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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
第一部 死神令嬢、騎士団長と出会う

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24・マグノリアの白い悪魔

「モクリエールアレンッッッ!! この詐欺師がぁぁああ!!」




ロスベール公爵はモクレン様へ盛大に怒鳴り散らした。

背後にいるカルミア様も激怒している。




「……っていうかそこの変な格好した青髪!!! あんたコイツと喧嘩してたんじゃないの!?」




カルミア様に指をさされたレンゲ様は、いつも通りのゆったりしたペースで話し始めた。




「うん、そうだね。でもボク、あの後あんたらと『別れてすぐ』に仲直りしたわけ。男同士は時に喧嘩して友情を深めるもんなんだけど、友達のいないカルミア様とロスベール公爵にはわからないかな」


「ふざけないで!! ……あんたらの喧嘩はあたし達を油断させる演技だったんでしょ!! こんなの劇団型詐欺じゃん!!」


「そんなことないよぉ。あの時ボクらマジで喧嘩してたもん。ねーモクレン氏ぃ」


「だよな〜。いや〜喧嘩は漢の華だよなあ〜あはは」




レンゲ様とモクレン様はそう言って笑い合っている。



お二人の間に何が起こったのかは、私には何も分からない。


わかっているのは、モクレン様がロスベール公爵に逮捕されたあと宿に戻ってから、スマホで呼び出されたレンゲ様が



『ボクちょっとモクレン氏のとこ行ってくるね。ツミキ氏はルームサービスで好きなもん食べてて』



と言って、設計図が入った鞄を手に彼の元へ向かったことだけ。



その後、恐らく何かがあり、それについて『私は何も知らない方が作戦的に都合が良い』というのは予想できた。

実際、ここでロスベール公爵達から法律的に詰められても、何も知りませんと言えるからだ。



ロスベール公爵が勝つには、モクレン様とレンゲ様の喧嘩が嘘だったと法的に証明しないといけないのだが、証拠が無いため不可能だろう。



そんな中、紅茶をちびりちびり飲むレンゲ様は



「あ、そうだ。ロスベール公爵」



と話題を切り出す。




「あの後すぐに気付いたんだけど、ボクがキミにあげた設計図……あれを使って魔道具を量産して儲けようってのは無理だよ」


「はっ! 何を抜かすか。契約書には『設計図から起こした魔道具の販売利益は全て私が得る』と書いてあったろう? 魔道具だけでなく契約書の読み方を学んでおくべきだったな」




ロスベール公爵は鼻で笑い、ソファーに座るレンゲ様を見下ろした。



だが、レンゲ様は相変わらずのんびりした雰囲気で、


「いや、そうじゃなくてさ」


と答えた。




「ボクの魔道具って、そもそも量産するのが不可能なんだよ。だって、使ってる部品は全部聖ペルセフォネ王国から引き受けた魔道具ゴミを加工したやつだし、それ以外にもこだわり抜いた高価なパーツを惜しみなく使ってる贅沢な代物だから」


「それがどうした? ポーラリス公爵家の財力と、私が所有する最高峰の魔道具工場で作らせれば問題は無いだろう」


「だから、そうじゃなくて、ボクの魔道具はボクがパーツから組み立てから何から何までものすごくこだわって作ってるから、『この国の工場で量産するのが技術的に不可能』なんだよ。要するに、『ボクの魔道具を量産する技術力がこの国には無い』ってこと」




レンゲ様はそう言ったあと



「それに、さっきも言ったでしょ。ボクの魔道具のパーツは手作りのものから高級なものをたくさん使ってる贅沢な製品だから。それを量産して売るってなったら、材料費と人件費と工場の運営費だけでも『貴族の屋敷一軒分くらいの値段にしないと儲けが出ない』んだよ。しかも、そんなバカ高い代物を最低『五千個』は売らなきゃ商売として成り立たないと思われ」



と涼しい顔をして紅茶を飲んだ。




「だから、ほんとごめんね。ボクもさっさと気付けば良かったんだけど、あの時はモクレン氏と喧嘩しちゃって、頭に血が昇ってて気付かなかったんだあ」


「つまり……貴様も詐欺師というわけか。良いだろう。二人まとめて詐欺罪で逮捕してくれる!!」


「詐欺詐欺って言うけど、そもそもボクの魔道具の設計図を寄越せって言い出したのはロスベール公爵、キミでしょ? ボク『この設計図を使って魔道具を量産したらボロ儲けだと思われ』なんて一回も言ってないよ。全部キミが勝手に勘違いしただけ」




レンゲ様はそう言い紅茶を飲む。

彼の所作は大変優雅で、さすがは金持ち相手の美容サロンの息子だと思われ。


…………あ、レンゲ様の口癖が移った。



そんな余裕綽々なレンゲ様へ、ロスベール公爵が怒る怒る。




「ふざけるなこの平民風情がッッ!!! 貴様は私にゴミを押し付け印刷所を騙し取ったのだ!! 詐欺を働くなど貴様に正義は無いのか!?」


「ゴミだなんて失礼だなあ。あの設計図を公爵家お抱えの魔道具職人達に共有したら、魔道具業界は飛躍的に発展すると思われ。ボクとしてもこの業界が進化してくれるのは嬉しいから、設計図を役立ててくれると幸いだよ。……勿論、ボクはボクであの設計図よりもさらに進化したものを作る予定だから、そこんとこよろしく」




レンゲ様の発言により、ロスベール公爵は顔を真っ赤にし悔しげな表情を浮かべ、わなわなと震えながら黙ってしまった。


恐らく、反論の言葉が浮かばないのだろう。



そんなロスベール公爵へ、モクレン様が



「俺らそろそろチェックアウトの時間なんだけど、もう帰って良い?」



と壁の時計を指さした。




「だいたい兄貴さあ。歴史学で印刷のことも習ったっしょ?」


「当たり前だ。プルトハデス歴439年、ベルクーデン伯爵が活版印刷を開発したことだろう? そんなこと本を『見れば』一度で覚えられる」


「…………それじゃあ兄貴、『その活版印刷が人の歴史においてどんな意味を持つか?』まで、ちゃんと考えたこと、ある?」


「は?」




目を丸くし呆気に取られたような顔をするロスベール公爵へ、モクレン様はソファーから立ち上がってゆっくりと近付く。


そして、彼より少し背が高いロスベール公爵へメンチを切り合うように顔を近付けてから、こう続けた。




「活版印刷が出来る前は、量産が出来ない本ってのは高級品だった。そして、そんな高級品は貴族しか手に取ることが出来ない。……つまり、本が持つ知識や識字能力は貴族が独占してたわけ」




モクレン様は力強く目を見開き、ロスベール公爵の青い瞳をじっと見ている。




「でもね? 活版印刷によって印刷の技術が飛躍し『本の量産が可能になった』……これがどう言う事だかわかる? 本が量産可能になったことで、今まで貴族が独占出来てた知識と識字能力を、平民達も持てるようになったんだよ。……印刷ってのは、人の知識に革命をもたらしたわけ。……ご理解の方、大丈夫そ?」


「〜〜〜〜〜ッッッ!!!!! 貴様、私をバカだと言いたいのか!?」


「違う。兄貴は『本を一度見ただけで完璧に覚えられる能力を持つ』天才だ。それは認めるよ。……でも、『覚えた内容の【意味】を一度でも考えたこと、ある?』……試験は覚えるだけで満点が取れる。覚える事に関して、兄貴の右に出る奴はいない。……でも、それだけ」




モクレン様はロスベール公爵が反論しようとした瞬間、言葉を被せて話し続ける。




「予想通りだった。兄貴は学習した情報を出力することは得意でも、その意味については何一つ理解してない。⋯⋯それが、兄貴の天才的記憶力の弱点だ」




確か、モクレン様は結婚パーティーの招待状が届いた際


『兄貴の天才的記憶力について、一つ確かめたいことがある』


と言っていたから。

その確かめたいことが、これだったのか。




「でもね兄貴。あんたがこんな非常事態になるのを防げた奴が、この部屋に一人だけいるんだけど、誰か分かる?」


「うるさい!! 私は知能指数140の天才だ!! 貴様の知能指数は凡人の負け組らしく108程度!! だから貴様とは会話が成立しないのだ!! 知能指数が大きく異なれば会話は成立しないと言われているからな!!」


「……カルミアだよ。あの場で唯一兄貴を救えたのは、浄化の聖女カルミアだ」




モクレン様は『会話が成り立たないロスベール公爵』へ憐れむような目を向けたあと、カルミア様の前へと歩み出た。



突然話題に引き摺り出されたカルミア様は、近付くモクレン様へ警戒剥き出しの顔をしている。




「なんなの急に!? あたしが防げてたって一体どういう意味!?」


「お前が印刷の重要性をきちんと理解してりゃ、兄貴を止められたんだよ」




モクレン様にそう言われたカルミア様は、


「あたしのせいだっての!? あたし悪くないし!! あんた達が詐欺したのが悪いんでしょ!?」


とまくし立てる。




「お前がちゃんと勉強してりゃこんな事にはならなかったんだ。俺ですら印刷の重要性を知ってたってのに。……お前、今まで何してたんだよ」


「お、女の子の仕事は可愛くなるため努力することなの!!! 勉強なんかしたところで何の役にも立たないでしょ!? 可愛くなる努力をして男の人に溺愛してもらうのが正しい生き方なの!!」


「じゃあお前を溺愛してくれる男が沈没したら、お前も道連れで溺れるだけじゃねえか。今みたいに」




カルミア様は息を呑んで黙ったあと、だんだんと顔を悲しげに歪めてすすり泣き始めた。



そんな姿を、モクレン様は今まで見たことがない冷たい目で見下ろしている。




「……ぐすっ……なんでこんな酷いことするの? 子供の頃のことは謝るからぁ」


「俺はどうでもいいんだよ。お前には謝らなきゃならない人がいるだろ?」


「誰? ……ひっ、……ぐすっ……モクレン様のお友達? それならさっきオタクって言ってごめんなさ」


「ツミキちゃんに謝るって発想は無いわけ?」




モクレン様のこんな冷たい声は聞いたことがない。


いや、声だけじゃない。表情も雰囲気も何もかもが冷たい。


思わず、モクレン様の長年のご友人であるレンゲ様を見た。

レンゲ様も驚いているのか、ズボンに紅茶を溢していた。




「お前とロスベールと親族一同。全員この場でツミキちゃんに土下座して謝れや。何が『なんでこんな酷いことするのぉ?』だよ。そりゃこっちの台詞だよ」


「だってコイツは七号でしょ!? コイツの祖先のせいでこの国は毒と魔獣まみれなのに!! あたしは浄化の聖女としてユーフォルビア一族が穢した大地を浄化するため、ずっと修行をして来たんだもん!!! 冬でも冷たい泉に体を浸けて祈る修行のせいで何度も風邪を引いた!! あたしはコイツらのために努力と苦労をしてきたの!!」


「へえ。だから慰めて欲しいってか。憂さ晴らしがしたいってか。…………冗談じゃない。………冗ぉお談じゃなぁぁああいッッッ!!!!!!」


「ひッ……!」





モクレン様の落雷のような怒鳴り声で、カルミア様のすすり泣きは引っ込んだ。泣く子も黙るとはまさにこのことだろう。




「自分が苦労したからその分人を痛めつけて良いってか? 自分は可哀想だから何をしても良いってか? なんて可哀想な悲劇のヒロインなんだ。そりゃ国民の王子様と称される我が兄貴とお似合いだ。どうぞ末永く兄貴と言う大船に乗って、頭空っぽのまま悲劇のヒロインごっこをして泣き喚いていたら良い。その大船が氷山に激突し大沈没をかましても、きっと白馬に乗った兄貴が助けに来てくれるんだろうからなぁぁあああ!!」




海上での事故に、地を駆ける白馬がたどり着くのは不可能では? と思ったが、これはモクレン様の皮肉であると気付いた。




「新聞社はもうあんたらに少しも遠慮しない。それに、この国の面積と資源的に、大量の新聞を毎日刷れるほどのでかい印刷所を新しく作るのは不可能だ。⋯⋯この意味、良く考えとけよ」




そう言って、モクレン様は貴族の公子らしいお辞儀をしたのだった。




「それじゃ、俺達はもう帰らせてもらう。ご結婚おめでとうございます。どうぞお幸せに。では、さよなら」









◇◇◇


良い感じにお付き合いありがとうございます!


ちょっとでも

「決まった!!!!」

「モクレンお前、強すぎるやろ!!」

「カルミアの持論が木っ端微塵や⋯⋯」

「マジでツミキの知らない間に破滅してたな」と


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想とリアクションをお待ちしておりますぞ!



それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!

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