表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/70

44話 真壁、少しばかり想定外

俺は真壁聡。防衛課の技術系職員だ。

主に装備・センサー・誘導装置の調整を任されている。

感情を挟まず、最短で収束に導くのがモットーだ。……だった。


朝10時、防衛課に一本の通報が入った。


「給食センターの機械が、勝手に動き始めて止まらないんです!

揚げ物機が空っぽなのに“何か”を揚げ続けてるんです!」


意味がわからなかった。

だが、現地は市内24校に給食を供給する中核施設。もし異常が拡大すれば、衛生・物流・教育に影響必至。


「……了解。出動します」


斉藤と小野寺、西条係長も同行。俺は装備バッグに追加の温度計を突っ込んだ。


給食センターは鉄骨平屋の機械施設。

厨房に入ると、誰も触っていないフライヤーが、ジュウジュウと油を加熱していた。


「熱反応検知。異常な“空気加熱”が一点から広がってます」


俺は即座に赤外線スコープを展開。油面に映る、“透明な歪み”が浮かび上がる。


「仮称:クキリバ。局地加熱型微振動獣。

 金属製の浅槽を棲処とし、“揚げる”動作に反応し繁殖熱を出す。

 制御を誤ると、施設全体が“強制調理化”する危険あり」


「調理化……?」


「簡単に言えば、“施設そのものが調理器具”になって暴走します」


問題は、対象が油の表面に棲んでいるため直接攻撃ができないこと。

高温下の油槽では薬剤も機械も無効。つまり、“油から出させる”誘導が必要。


「理屈では、低温の方が苦手なはず。

 なら、隣の未使用フライヤーに冷却用金属を投下し、あえて“冷たい餌場”を作る」


小野寺が聞いた。


「冷たい揚げ物って、つまり……?」


「凍らせたコロッケ。すでに食品安全基準も通ってる冷凍食材を利用します」


斉藤が苦笑した。


「怪獣相手に、餌がコロッケって……どんな自治体だよ」


午後1時17分。作戦開始。

未使用フライヤーに冷却コロッケが投入される。

温度差を感知したクキリバが、ゆっくりと熱源から移動を開始。


「来るぞ……熱波、横移動中」


その瞬間、俺のセンサーに“想定外”が映った。

もう一体、別方向の加熱反応。


「……個体が、2体いる。最初から複数棲みついていたんだ」


油槽が急激に沸騰。熱波が天井まで届く。

瞬時に対応を判断する必要があった。


「全換気ファン、最大出力。酸素を一時的に減らして、“加熱効果”を低下させる」


西条が即応。

斉藤が補助電源を切り替え、小野寺がサブ冷却槽を再稼働。

5分後、加熱反応は急低下。


「……鎮静確認。対象2体とも、熱源から離脱。排除完了」


対応終了後、センター職員が小さく呟いた。


「……それでは、明日も給食、出せますよね?」


斉藤が即答した。


「ええ。少し焦げくさいけど、いつもどおり提供できますよ」


俺は最後に、スコープを仕舞いながらふと思った。


(完璧に理屈通り、とはいかなかった。けど、それでも――)


「……ま、想定外ってのも、仕事のうちですよね」


そう言うと、斉藤と小野寺がふっと笑った。


「珍しいな、真壁さんが“感想”言うなんて」


俺は肩をすくめた。


「たまにはね。たまには」

拙作について小説執筆自体が初心者なため、もしよろしければ感想などをいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ