#:5 〜俺の怒り〜
「神崎ーっ!!神崎―――っ…」
息を切らしながらひたすら走る俺。
ただ、あいつを追いかけて。
苦しくなり、一旦立ち止まる。
「くそっ…あいつどこ行ってるんだよ…」
そして、俺は再び走り出した。
「…………………う…」
その頃、奈緒は…何者かによって、誘拐されていた。
「気が付いたか?奈緒お嬢様?」
「……!?あ、あなたは…!!何故、こんなこと…!」
奈緒が、謎の男に問い掛ける。
しかし、男は質問には答えようとせず、代わりに言った。
「あの守クン、なかなか楽しませてくれるねぇ」
と。
そして、男は続けた。
「俺は、守クンのところに挨拶に行ってくるよ。…する必要はないかもしれないがな。」
そして、奈緒に「おとなしくしてろ」と言い放つと、部屋を出て行った。
「はぁ、はぁ…神崎…どこ、だよ…!!」
さすがに、体力も限界に近づいてきた。
と、その時だった。
俺の目の前に、謎の男が立ちはだかった。
「やぁ。さっきぶりだな。…守クン?奈緒は見つかったか?」
「―――――!?…お、お兄様…?」
目の前にいたのは、クスクスと笑いながら携帯の中の神崎をちらつかせる、神崎の「お兄様」だった。
「おいおい、守クン。お前の探している奈緒は、この俺の携帯の中に収まってるじゃないか。…一体、何やってたんだよ、お前。執事のクセに」
「…一体、何がしたいんですか」
自分でもわかる。
ああ、俺は今
この人に憤りを感じている。
「何がしたいだと…?そうだなぁ…ははっ、上手い理由がみつからないなぁ」
ふざけている。この人は、完全に…。
目的は分からないが、憤りは隠せない。
俺は、きつくこぶしを握り締めた。
「…お前は、一体何がしたいんだ?」
唐突に口を開く、お兄様。
俺は、ただ自分の思うことを口にした。
「執事として、神崎奈緒を返していただきたいのですが。」