思想書の中に
草太は探偵社の書庫でパラパラめくっていた。余り大きな書庫ではないが哲学書、科学 の本、歴史の本、マニアックな所では、毒の本など推理に必要なものは大方揃っている。 草太はそんな本をパラパラと立ち読みするのが好きなので有る。 今日もいつもの様に思想書をめくっていた。その時黒猫が扉を通り過ぎて行った。 草太は目がクラクラとした。思想書が床にバサッと落ちた。気が付くと草太は何気ない 通りに立っていた。 人々が通りの真ん中で群れている。日が立っているのに人の影がない不思議な世界だっ た。 有る男が「俺は人間社会で中心的に働いているのは、男だから男には、礼を尽くさなき ゃいけないと思うと」と威張っていた。 すると女は「いや、今の時代は男女平等だから女性も男性も同じ権利を持っているの よ」と反論した。 違う人が「人間は皆大事」「兼愛だよ」「悪い人なんていない皆愛せよ」と騒いだ。 皆思想通りに動いている。どうやら草太は思想書の中に入ってしまった様だ。 草太は世の中の人は皆思想通りに動いている。所詮此の世の中は思想通りの夢なのかと 思った。 そんな中記憶を無くした男がやってきた。その男は、人生に置いていかれる男だ。 太陽が上がってくる。男は、「私は置いていかれる」と叫んだ。男は太陽と共に起きて 太陽が沈んだ後眠る男。男は太陽に支配されているのか。草太は、世の中の理を研究しな ければならないと思った。 それと同時に、草太は思想の為に人間は生きているのではない。人間の為の思想だ。私 は、推理によって此の世界を暴いて見せると誓うのであった。そんな中現実世界に戻って 来た。
完