表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/73

72話 夜影の跳躍者

「最近、この辺りで“黒い影が飛び回っている”という通報が続いています」

小野寺がタブレットを置き、全員に資料を配った。


「黒い影? 鳥じゃなくて?」

斉藤が首をひねる。


「鳥よりも速く、しかも建物の壁に張り付いたり、音を立てずに移動したりするらしいです」

芦田が補足する。


「……忍者か?」

斉藤の冗談に、西条は静かにうなずいた。


「忍者のような動きだという証言が複数出ている。人影のようだが、人ではない。怪獣の可能性が高い」


「忍者怪獣……怖いのか怖くないのかわからんな」斉藤が肩をすくめる。


「怖いに決まってるでしょう。静かに近づいてくるなら、避難誘導が追いつかない」

小野寺は資料を閉じた。


「真壁、暗所用装備を。芦田、影の軌道予測ができるか?」

「可能です。移動速度は時速40キロ前後、人間より速いですが、怪獣としては低速。ただし“音を立てない”のが脅威です」


「姿なき脅威か……現場へ向かうぞ」

西条が立ち上がり、防衛課は夕暮れの街へ出動した。



現場は、市内西部の古い商店街。

街灯はまだ点き始めたばかりで、影が長く伸びている。


「みんな、上を見て!」

芦田が叫んだ。


ビルとビルの隙間を、黒い影が高速で横切った。


「いたな……! あの速度、普通じゃないぞ!」

斉藤が身構える。


影は、手裏剣のように鋭い形状で、壁に吸い付くと人型のシルエットへと変化した。


「仮称“ヤトカゲ”。影を使って移動し、光が当たると形が変わるタイプです」芦田が冷静に分析する。


「忍者っていうより……影法師だな」小野寺が低く言う。


「来るぞ!」

西条の声と同時に、ヤトカゲが跳躍し、防衛課の方へ迫った。



「真壁、光源!」

「了解」


真壁が高出力ライトを点灯すると、ヤトカゲの影形態が揺らぎ、人形のような形に戻った。


「光に弱いタイプだな」斉藤がにやりとするが、すぐにヤトカゲが飛びかかる。


「うわっ!早っ!」

斉藤がバックステップで避ける。


「攻撃性あり!直接触れられたら危険です!」

芦田が叫ぶ。


ヤトカゲの腕は刃物のように鋭く、斉藤の袖をかすめただけで布地が裂けた。


「怖ぇ! マジで忍者だこれ!」

斉藤が悲鳴を上げる。



「影に潜られる前に囲い込む!」

西条の指示で、真壁と斉藤が左右からライトを照射し、小野寺が逃げ道を封鎖テープで囲む。


ヤトカゲは光を嫌い、ビルの裏へ逃げようとするが――


「芦田、あそこ!」

小野寺が叫ぶ。


「はい!影の流れを予測して、出口を指定します!」


芦田が指差したのは、商店街の古い看板の下。

ヤトカゲの影が濃くなり、そこから逃げようとする。



「照射!」

西条の合図で、三方向から光が集中した。


「ギャッ――」

影が灼けるような音がし、ヤトカゲが苦しげにもがく。


「今だ、封印スプレーを!」

斉藤と小野寺が両側からスプレーを噴射した。


ヤトカゲは煙の中で崩れ落ち、影が薄れていく。

完全に姿を失ったあと、地面には黒い粉末だけが残った。


「活動反応ゼロ。消失しました……」

芦田がタブレットを見つめ、続ける。

「どうやら影そのものを媒体にしていた“半存在型怪獣”のようです。光で媒体を失い、消滅したと推測されます」



封印後、商店街の空気は落ち着きを取り戻した。


「まさか影が怪獣になるとは……油断ならないな」

斉藤が破れた袖を見てため息をつく。


「影はどこにでもある。潜める場所が無限なのが厄介だ」

真壁が片づけながら言う。


「でも、弱点もはっきりしてた。光があれば、私たちは負けない」

小野寺が明るく言った。


「芦田、よく動線を読んでくれた」

西条が声をかける。


「いえ……影の動きには、ある程度“規則”があります。次に同型が出ても、対応できます」


「よし。今日も街を守れたな」


防衛課の5人は商店街を後にし、夜風の中を帰っていった。

拙作について小説執筆自体が初心者なため、もしよろしければ感想などをいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ