フューシャ・クロウヴァーの図書記録
まずは短編で載せます。
あるところに女の子がいました。
女の子は人に恵まれましたが
家族からいらない子と言われ仲の良い子は
何故か連絡が取れなくなってました。
彼女は心がやつれ家族にしめられた首のときの夢ばかりみるようになりました。
彼女は人の感情が分かるようになり
毎日押しつぶされてしめられた首の状態になり呼吸が苦しくなりました。
彼女は何故両親が産んだのでしょう?
愛とはなんでしょう?
いつしか彼女は化け物と暮らすようになりました
人はついに彼女がおかしくなってしまったと
口々に言いました。
だけど彼女は化け物と幸せに暮らしましたとさ
めでたし、めでたし
穏やかな午後 陽の注ぐ家のテラスで祖母が読む物語を聴きながら私は聞いた。
「何故、この話はめでたしで終わるの?」
この物語の彼女の家族はどうなったの?
化け物ってなんだったの?
それらの質問も聞きたかったがまずそれにした。
祖母は困った顔をしながらこう答えた。
「それはね、化け物と幸せに暮らしたからよ」
私は全ての質問を飲み込んだ。
それが答えならそれで良いのだ。
その物語の名前を思い出せない
今でもずっとその本を探している。
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ジリジリッと目覚まし時計がけたたましくなる音がする。
戦争が起きる前の穏やかな夢を見ていた。
眠い目を擦りながら朝の用意をする。
まずはワンピースを着て胸のボタンを閉じ、赤紫のリボンを結び茶色のクセのない長い髪の毛はくしで梳かして横でリボンで結ぶ。
ジャケットを着て高いヒールのあるブーツの靴紐を全て結び終え、鞄を持つ。
今日は目玉焼きとパンかなと匂いを嗅ぎながら階段を降りて下の階へ向かう。
「おはようございます」
ガヤガヤと子供たちが騒いでいて
周りの女性はあくせくと世話をしている。
「おはようフュー」
その中の1人のフードを被った怪しい老人が私に挨拶をする。
老人の名前は知らない。
一度聞いたが断られてしまったのだ。
なのに私には名乗れと言うので仕方なく愛称を教えたのだ。
ここはリャウルという山と海に囲まれた自然の豊かな大陸中の書物を保管しているという国の路地裏にある【ナラク】という名のこじんまりとした宿である。
老人はその意味の通り吹き溜まりの場だと言っていた。私は王立図書館で働くべく試験を受けるためこの安い近くの宿をとったのだ。
「聞いたぞ、昨日の夕刻に軍服のやつらが来て宿中大騒ぎしたそうだぞ」
老人は隠す必要のない話なのにわざとコソッと内緒話をするように言った。
「ご迷惑おかけしました」
淡々と言った。私だって予想外だったのだ。
何故王立協会の人間ではなく
「何故軍が来たのか。と顔をしとるな、それは戦争が終わって下っ端は暇だから駆り出されたんじゃろ」
老人はどこか遠くを見つめて言った。感情が読みづらいと言われる私でも彼にはバレてしまう。
この老人も戦争で何かあったのだろう。
かくいう私も戦争孤児だ。
そもそもリャウルが何故大陸中の書物を所持しているかそれは大陸中と戦争したからである。
だから中には王立図書館にある本をブラッドブックと呼ぶ人もいる。
「今日宿を出るんだろ?頑張れよ」
私の胸元にあるブローチ、本の中から鳥が飛び出した形のものを指さしながらにっと笑った。
「行ってきます」
朝食を食べ終えてから、立ち上がり宿を出る。
色とりどりの家々が並ぶ路地を靴を鳴らしながら歩くそして長い坂を登り終えると白いレンガ造りの大きな建物があった。
扉の前にいる門番にスカートの裾をつかみお辞儀をする。
「本日より王立図書館に配属されました。フューシャ・クロウヴァーです」
今日から念願の王立図書館暮しが始まるのだった。