表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/77

第08話:ひと休み

 草原(そうげん)を倒した後、二人はあと3人のパソコンを持つ人間の手掛かりを掴むために、町に戻って聞き込みをしようと思った。しかし、(しん)が草原との戦いで疲れていたので、今日はゆっくり休むことにした。

 とはいえ、恵美(えみ)はまだまだ体力が残っているので、あのソフトウェアを使って少し遊ぶことにした。

 恵美は、パソコンの画面に、『キンテンドー スイッピ』と入力した後、Enterキーを押した。

 なんとびっくり、ちゃんとスイッピが出てきた。横になって休んでいた真も、興味を示して起き上がった。


「やった!」

「あっちの世界の物も取り出せるんだな! 知らなかったよ」


 恵美は、スイッピの電源を入れた。ちゃんと使える。18年前の、2017年発売のゲームだ。割と古いやつ。あの時は、テレビゲームとしても携帯ゲームとしても使えることで、結構話題になった。


「なあ、思ったんだけどさ。スイッピが取り出せたなら、親父をこっちの世界に連れてくることもできるんじゃないか?」


 ふとアイディアが浮かんだ。達郎がこっちに来れば、きっと楽しいだろう。


「そうだね! そしたらまた3人で暮らせ……うーん、でも……」

「……やっぱ、そうだよな。親父に、悪いよな」

「うん。おとうさんには、むこうの世界で平和に暮らしてもらいたい」

「俺もそう思うよ」

「じゃあ、この話はナシだね」


 二人は少し戸惑ったが、すぐに結論を出した。父親を思う気持ちは、オーバーフローしそうだ。


「それより、他にもやってみようぜ」


 そう言って、真は『汚れた小さな紙』と入力した。しっかりとその通りの物が出てきた。


「すげー。単語しか打てないと思ってたよ。これは新しい発見だな!」


 真が驚いたのは、『汚れた小さな』という条件を付け加えられることに気づいたからだ。

 さらに続けて、真は絵を描きはじめた。大型犬に角が生えたような見た目だ。


「お兄ちゃん、なにそのヘンな怪獣は?」

「怪獣とは失礼な。……まあたしかに怪獣みたいだけど……って、そんなことはどうでもいい。とりあえず、このキャラは『けんちゃん』と名付けよう!」


 そう言って、真は『けんちゃん』と入力した。


 すると、絵に描いた通りの奴が出てきた。ガフンガフンと鳴いている。


「うおぉ! 想像上のものまでいけるのか!」

「ガフン!」

「ってあれ、どこ行くんだ」


 出てきたかと思ったら、そいつはどこかへ行ってしまった。


「あらら。逃げてっちゃった」

「ま、いっか」


 なんにせよ、このパソコンは思っていた以上に万能だった。そんな収穫を得た後で、この日の昼間は、真は汚れた紙をゴミ箱に捨てた後で休息を、恵美はスイッピのプレイを満喫した。



×××



 そして、夜になった。二人は今日も、宿屋に泊まることにした。真は布団に入ったが、昼間寝すぎたせいであまり寝られなかった。


「なかなか寝付けないなー」


 その時、真がふと反対側を向くと、そこには恵美がいた。


「うわ!」


 真はびっくりして大声をあげた。


「どうしたの、そんな大きな声出して」

「どうしたのじゃないだろ。昨日から、いや、向こうの世界にいた時からいつも言っているだろ。同じ布団で寝るのはやめろ」

「なんでよー。いいじゃん」


 いつまでも甘える恵美に対抗して、真は力ずくで恵美を隣のベッドに移動させた。


「今日は特にしつこいぞ。どうしたんだ」

「どうしたもなにもないよ。お兄ちゃんのこと好きなだけだよ。それに……」

「ん?」


 恵美は急に顔色を変えた。そして、ゆっくりと口を開いた。


「私、やっぱり前の世界が恋しいの。やりたいこといっぱいあったし、家族でもっと暮らしたかった。お母さんは3年前に死んじゃったけど、お父さんが一生懸命頑張ってくれた。お母さんに続いて、私達までいなくなって、お父さん大丈夫かな……」

「そうだな。それは俺も同じ気持ちだよ。ほんとに、良い親父だったからな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者NaaNの作品↓


剣パソ(この作品)
異世界シリーズ3部作!

義理ギリ
男子高校生のブラックコーヒーライフ!

ヒト悪魔
人類復活に関わる『アニマル』たちの戦い
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ