つまらない物
優介は、近くのケーキ屋にケーキを買いに行く。4月25日今日は、司馬草太の誕生日 だ。ささやかなパーティーが開かれた。パーティーと言っても身内だけなのだが。夢野は 遅れてやって来た。酒に酔っているらしく上機嫌だ。いつもと一緒で黒尽くめの格好でま るで烏の様だ。夢野は、ポケットから包みもないゴムでできた像を取り出した。これ占い の対価として貰ったものなんですがいらないからあげますと言って差し出した。 草太は、何か価値の無さそうなものだけど、くれると言うのなら貰っておくと引き取っ た。 金でできている訳でも翡翠でもない。精巧な彫刻が施されている訳でもない。優介も変 な物をくれるんだなと思った。 その日は、その像のことは忘れて楽しいパーティーだった。
後日昼に優介と草太は、ファミレスに行った。草太は、昨日貰った像を手に取ってまじ まじと見つめ蛍光灯に透かしたり手で撫でたり無造作に動かしていた。 するとそれをチラ見していたオタクそうな人が、「アレ、例の像なんじゃね」とひそひ そ声で相席の人に話しているのが聞こえた。 草太はその像を席の端に立たせて「何なんだこの像」とキョトンとしていた。 そのオタクは満を持して立ち上がると「お兄さん実は僕はその像のコレクターなんだけ ど僕ならその像を100万で買うんだけどどうかなー」と喋りかけてきた。相席の男が「ふ ざけるな」「俺なら400万から500万で買うぞ」「抜け駆けするな」と怒鳴った。そのオ タクは、「俺が見つけたんだお前の方が黙れ」と掴み掛かった。 草太は、「この像は誰にも売らん」と気勢を上げたのでその男達は、黙って店を出て行 った。
草太はこの像の価値を知ると共に、人間の浅ましさが嫌になった。 探偵社に戻ると美樹がソファーに座ってテレビを見ていた。するとテレビで像の価値、 希少性についての番組をやっていた。美樹は価値がある物だから大事にしなきゃ駄目よと 言うが草太は誰かに価値を作られ操られている事に気が付いた。 この像が、価値があると言われているが言われているだけで人は思い込みで意味のない 物を後生大事に大切にする。 草太は、黒い椅子に腰掛けるとゴムでできたその像を、後ろに投げ捨てた。自分は、人 の決めた価値に左右なんてされてたまるかと叫んだ。像は部屋の隅に転がった。 完