フルーツジャムの呪い
トーストにジャムを塗ろうとして冷蔵庫をあける。いつものイチゴジャムがない。
たまには変えてみようと思って。妻が手渡した、ブルーベリージャム。途端に脳内に女性歌手の歌が再生される。
田舎の家庭ではフルーツジャムといえばイチゴかマーマレード。ブルーベリージャムを知ったのはその曲が初めてだった。未知の食べ物への憧れも相まって、その曲を何度も聴き返した。以来、ブルーベリージャムを見るたびに曲が再生される。
あれから数十年。いい加減この条件反射も止めたい。
最近目が疲れ易くてね。しばらくこれにしてくれるかな。
妻に頼みこんで約一月、ブルーベリージャムを食べ続け、ようやくジャムと曲の連想が薄れた。ひとつ、恥ずかしい記憶を克服した気がした。
ブルーベリージャムを食べ尽くした翌日、たまには変えてみようと思って、と妻の言葉。そして脳内を流れる、あのアイドルの曲。
想像と違う、アプリコットジャム。