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第三話 カレーライス

 彼女とは七年前に結婚したんです。

 でも、去年交通事故にあって・・・彼女は全部忘れてしまったんです。

 命は助かったんですけど、脳の損傷がひどくて・・・


 もう僕が誰かもわからないし、・・・言葉もしゃべれないし、・・・

 日常生活も一人ではできないんだ・・・


 でもね、カレーを毎日作ってくれるんだ。

 カレーだけは作れるんだよ。他のことは何もできないけど・・・カレーだけは作れるんだ。


 でもね、ものすごく甘いんだよ。

 そのカレーがね、ものすごく甘いんだ。


 僕が甘いカレーが好きだということだけは覚えているんだよ。

 全部忘れちゃったのにね・・・何もかも全部忘れちゃったのにね。

 それでも・・・


 僕のために毎日カレーを・・・毎日・・・。


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