#:24 ~彼女と彼女~
かなり待たせてしまって、本当にすみません。最近眠たいです…AND、テスト結果が最悪で落ち込んでます;;
床に落ちた白い封筒と紙切れを、目を凝らして見つめた。どんなに見ても、「神崎奈緒」という文字は消えず、どんな意味が込められているかは想像出来ないが、紙上に書き留められた「ごめんなさい」の文字も消えてはくれない。目からも、俺の頭の中からも。さほど大きくはないこの白い物体だが、それとは対照に存在感だけが増してゆく。そして、彼女の存在感と彼女への気持ちも増加してゆく。やはり彼女は理不尽だ。そして、きっと根っからのお嬢様。じゃなきゃ、俺のことをこんなにも振り回したりはしない。
試しに自分の頬を軽く抓ってみる。
「痛ぇ…」
そんな呟きと共に自然と頬を伝った光は、止まるどころかボロボロととめどなく流れていった。格好悪い、そう思った。けれど、口に出してしまったら自分が本当にそうなんだと改めて思い知らされてしまう。それと、この現実も…。
ふと、社長室の部屋のドアがノックされた。
「失礼します。」
そんな声が聞こえる前に、ノックした主が中村だと分かった。そして、彼女が部屋に入った瞬間に俺は呟いた。
「行ってくる。」
いきなりそんなことを言う俺に驚く中村。無理もない。きっと彼女は、神崎と俺のことを知らないだろうから。否、関係は知っていたとて、深くまでは知らないだろうという意味だが。
細かく頭で考えている暇はない。俺が今すべきことは、彼女―――神崎を追うことである。会って、理由が聞きたい。何故辞めたのか。何故、謝罪なんてしたのか。それに含まれている意味は、一体…
「何処に行かれるのですか?」
「所用だ。気に留めるな。」
「そういうわけには。社長の場合は、私用でしょう?私用の為に、自分自身の仕事を放置されるおつもりですか?」
言葉に一瞬詰まった。けど、今はあれこれ考えている余地などないと思った。
「ごめん、中村。」
中村の問いには答えなかった。というか、答えられなかった。何故なら、この行動は正しくないと自分でも自覚しているから。それでも体が勝手に動く。心が彼女を求めている…気がする。
オフィスを出て、ロビーへ向かった。じれったく動くエレベーターに苛立ちを覚え、途中で降りて、その後は階段で勢いよく降りていった。外の空気がやけに気持ち悪い。その原因は後にすぐに分かることになるのだが。
「久しぶりだな、守」
まさかと思っていた。この妙な空気に、玄関口にいた人影…。これを何故か、都合の良いように解釈した。否…この人物が彼でない方がよっぽど良かった。
「宏明…さん…っ」
いきなりの再会に呆然とし、言葉が上手く発せない俺に向かって、彼はそんな俺を気に留めることなく言い放った。
「ご苦労様」
にっこりと不気味なほどに笑みを浮かべる彼もまた、空気と同様気持ち悪いと感じた。
この不自然な表情に。
この不自然な状況に。
俺は、信じたくなかった妄想を現実だと気づき始めていた。




