死刑制度賛成派?
死刑制度そのものが絶対なくてはならないとは思っておりませんが、少なくとも現状の日本ではすぐに撤廃することは出来ないと思う論拠について書いています。
「久々登場の奴隷乙博士と」
「テン助ちゃんニャ」
「さて、死刑に関する不適切な発言で我が国の法務大臣が辞任する事案があったわけだけれど、死刑制度は賛成反対の意見が割れているよね」
「確かに反対派の人がいるニャ」
「僕はどちらかと言えば賛成派なんだけれど、テン助ちゃんは」
「んー、どっちでもないニャ」
「中立派なんだね。僕は犯罪抑止の面と、被害者の報復感情の代償行為としての刑罰という面、そして我が国に終身刑が無いことを理由に消極的に賛成ではあるんだけれど、実際、無くてはならないとは考えては無いんだよね」
「そうなんだニャ。なら、反対派の人の意見はどう思っているニャ」
「うん、そのあたりを詳しく話していこう」
「反対派の人にも色々と理由はあると思うんだけど、代表的なものについて、一つ一つ話していくね」
「よろしくニャ」
「先ずは冤罪だったときに取り返しがつかないという理由」
「確かに冤罪で死刑にしてしまったら、生き返らすことは出来ないニャ」
「そうだね。なので、心情的には理解できるし、一定の根拠となりうると思うんだ。でもね、そもそも冤罪だったとき、という前提がおかしくないかい」
「なんでニャ」
「テン助ちゃんがスポーツをするとして、ルールを守らなければペナルティがあるのはわかるよね」
「当たり前ニャ」
「うん、じゃあ、誤審があるかも知れないから、そのスポーツ自体しないほうがいいって言われたら、おかしいと思わない」
「それはそうニャ。間違いはあるかも知れないけれど、誤審を無くすように努力するべきニャ」
「そういうこと、冤罪の可能性があるから刑罰を執行すべきではない。この論法は『冤罪』の発生を前提にしてしまっていること、その上で死刑だけを『執行』するのは間違いとしている。でもね、そもそも冤罪を無くすようにするべきだし、冤罪によって無実の人に科される刑罰は例え死刑でなくても、あってはならないよね。懲役で失われる時間や、収入、信頼も取り返しつかないとは思わないかい」
「それは確かにニャ」
「まあ、それでも、殺してしまっては生き返らすことは出来ないのだから、一定の論拠にはなるとは思うけれどね」
「次に死刑は国際的に少数派という意見」
「実際どうなんだニャ」
「死刑存置国はおよそ全体の三割強といったところ、それに直近十年くらいで執行された国に絞れば、さらに減るだろうね」
「なら、実際に少数派なんだニャ」
「でもね、人口上位20ヶ国くらいに絞ると、そのうちの半数以上が死刑存置国で、例えばアメリカなんかも、州によって死刑があるところをあげれば半数を超えるんだ。このために、死刑存置を人口別で見るなら国際的には多数派になるんだよ」
「そうなんだニャ」
「まぁ、死刑廃止は世界的な流れになりつつあるから、これからもっと減っていくとは思うけどね」
「ふんふん、現状では国としては少数派だけれど、人口ベースで考えるなら多数派、ただ、今後も減っていく可能性大ってこと二ャ」
「うん、そうなんだ。でもね、否定的なことを言うなら、世界的に多数派だから、とか。お隣の国がやってるから、とか。周辺国に配慮して、とか、おかしくないかい」
「確かに二ャ。独立した国家なんだから、自分たちの憲法や法律は他国に左右されずに、自分たちの基準で考えるべき二ャ」
「そうなんだよ。例えばね、お隣の中国では最近、戦時動員法が出来たけど、これは国外に出ている自国民を戦時ならば、強制的に帰国させ、動員できるとした法なんだけど、こんなふざけた法律をつくったのは中国しかないけど、もしこれを多数の国が採用したとして、『国際的に多数派だから採用すべき』というのが正しいと思うかという話だね」
「多数派だから正しいとは限らないもの二ャ」
「そうなんだよ。我が国では他国に遅れをとっていると叫ぶ層が何でも他国に追随させようとするけれど、ビニール袋有料化が結局はプラスチックゴミの低減にあまり効果が無かったなんて実例もあるしね」
「レジで配られる袋は減ったけれど、レジ袋と同じ手つき袋の国内製造と流通量はほぼ変わってないって、国会でも取り上げられてた二ャ」
「エコエコ言って間伐材利用に貢献してた割箸の利用を減少させようとして、国内の業界が廃業に追い込まれたのに、結局必要だからと中国とかから輸入してたりと、周りに流されて政治を行うべきではないよね」
「次は司法は被害者の報復権の代理執行ではないという主張だ」
「博士とは正反対の主張二ャ」
「そうだね。先ずは報復権というのを説明しようか」
「お願いだ二ャ」
「昔は被害者は直接、相手に復讐したわけだね」
「あー、やられたらやり返す二ャ」
「そういうこと。でも、法が定められると、私的な報復行動は、ただの犯罪行為と変わらなくなってしまった」
「やり返したら犯罪者になっちゃう二ャ」
「とは言え、被害を受けた人は被害を回復し、受けた損害に対して報復する権利を有している」
「だから、その代理執行ということ二ャ」
「そう、公的な刑罰によって、被害者の報復感情に応えることは『個人』から報復権を取り上げた以上は必要なことなんだ」
「でも、反対派の人の中には司法罰に報復権の代理執行は含まれないと考える人がいるんだ二ャ」
「そう、近代以降の司法に報復権は含まれないと話す反対派の人を何度か見たことがあるよ。かつては仇討ちが許可制で、公的に『私刑』を認める時代もあったんだ。でも、それは結局は『人を殺すこと』を個人に押し付けることになる。それでは秩序が守れないから、報復権を取り上げて、個人による報復行為を原則として認めない形にしたんだよ」
「原則として二ャ」
「緊急時の正当防衛や、金銭などによる示談は一種の報復行為だからね。法的に正当性や妥当性がある実損の回復行為や緊急避難は認めないとね」
「あくまでも、犯罪行為に相当する復讐行為はNGってこと二ャね」
「そういうこと。だから、報復行為の代理執行を近代以降の司法は認めてないというのは、権利を取り上げておいて、果たすべき義務を負う必要はないと主張するようなもんだよ」
「税金とるけど、国の運営には使わないって言ってるみたい二ャ」
「それは極端だけど、まぁ、そういうことになるね」
「最後は無期懲役でいいという主張だね」
「博士は終身刑がないからと言ってたけど、何が違う二ャ」
「終身刑と無期刑の違いは生きてる間に釈放される可能性があるかないかの違いなんだよ」
「えっ、無期懲役と終身刑って、どっちも死ぬまで出れないんじゃない二ャ」
「うん、終身刑というのは文字通りに『終身』つまりは死ぬまで刑に服すことを意味するんだけど、無期刑というのは『刑期』を定めない刑罰のことなんだ」
「それって、同じじゃない二ャ」
「終身刑は仮釈放の申請自体が認められない。死ぬまで刑罰を受けることが『終身刑』だからね。対して無期懲役では10年経過すれば、仮釈放申請が出来る。勿論、遵守規定があり、審議のもとに決まるから、簡単には釈放とはならないけれど、釈放してもらえる可能性があるんだ」
「最短で10年ちょっとで出れる可能性があるのと、死ぬまで出れないのが決定なら、確かに違う二ャ」
「刑罰の軽重が必ずしも犯罪抑止繋がるかはわからないし、その正当性は議論があっていいと思うんだけど、現状の死刑と無期懲役では刑罰の重さが釣り合っていないと思うんだよね。少なくとも死刑を廃止するなら、終身刑を導入するか、重大犯の量刑に加重できる仕組みを構築しないと、死刑に比べて軽くなりすぎてしまうと思う。まぁ、ここら辺は僕の考えであって、正しいとは思ってないけどね」
「なるほど二ャ」
「まとめると、僕は積極的な死刑賛成派では無いけれど、反対派として明確に死刑撤廃を求めるほどの論拠も持たないし、反対派の意見に同意する部分もあるけれど、現状の日本においては反対派にまわるほどの主張には思えないと言ったところかな」
「人が人を殺すことは駄目という考えもあると思う二ャ」
「確かにね。でもね、結局はそれは刑罰全てに言えるんだよ。刑罰とは人権を棄損して、犯罪の抑止、再発の防止、秩序の維持を図り、被害者の報復感情の代償と、実損回復の一助とするものだ。必要以上に人権を棄損することは許されないと考えることはわかるけれども、では、他者の人権を大幅に侵害した者の人権を何処まで保護することが適正なのかは答えの出ない話だと思うんだ。感情論になってしまうが、少なくとも僕はテン助ちゃんを殺されたら、その犯人を殺したいと思う人間だと自覚している」
「殺しちゃダメ二ャ。でも、テン助も博士を悪く言う人は引っ掻きたい二ャ」
「ありがとう。実際に報復行為に出るかはわからないけれど、そうした感情を否定することはあってはならないと思う。犯罪の抑止、刑罰の在り方の議論を人権保護のイデオロギーの発露の場にしている人たちの中には『被害者遺族も死刑を求めていない』と簡単に言う人がいるけど、確かにそういった理念の方もいると思う。けれど、犯罪行為も様々あり、被害者、加害者も千差万別なんだ。全ての被害者遺族の代弁者のような態度はとって欲しくはないよね」
「それは、そうだ二ャ」
「刑罰の在り方、犯罪をどう減らすのか。冤罪をどう無くしていくか。難しい問題だからこそ、一つ一つを混同せずに論じていきたいよね」
「その通りだ二ャ」
「ではでは、今日はこのへんで」
「バイバイ二ャー(ФωФ)ノシ」
感想やご意見お待ちしています。