#:7 〜すれ違い〜
段々、話がわからなくなってきた…←ォィ
「…え…」
衝撃すぎて、まともに声が出ない。
元は違っても、兄妹が好きってことだろ?
…近親相姦?
でも、神崎の気持ちは…?神崎もお兄様のことが好きなのか?
でももしそうなら。俺はどうしたらいいんだ?
「だからさ。俺が、奈緒を奪ってやろうと思って。」
無表情でそんなことをさらっと言うお兄様が、凄く怖く見えた。
お兄様は、こんなにも神崎のことを思っている…
「文句ないか?守クン?」
寂しく笑うお兄様に同情した。
けど、何かが違う気がする。
好きだから、何してもいい?
例え兄でも…妹を誘拐なんてしていいのか?
間違ってないか?
「…お兄様…神崎に会わせてください。」
自分でも、どうしたいのか分からない。
けど、なんとなく今は神崎の姿を見ないとほっと出来ないんだ。
「…奈緒なら家だ。行くといい…」
お兄様はこっちを見ずにそう言った。
俺も、何も言わずに家に向かった。
家の門の前まで来たところで、足が一旦止まる。
今までかなり必死で走ってきたからだろうか。
俺の心臓は、今にも飛び出しそうだ。
息切れと動悸の激しさを理由に、家に入れないでいた。
「神崎…守ってやれなくてごめん…」
そう呟き、家の中へと足を踏み入れる。
神崎の家はかなり大きい。けど、俺は勘で神崎がどこにいるのかを絞っていった。
「神崎の部屋…か?」
入ってみたけど、いない。
違ったようだ。
「つーことは…お兄様のお部屋、だな。」
さっきまで走り回っていたとは思えないほどの冷静さを、俺はすでに取り戻していた。
そして、ゆっくりとお兄様の部屋に向かう。
ドアノブに手をかけ、ゆっくりとドアを開けた――――。
「!かんざ…」
体が固まった。
神崎は、手と足を縛られながら、地面に転がっていた。
「ま…もる…っ」
神崎は、俺の姿を確認すると安心したのか笑みをこぼした。
けど、その笑みにはまだ恐怖が残っていて、神崎の今までの恐怖と心細さが伝わってきた。
そして俺は、そんな神崎を見て、神崎を抱き締めた。
「ごめん…守ってやれなくて…」
「守………」
俺は神崎の縄を解いてやった。
縛られながら、暴れたのだろうか。縛られていた痕があり、それがなんとも痛々しく感じた。
「あのね、…守…」
「………何?」
出来るだけ優しく、聞き返した。
「言ってなかったけどね…守はね…あたしの、婚約者なんだよ…」
「……うん……」
……………。
「…え”?」
「あのね、ホントはね…守のお父さんは、騙されてなんかいないんだよ。あたしのお父さんと守のお父さん、仲良かったんだって。しかも、仕事仲間なんだって。だから、将来…結婚させようと、してたんだって…最近聞いたんだ。」
俺の親父は、自分の仕事のことなんて俺に話さなかった。
それに、婚約者なんて…
「…あたしのお父さんとお母さん、もう離婚しちゃったんだけどね。お母さんが、不倫しちゃって…」
さっきお兄様から聞いたことだった。
「…分かってるよ。お兄様から聞いた。付き合ってたんだろ?」
俺のその問いに、神崎は静かに頷いた。
「で?お前は、お兄様のことどう思ってるんだよ?」
「…どうって…別に、お兄様はお兄様だし…」
「本当に何も思ってないのか?もしそうなら、何でいきなり元カレのことを『お兄様』って呼んだり、敬語遣ったりしたんだよ!…神崎の中で、割り切ろうとしたからじゃねぇのか?好きな気持ちを…」
何となく、分かるんだ。
神崎がお兄様のことについて触れられたくない理由とか。
「あたし…あたしは…っ」