベール公爵に話を付けに行きましょう。モクレン様を傷付けるような真似は、二度とさせません」




私はロスベール公爵の罠を警戒しながら、ファウスト様と彼に甘えるカルミア様と一緒に、割れた宗教画の向こうへ入る。


警戒しながら石階段を降りる最中。


もしや、今回もロスベール公爵とカルミア様は共犯では? と一瞬考えた。


ならば、光魔法は早く対処せねば。最初に倒すべきはカルミア様だろう。



私は、モクレン様になったつもりでロスベール公爵がどんな罠を仕掛けているのかを可能な限り考えた。



もし、私に心があれば、他に色々と気付けただろうか。



そんなことを思っていると。




「ツミキ様。この向こうにロスベール公爵がお待ちです。貴女に謝罪して心を入れ替えるとのことなので、何卒よろしくお願いします」


「⋯⋯はい」




鋼鉄の扉を片手で開けて、もう片手にはいつでも大鎌を構えられるよう覚悟を決める。


そう考えながら、私は鋼鉄の扉が護る部屋へと入った、次の瞬間――




「ギャァァァアアアァァァアアッッ!!! なにこれぇぇええええええッ!?」




鋼鉄の扉はバタンと締まり、ガチャリという音がした。


それと同時に、薄暗い部屋の中にカルミア様の絶叫が響き、その場に座り込む音がした。



⋯⋯私も、心があったら絶叫していただろう。

背後にいるカルミア様とファウスト様へ振り向くことすら出来ない。体が動かない。



名状しがたい魔獣など比じゃないくらい、その部屋は見ているだけでおかしくなりそうだった。




◆◆◆


人を殺してはならない。

道徳的にも倫理的にもよくわかる。


それじゃあ、禁断の魔道具『これ』は?



『これ』は心を持たない。


『これ』は死んでも代わりがいくらでもいる。


『これ』は全く同じ存在を量産可能だ。



アイツは、人を殺してはいけない理由を『取り返しが付かないから』と言った。


だが、『これ』がより発展し、魔道具の枠を超えて医療行為の一環となったら。



人を殺しても、『取り返しがつく』ことになる。




◇◇◇




「レンゲくんのアイパッド、全然繋がらねえぞ⋯⋯?」




冒険者達の闘技場にて。

兄貴を決闘裁判で倒した俺は、神剣をぶっ壊したままはマズいので、後でレンゲくんに修理してもらおうとズボンのベルトに差し込んでから、レンゲくんのスマホでアイパッドに連絡をした。



だが、スマホは一向に繋がらない。

もしやレンゲくんは魔獣と戦う時、安全のためアイパッドを砦に置いたのでは? と思い付く。



だったら、一度砦に戻って状況を把握するのが一番だ。魔獣の被害も心配だし。


そう考えて、マグノリア地方行きの馬車を捕まえ急いで騎士団の砦へ向かった。



すると砦にはレンゲくんとサラサがいて、騎士団に指示を出して忙しそうにしていたのだ。


そりゃ、アイパッドどころじゃないか。


そう思ってレンゲくん達の元へ走り、再会を喜びつつお互いの情報交換し、魔獣との戦闘中にサラサが毒で死にかけたので、ツミキちゃんと別行動をして婆ちゃんの治療を受けに行ったと知る。




「サラサ、大丈夫か? ヤバかったらすぐ言えよ、マジで」


「心配かけたのうモクレン。わらわはもう元気百倍じゃ! 何なら一日中歌ってやっても良いぞ! ハンディカラオケ無しの生歌じゃ!」


「ごめんそれは良いかな。俺が死んじゃう」




サラサの元気そうな顔を見て一安心したあと、ロスベールがツミキちゃんの異父兄妹説をレンゲくん達に話した。




「まあ、正直正解かどうかは知らんけど、あの無責任な親父の事だ。どこで何してたのか分かったもんじゃねえ」


「⋯⋯そっか。でも確かに、キミの言う通りならロスベールのあの無茶苦茶な感じも納得がつくというか⋯⋯。そうだ、魔獣駆除の現場にツミキ氏がいるし、心当たりが無いか聞いてみよう」




砦に置いていたアイパッドを回収したのち、俺達は駆除現場に向かい、ツミキちゃんと合流しようとしたのだが⋯⋯。




「え!? ツミキちゃんはカルミアと一緒に、俺を豚箱から出すためファウスト枢機卿長のとこに行った!? マジかよ入れ違いか⋯⋯! 確かに、俺が決闘裁判してたのは皆知らないもんな⋯⋯」




それなら、ファウストさんと一緒にいるツミキちゃんを迎えに、王城へ行かねば。


すぐに馬車へ乗り込み王都へ向かっている途中。


レンゲくんの様子が、何かおかしい。




「あ、あれ? モクレン氏から返してもらったスマホも、アイパッドも、めちゃめちゃ起動が遅くなって⋯⋯あああぁあああッ!!!」




驚愕と絶望の絶叫をあげたレンゲくんに、サラサも



「ど、どうしたのじゃ!?」



とつられて驚いてしまう。




「ボクのスマホとアイパッドが⋯⋯勝手に初期化されてるぅぅぅうう!? ウソウソウソなんでなんでなんで!? これってまさか、ハッキングされたのぉぉおおおおッ!? このボクの魔道具がぁぁぁああ!?」




◆◆◆


百年後、この国はどうなっているのだろうと禁断の魔道具とされた『これ』を開発しながら思っていた。



そして、その百年後。私は失望した。



レベルが低い。低過ぎる。


新聞にて『雷魔法を制御せし魔道具業界の鬼才』と持て囃されていたレンゲ・オーヤマがどれほどの腕前なのかと楽しみにしていたが、結果は散々だった。苛立つくらいである。



彼が作った魔道具は、あまりに脆弱であまりに虚弱だったのだ。


彼如きの才能など、百年前には腐る程いた。


やはり、戦争で失われた文明力はそう簡単には戻らないのか。


私達の闘いは、一体何だったのだろう。


私の愛した人達は、何のために生まれて何のために死んでいったのだろう。



そんなことを思った。







◇◇◇


良い感じにお付き合いありがとうございます!

今日は20時も更新しますので、ぜひよろしくどうぞ!


では、ちょっとでも

「面白い!」

「先が気になる!」

「ツミキ、大丈夫なんか!?」

「ハッキング⋯⋯だと!?」と


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想とリアクションと悲鳴をお待ちしておりますぞ!



それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!

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