第06話:二木草原
翌朝、二木 草原という女を探すべく、町の人に聞き込みを始めた。
とりあえず、二人の目の前を通りかかった人に、「あの、すみません」と声をかけたら、なんとびっくり。その人が二木 草原だった。
短い紫色の髪に、とても奇抜な格好。身長は、155センチメートルくらい。
「私がその二木だけど、あなた達、名前は? 私に何か用なの?」
「俺は天川 真。こっちは妹の恵美だ。あんた、パソコンを独占しようとしてるんだろ。俺たちはそれを止めに来た」
真剣な眼差しで彼女に問いかけたが、
「はははは。びっくりなの。そんなことを。ははははは」
と、草原は軽いノリで返してきた。この時二人は思った。
『コイツ(この人)とは、絶対に馬が合わねーな(ないな)』と。
「そうかーなの。とりあえず、あなた達は私を止めたいなのね? わかったなの。じゃあ、模擬戦で勝負なの」
「「模擬戦?」」
二人がそう言うと、草原には再び笑われてしまった。
「ははははは。模擬戦を知らないなの? じゃあ、教えてあげるなの。まず、一応聞くけど、私のパソコンを奪うということは、当然あなた達もパソコンを持っているなのね?」
特に嘘をつく理由もないので、真は正直に首を縦に振った。
「ああ」
彼女は、笑顔で説明を続ける。
「模擬戦っていうのは、そのパソコンを使って行うなの。そのパソコンであのソフトウェアを開いて、武器や防具を召喚するなの。それから、もともと持っている自分の装備も使っていいなの。相手のHPを0にすれば勝ちなの。模擬戦では、体に傷とかは一切付かないから、安心して戦うなの。戦いの後、敗者のすべてのパソコンの所有権が勝者に移るなの。説明は以上なの。ちなみに、二人のどちらが私に挑むなの?」
「(キャノンめ。こんな大事な説明をかっ飛ばしたのかあいつ……まあ、そんなことは今はいい。)そうか。大体ルールは分かったよ。勝負するのは俺のほうだ。今から早速始めようじゃないか」
「お兄ちゃん。大丈夫なの?」
恵美が心配そうな顔で真の方を見つめる。
「おいおい、アイツの口癖がうつってるぞ。それと心配するな。絶対勝つから。恵美は横で見ていてくれ」
冗談混じりに、真はハッキリと宣言した。
「それはそうと、戦いながらパソコンを操作するって、難しくないか?」
「そんなことないなの。こうやってやればいいなの」
そういって草原はパソコンを開いた。そして、手から離した。すると、なんとパソコンが宙に浮きはじめた。
「こんな感じなの」
「「うそ!?」」
二人は驚いていた。真は見よう見まねで同じようにやってみた。感覚的には、宙に浮いているというより、見えない机が下にある感じだ。通常と変わらない感覚で操作が出来る。これもあのソフトウェアの力なのだろうか。
「説明はもう十分なのね?」
「ああ」
草原たちは外にある草原に移動し、戦いの体勢を整えた。
「じゃあ、行くなの!」
こうして、戦いは幕を開けた。