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14/16

13:頞哳吒

ビビンバ美味しいの巻




 銃で受けたダメージはHP全体の1/7。

 現在のクソ雑魚パラメータで考えると結構低めのダメージだ。


 先程の戦闘から考えるに、HCP込みなら銃弾を躱すのは難しくない。

 銃口を見て大まかな狙いを判定。あとは銃身に片腕を添えて、腰をほんの少し下げて衝撃に身構える様に姿勢をとってから0.2秒以内にHCP起動で回避は間に合う。プロ級の格ゲー界隈なら余裕過ぎるだろう。


 ただ、難しくない、といってもあくまで青鹿の感覚だ。モーション読みとHCP慣れしてないとそう簡単にできる芸当ではない。

 

 通常であれば弾丸を躱すなど人間には不可能な芸当だ。パラメータが一切未強化な状態で、アニメの様な超人じみた動体視力と速度を模倣できるわけもない。

 

 しかし、HCPはボタン操作をするのと同じ感覚でモーションを発動するので、人間には無理な処理速度にも対応可能になる。

 最初は自分の認識速度を超える動きを取る事に恐怖してしまうが、迷いは厳禁だ。出来ると信じてイメージすれば、HCPはしっかり応える。


 予備動作が4.8秒程度と考えれば、合わせて5秒も猶予が有る。モーションをイメージして発動しても十分間に合うというわけだ。

 問題は、銃を前にしてそこまで冷静に思考を巡らせてイメージを構築できるか、だが。



「ちょっと練習に付き合ってくれよ〜」



 人間が車2台並んで通るのも難しい入り組んだ路地。

 まるで立体迷路の様な道を進み、たびたび遭遇する鼠小人を的確に処理していく。


 今のところ、金槌、ドライバー、アーム、レンチが腕に融合した鼠小人を確認している。


 金槌は叩き付けのみで、リーチも長くないので1番処理は楽だが、パワーはあるので油断は禁物。

 ドライバーは突きがメインで、金槌タイプに比べて細身でスピード特化なのでカウンターを狙うが吉。

 アームは色物枠だが、アームを飛ばして拘束を狙ってくるので他の個体と戦闘中に遭遇すると少し面倒だ。

 レンチは金槌タイプの上位互換。パワーもスピードもあり、リーチもある程度ある。狭い路地で回避が制限されてる現状、今の青鹿でも油断してるとノーダメージ撃破は難しい敵だ。


 立て続けに新しい敵との遭遇になったが、SAN値の減りは多くない。どうやらタイプが違くても原型が同じなら悪魔としては同種という判定になる様だ。

 既に20体以上捌いているが、自然回復がすでに始まっている。


 その中でも銃タイプは2匹だけ。遭遇確率は低めのようだ。だが対策を怠ると万が一が怖いので練習用の個体を探していたのだが、漸く3体目の個体を発見できた。


 モーションは1パターン。

 銃口を向けて、腰を据えて、0.2s後発射。

 最初の銃口を向ける段階でフェイク回避をすれば遅延を誘発できるが、調子に乗ると体力を無駄に消耗するので気を付ける必要がある。


 ステップ、1、2。

 壁蹴り、ステップ、バック。ローリングは悪手なので避けて兎に角ステップ多めで回避する。

 

「よっしゃ10連回避成功」


 見切り、誘導して、モーションを学ぶ。照準の傾向を予測する。

 今思えば、青鹿自身でも教官パイセンとの戦闘ではかなり理想的な動きができていたとしみじみ思ってしまう。

 


 11回目、挑戦。

 集中、予測、誘導しながら構え。

 鼠小人の小癪なところはトリガーを引かずに撃つのでタイミングが計りにくい事。だが何度も見てタイミングはほぼ完全に掴んだ。


「(やっぱり斧がいいんだが……腰据えて、ココッ!)」



 銃口の先にラインをイメージして、HCPの動きを合わせる。青鹿の認識速度を超えて腕が動き、一瞬見えた赤い光目掛けて振り抜いた時には腕が負荷で軽く痺れていた。


「銃弾パリィ、できるな」


【証跡:弾穿ち/解放率0%/新証跡解放】



 テロンと聞こえる御機嫌SE。

 どうやら証跡解放の条件を達成したようだ。


 弾が見えるという事はやはりゲーム的に若干弾速が低い可能性はある。となれば、どうにかできないこともない。

 少なくとも、あの音ゲーよりは遥かにマシだと青鹿は思う。

 

『TR:P』

 青鹿が数々プレイしている音ゲーの中でも段違いのキチガイ高難度音ゲーである。

 輩出元はまさかのプロミス。リズムに合わせて飛んでくる球状ノーツを武器斬りまくるアクションリズムゲーである。


 ダークファンタジーやロボットアクションが有名なプロミスに音ゲーは似つかわしくない様に感じるが、実はこれには数奇な理由がある。


 原因となったのは、プロミスがHCPを販売し、それとセットで赤字価格で販売していたHCP用の教材ゲーム。

 初見はクセが強く使いこなすにはあまりに難しいHCP。その使い方を楽しく学べるゲームである。


 教材と言っても数々のミニゲームをこなして身体で覚えるタイプの実践的な教材で、その中に飛翔する光の球をHCPを利用して斬り裂くミニゲームがあった。


 シンプルではあるが、HCPを完全に活用できればプロでも目を見開くほどの華麗なスーパープレイが可能になる。

 そのスーパープレイを動画としてUPする者が出現し、その動画が有名に。音ゲー要素が非常に高く評価されて、有志の作った高難度モードのMODなどが配布されるなどカルト的な人気が加速した。


 そんなファンの期待に応えてプロミスが急遽繰り出してきた音ゲーが『TR:P』である。


 何がおかしいって、通常難易度が『動画で持て囃されるスーパープレイは出来て当然、それ以上でなければ無理』という人間卒業を強いる難易度だった事である。


 使用武器指定など当たり前。

 分裂、半径5m内透明化、3方向同時、弾きノーツにさりげなく混ざる避け指定の非弾きノーツ。

 HCPを限界で身体に馴染ませ、研究し、予測振りに反復記憶などなど考えつく事全てやり尽くしてようやくクリアできる世界である。


 その最上級、八大地獄に擬えた最終下層。 

 最高難度『無間』地獄。

 

 そもそも早過ぎて一つ目のノーツすら見えないクソ難易度。明らかにテストプレイをしてないとしか思えないネタレベルの難易度である。


 そのラッシュは機銃の掃射に匹敵するとも喩えられ、『脳で捌いているうちは無理』という迷言まで飛び出した難易度でもある。


 しかも、強化HCPの発売に合わせてプロミスは教材の追加ダウンロードコンテンツと『TR:P』の2作目『TR:P EX』を発売している。

 HCPの進化に合わせて難易度も進化して帰ってきた。


 青鹿はルナヴィのサービスが開始されるまでは、オヴェリの対人部屋で調整をし続けて、同時に『TR:P EX』で徹底的に強化HCPを研究した。

 EXは1作目の譜面に加えて、八寒地獄に擬えた裏モードを実装。上から降ってくるノーツや、バウンドするノーツなど、更に難易度を上げる新ノーツ、フィールド自体が大きく動く新しいギミックなどが導入された。

 もちろん新曲も数多く実装され、オーケストラ調のダイナミックかつ豪奢なコーラスの中で大量のノーツがプレイヤーを蜂の巣にする。


 無論、青鹿も曲を完走する前に目の荒いスポンジのようになるほどノーツでぼろぼろに撃ち抜かれており、現在裏譜面の3段階目、難度【頞哳吒あたた】地獄の曲は全体の半分、更にもう1段階上の難度【臛臛婆かかば】地獄の曲に至っては1つもクリアできずにいる。

 

 先程の弾丸程度なら、『TR:P』シリーズで散々目を慣らし反射運動を鍛え上げた青鹿ならなんとか凌げる。狙いがブレない分逆に楽だ。

 『TR:P』シリーズだとあの弾丸の速度で飛んでくるノーツがブレたりするなんてことがザラだからだ。


 【臛臛婆かかば】クラスの曲から登場する、『プレイヤーの半径3m以内に入ると、ノーツの色に応じて矢印の出ている方向に一定方向動くノーツ』という完全な反射覚えゲーを強いてくるギミックより余程マシだ。


 ただ、これはあくまで1対1の話であって――――――




「(モブ配置ヤバくない?てか自然さと行動範囲が増えたのか)」


 銃の厄介さはその容赦無い速さだけで無く、この裏路地で非常に響く銃声。この銃声が合図となって敵が集まってくるのだ。


 青鹿の視線の先、路地の分岐から顔を覗かせる鼠小人3匹、うち奥1匹は銃口を既に此方に向けている。

 そして背後からも数体の気配。肩口でチラリと確認すれば3体のレンチタイプだ。


「ヤッベ!」

 

 徹底して進路に沿わない愚か者の心を折にいく布陣。オヴェリからシリーズ自体は変わろうとも、ルナヴィは相変わらずイカれ難度で青鹿を出迎えてくれた。


 

 


 

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽今回の小タイトル読めた人いない説

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― 新着の感想 ―
[一言] >目の荒いスポンジ その目、自前のじゃない?w なるほど、これがセイガ氏の言ってた音ゲーですねw 摩訶鉢特摩には期待w
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