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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
第一部 死神令嬢、騎士団長と出会う

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5・美女と褒められました

「まあ、今は色々あってモクレンって名前なんだわ。正直モクリエールアレンより呼びやすいでしょ。……と言うか君、立ちっぱじゃん。座って座って。ごめんね気付かなくて」


「……恐れ入ります」




モクレン様にそう言われ、私は近くの椅子に腰を下ろした。


確かに、モクリエールアレンよりもモクレンの方が発音しやすいうえに短くて覚えやすい。


だが、驚くべきところは名前以外にもあった。




「……カルミア様が仰っていた話とは……大きく異なっております」




カルミア様は、



『あたし、子供の頃……パーティでアイツにいやらしい目で見られたあと、触られそうになったのっ! しかも、ぶくぶく太って顔はニキビだらけの不細工な白豚男に嫁がされるなんて、女の子にとって最大の罰じゃないですかっ!』



と話していた。



だが、目の前のモクレン様は太っているどころか体は引き締まっており、腕や足の筋肉は服の上からも分かるほど発達しているし、肌もニキビどころか少しの荒れも無い。


それに、モクレン様は絵本に出てくる王子様に良く似ておられる。この方が不細工なら、絵本に出てくる王子様も不細工と言うことなのだろうか?



これは一体、どういうことなのだろう。


カルミア様は『子供の頃』と仰っていたから、成長するにつれて色々と変わったのだろうか?



私が疑問に思っていると、モクレン様は



「カルミアぁあ!? あ〜〜〜あの迷惑なクソ女か……」



と眉間にシワを寄せて片手で頭を抱えられ、とんでもない発言をなさった。


浄化の聖女であるカルミア様を、モクレン様は迷惑なクソ女と侮辱されたのだ。


一体、どうして?


浄化の聖女カルミア様は光魔法の天才で天使のような見た目をしているだけでなく、そのお心も美しいと全国民から愛されているのではないのか?




「……モクレン様。……あの」


「ん? ああ。驚かせてごめんね。……まあ、カルミアはなぁ〜〜。ありゃ相当質悪ぃよ。俺、ガキの頃アイツに痴漢扱いされたから」


「それは……一体」



カルミア様が仰った『いやらしい目で見られたあと触られそうになった』と言うのは、どうやら話が違うらしい。




「ガキの頃さ、俺はまだポーラリス公爵家……まあ実家にいたわけだけど、そん時に大規模なパーティがあってさ。そこに、ペールカルム伯爵とそのカミさんとカルミアもいたわけよ」




モクレン様は重い溜息をついたあと、お話を続けられた。




「んで、カルミアの母ちゃんと言えば、国一番の大女優じゃん。そんで、その娘のカルミアもめちゃめちゃ知名度があったわけで、『うわ〜本物だ〜。すげ〜』とか思いながらカルミアを見てたらさ…………」




一呼吸置いてから、モクレン様はカルミア様を真似たと思われる無理矢理作った高い声を出された。




「カルミアは『気持ち悪い! あたしのこと見ないで!!』って勝手にキレ出したんだよ。そのあと、アイツ給仕さんにぶつかってコケてさ。大丈夫? って手を差し伸べたら『不細工なのにあたしに触んないでっ!!!』…………だって」


「それは……なんと、申し上げたら良いのか……」


「まあ、でもね? もしかしたら昔、男から怖い目に遭わされたから怯えてんのかな〜? って心配したけど、カルミアは顔が整った男相手だと『あたし、お転婆だから女の子より男の子と話したり遊んだりした方が楽しいの』だと。……不細工な男は人にあらずっていう、典型的な我儘ヒロイン様だよ、ありゃ」




カルミア様と聞いていた話と全く違う。


だが、どちらが真実を言っているのかは、現場を知らない私にはわからない。


私は、口を挟まずモクレン様の話を聞くことにした。




「それがきっかけで、俺はポーラリス公爵家を追い出されてさ。母方の祖母のホオノキ婆ちゃんに引き取られたわけよ。……元々、兄貴のロスベールに比べて無能って見離されてたし、俺の母ちゃんはロスベールの親父と浮気して俺を産んでるからさ。……まあ、不貞の子って奴で風当たりが強くてね」




モクレン様は肩をすくめて小さく笑ったあと、



「でも、そのお蔭で母方の祖母であるホオノキ婆ちゃんンとこに行けて、このド田舎で好き勝手遊んで過ごせたわけだから、結果的にあの家を出られて良かったよマジで」



と傍に座るホオノキ様を見た。



一方、ホオノキ様は、



「モクレンさんの母――つまり私の娘は、赤ん坊の頃に離縁した大貴族の夫に連れて行かれてしまって。きっと、そこでは甘やかされはしたものの、きちんとした教育は受けられなかったのでしょう。……まさか、公爵と不貞なんか」



と眉間にシワを寄せて片手で頭を抱えてしまう。




「だから、モクレンさんを引き取ることになったとき、彼を精一杯養育しようと思いましたの。……公爵家の次男にふさわしい、知性と品格を持った公子に育てなければと頑張ったのだけれど……まあ、結果はこんな感じです」


「知性も品格も、そんな才能無いからな。俺」




モクレン様はベッドの上で片膝を立て、壁に寄りかかり欠伸をした。


その隣で、ホオノキ様は溜息をついた……瞬間。



何やら軽妙なメロディが、モクレン様の騎士服の上着から鳴ったのだった。


楽器の生演奏でもない、シンプルで軽い音律である。これは一体何なのか?




「あ、レンゲくんからだわ」




モクレン様は騎士服の上着から、レンゲクン様が持っていたものと同じ大きく分厚い金属板を取り出した。


その板を耳に当てたモクレン様は



「現場は何とかなった? そんなら俺は取り敢えず家帰っからよ。レンゲくんも現場片付いたら解散でい〜よ。マジありがと、助かったわ」



と言ってから、金属板の側面の突起を押した。




「…………」




私はつい、モクレン様の手にある金属板を見てしまう。



方角が分かる水晶や、蝋燭の要らないカンテラなどの便利な魔道具はこの国に流通しているが、離れた場所にいる相手と会話が出来る金属製の板など聞いたことがない。



じっとその板を見る私へ、モクレン様は声を掛けてきた。




「どしたん? ……あー、これか。これはレンゲくんが独自で開発した魔道具でね。名前がスーパーマテリアルホビー――略して『スマホ』っつーんだってさ。まあ、簡単に言や携帯して持ち運べる電話……略して携帯電話ってやつよ」


「電話、ですか? ……確か、この国では今年になってようやく、魔法科学によって電話線が国土全体に引かれたと存じておりますが……。まさか、遠くにいる相手と会話出来る持ち運び可能な魔道具が個人によって開発されていたなんて。……驚き過ぎて言葉が見つかりません」


「同感。あの天才ガジェオタをうちの騎士団で採れたのはマジ幸運だよ」


「ガ、ガジェオタ……? あの、それは一体」


「えっとね、ガジェオタっていうのは、ガジェット……まあ、簡単に言や魔道具オタクだわな。」



私が言葉の理解に躓くと、モクレン様は話を止めてご説明して下さった。それに、先ほども人の道と言う比喩表現を短時間で言語化して下さったのだ。


私相手にここまで丁寧な会話をして下さる方は、初めてだ。




「レンゲくんは魔法科学の天才だからね。すげえもんよ」


「なるほど……。世の中には色々な天才がいるのですね。文武二道の天才と呼ばれるロスベール公爵然り、光魔法の天才と呼ばれるカルミア様然り……」




私はまだガジェオタなるものが良く分かっていないが、レンゲクン様が魔道具の天才であることは、スマホと言う摩訶不思議な板を目の当たりにしたのでよくわかる。




「天才なのは君もでしょ? 俺を助けてくれたときのあの神がかった動きはヤバかったって。大鎌持った鬼強え美女とか、男がめっちゃ好きなやつじゃん」


「……ぇ? 鬼、強え……び、じょ?」




モクレン様の言うことが何一つわからない。


聴き間違えじゃなければ、この方は確かに私を美女と呼んだ筈。


だが、私は誕生してからずっと、周囲の人々から真逆の評価を言われてきた。


罪深きユーフォルビア一族の七号である私は、醜く悍ましい化け物であると言うのは、常識である筈なのに。


モクレン様は、命を救った私に親切にしてくれているのだろうか?


私がモクレン様の命をお救いするのは、罪深きユーフォルビアの一族として当然のことなのに。


彼の行動と言動が全く理解出来ない。


だが、お心遣いを頂いたというのは事実なので、お礼の言葉を申し上げることにする。




「勿体なきお言葉です。モクレン様のお心遣い、恐れ入ります」


「勿体なくないでしょ〜よ。すげえ美女だってば。俺、なんもしてないのにこんな鬼強え美女が嫁さんに来てくれるなんて、マジ幸運だわ」


「……恐れ入ります」




モクレン様のお心遣いは身に余るものだ。


こんな時、感謝を伝えるために笑顔でお返事が出来れば良いのだが。


笑顔を浮かべようにも、何がどうなってどうすれば笑顔となるのかが見当もつかない。


そもそも、嬉しいと言う感情が何一つ分からないのだ。

心が無いため、感情については何一つ分からない。



だが、モクレン様には私の反応を何も気にしていないのか



「今日はマジ疲れたし、さっさと家帰って風呂入って寝たいもんだね。魔獣にボコられるわ未来のカミさんの前でゲボ吐くわで散々だっての」



と欠伸混じりに仰った。



すると、ホオノキ様が



「それじゃ、今日はわたくしが先にモクレンさんのお屋敷に帰って、お風呂の準備とその他諸々をして差し上げます。貴方達は、もう少し休んでからいらっしゃいな」



と席を立たれ、救護テントから出て行かれた。




「……あの、モクレン様。私もホオノキ様と一緒にお風呂の準備をするため、現場に向かわせて頂きたいのですが」


「あー良いって良いって。なんやかんやで婆ちゃんってのは孫の世話すんのが好きなんだよ。それに普段は離れたとこに住んでるから、たまには婆ちゃん孝行させてやんなきゃ」


「では、せめてモクレン様のお屋敷にいる使用人の方々のお手伝いを」


「あー……うち、使用人雇えるほど余裕無いのよ。一応、書類仕事任せてるレンゲくんが俺の副官とか従者みたいな感じだから、そのお礼にうちの地下室を魔導具開発の研究室にして良いよって提供してるくらいでさ」


「なるほど」




モクレン様のお言葉で合点がいった。


労働者の不足で悩んでおられるから、私と言う労働力を歓迎してくださるのだろう。




「ご安心くださいモクレン様。今後は屋敷内の家事全般は私にお任せくださいませ。……勿論、罪深きユーフォルビア一族が触れてはならない料理や洗濯物などには手を付けません」


「え!? いやそう言う事じゃないから! あ〜ごめん、言い方悪かったね。でも、君を召使いにする気は無くて…………って言うか、遅くなって悪いんだけどさ」




モクレン様は私の目を見ながら仰った。




「君の名前、教えてよ」








◇◇◇


良い感じにお付き合いありがとうございます!


ちょっとでも

「面白い!」

「先が気になる!」

「モクレンのチャラくて軽いノリに救われる⋯!」

「ロスベールとカルミアには因果応報を!」と


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想とリアクションをお待ちしておりますぞ!



それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!

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