表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/25

#:2 〜神崎の怒り〜


「何をしている、新人。奈緒を学校まで送らんか。」

「は、はい!」


お兄様のお怒りだ。

怖い、正直、逃げたい。


「…って、車乗れないんじゃないのか?…ったく、使えないな。」


「いやいやいや。車乗れないのは、俺の責任じゃねぇーよ!?大体、まだ高校生なんだから。もし運転できる能力があったとしても、絶対運転出来ないと思いますよ??」


…と、心の中で呟く。


「は、はぁ…すいません…」

「いいです、お兄様、あたし、歩けますから。」


神崎が、お兄様に言うと、鞄を俺に突き出してきた。


「…せめて、鞄持つくらいの仕事はやんなさいよね。」


俺は神崎の鞄を素直に受け取った。


何故素直に受け取ったか。


その一は、神崎のお兄様の手前だから。こんな状況で、「何で俺が…」などと言おうものなら…。つまり、お兄様に恐れているからである。

その二は…神崎に助けてもらったから。本人はそのつもりじゃなくても、俺は少なくとも助かったのだ。


…お兄様の、理不尽なクレームから逃れられたから。


「お前が歩くなんて、珍しい。気をつけて行けよ。」

「珍しいなんて、失礼ですね。今日はそんな気分だったんです。では、行ってきます。」

「…ああ。じゃーな。」

「あ、お兄様、行ってきます。」

「……。」


お兄様、俺は無視?…なんか、ひどくないか?


そう思いつつも、学校へ向かう俺たち。


会話はゼロ。

その間、俺は考えごとをしていた。


そういえば…。


神崎は、お兄様のこと、「お兄ちゃん」じゃなくて、「お兄様」と呼ぶ。

そして、兄妹に敬語を使う。


…やっぱり、普段は道化ていても、こいつはお嬢様なんだな、と感心した。


まじまじと神崎の顔を見る俺を、神崎は痛い子の目で見てくる。


「…何?きもいんだけど…。」

「え?あ。いや…、お前って、お兄様に敬語使うよな、兄妹なのに。」


俺はそう言っただけなのに、神崎は露骨に嫌な顔をした。

言われるの、嫌なんだろうか。


それにしたって、そこまで嫌がらなくても…と、俺は言いかけた。


しかし、すぐに下を向く神崎。そして、少し弱々しい声で、「あんたには、関係ない」と言った。俺は聞こうとした口を、手のひらで塞いだ。


「…学校ついたから、別行動。鞄、返して」


俺は確かにさっき、恩を感じていた。しかし、自分から持て、と言ったのに「返して」はないんじゃないか、と思う。まぁ、執事の立場で言えることじゃないけど。


それにしても…。「別行動」なんて…。


あいつは、そんなにさっきの事を気にしていたのだろうか。


神崎の言葉は、胸に突き刺さるような冷たさを持っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ