#:3 〜俺、モテ期到来?〜
このままでは、コメディじゃなく、完全な恋愛になってしまいます…。現在、方針変更を考えています。。
「…なぁ。」
「……。」
「おーい。」
「……。」
「無視すんな、こら!!」
神崎は、俺の呼びかけに答えない。
無視、だ。
「おい…お前無視とかすんじゃねぇぞ?」
俺がそう言っても、神崎は無言で席を立つ。
そして、俺の方を見て言った。
「うるさい…。クビにされたいの?」
「……。」
明らかに、俺がああ言ったからだよな。
分かってるけど…けど、理由くらい教えてくれてもいいんじゃないか?
俺は、あいつのことに頭を悩まされる。
謝るにも、どう謝るのか分からない。
「…はぁー…」
俺は軽く(いやかなり)ため息をついた。
気が付くと、もう放課後だった。
俺は、あいつの送り迎えをしなくてはならない。なのに…。
あいつは、俺を置いて先に帰ってしまった。
「…ったく…。俺今日もお兄様に怒られるわけ?」
「…ぷっ…」
横で、俺の親友の秋川良太が笑う。
「お兄様だって…お前に一番似合わねぇ…」
「るせぇ。こちらとら商売だ」
小声で呟いてみる。
「なんか言ったか?」
「いいえ。」
俺と神崎のことは、親友にも秘密にしている。
「…ふーん?あ、そうそう。女の子が、お前のこと呼んでるぞ?」
「は!?女の子?…何それ。」
俺は純粋にそう言っただけなのに、良太は悲しそうな目で俺を見つめる。
「…しらねぇよ。自分で考えろや。…中庭で待ってるそーだ。」
女の子…。
…あ。神崎か。
でも、それなら何で女の子なんて言い方を…?
あいつクラスメイトだから、名前くらいわかるだろ…。
「…誰もいねー。あいつ嘘つきやがったな…」
「…あの、あたし…、です。」
後ろから声が聞こえてきた。
ぱっと後ろを振り向くと、雰囲気がかわいらしい華奢な女の子が立っていた。
「…えーと…。あ!…竹中さんでしょ。」
俺は思い出したように言う。
実際、思い出した。
「違います。」
違ったーーー!俺、思い出したと思ってかなり自信ありげに言ったのに…。
ありえねぇ。穴があったら入りてぇ。
「…えっと…もしよかったら、あたしのブレザーかぶりますか?」
何らかの雰囲気を察したようだ。
しかし、この竹中さんもどきは誰だろう…?
「あの。あたし、竹辻ゆなです。」
あ…竹中じゃなくて、竹辻か。
俺は、なんて失礼な間違いを…
「ごめん…、えと…竹辻さん。」
「いえ。クラス、一緒になったことないから…当然です。…竹だけは覚えていてくれたので、それだけでいいんです…。」
頬を赤らめながら、竹辻さんは笑った。
こんな些細なことで幸せを感じられるなんて…。
お気楽だ。
「あの!突然呼び出したりしてすいません。」
「え、ああ。いいよ、全然。」
竹辻さんは、下を向いた。
「…どうかしたの?」
「…あの、あたし…あたし…」
何だろう…。別に、何があるわけでもないけど。
…何か、こっちまで顔が赤くなりそうだ…。
「…守君。好きです!あたしと付き合って下さい。」
…まさかの、展開。
「えーと…その。なんで?いつ…知り合ったっけ?」
「…一目惚れ…ですっ!」
そして、上目遣いで俺を見る竹辻さん。
か…かわいい…!
「ひ、一目惚れかぁ…なんか、照れるねぇ〜。」
「え?何言ってるんですか?守君…スッゴクもてるじゃないですか!!」
「は?」
俺、もててた?…そんな、漫画の主人公みたいなこと…
自覚ナシな俺…。なんてかっこいいんだ…。
と、ちょっと調子に乗る俺。
「守君かっこいいから…他の女の子にとられるのがいやで…。」
「そっか…って、ちょっとまって?俺、こくられたことないんだけど…」
そういえば、さっきからもてると言われて舞い上がっていたが…
俺は、こくられたことがないのだ。
「…みんな、神崎さんを恐れてるんです…。」
「え?神崎を?」
一瞬、びっくりした。
俺と神崎に共通点なんて…
…あった。俺と神崎は、執事とお嬢様の関係だから…。
でも、俺が神崎の執事になったのはつい2日前だ。
その前は、共通点なんて…ただの、クラスメイトでしかなくて…
「え…?知らないんですか?…神崎さんは、守君のこと…」
竹辻さんは、そこまで言うと口ごもった。
「どうしたの?」
「…いえ。なんでもないです…。とにかく…。あたしは、神崎さんのことでびびっていられないんです。…それに。さっきのことは、神崎さん本人から聞くべきです。わざわざライバルであるあたしが守君を手放すつもりはないですから。…きっと、あたしが告白したことで他の子も告白してくると思います。…卑怯な子達が。けど、一番に告白したのはあたしです。…では。考えておいて下さいね。」
それだけ言うと、竹辻さんは去っていった。
さっきのこと…どういう意味なんだろうか…。
気になったけど、今の状況で神崎にいうつもりはなかった。
「はぁ…疲れた。」
俺も、帰ることにした。