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#:18 ~大人?~

物語的には、場面がガラリと変わります。読者様、オトナな守も見守ってやってくださいね♪

ついでに、更新頑張った作者も…!(黙



神崎との別れから、俺はある有名な某大学に行く為に必死に勉強した。そして、見事この大学を合格した。しかし最初の成績はというと…普通。ある目的の為に猛勉強してこの大学に入ったというのに、成績が普通では意味がない。せめてそう、トップでなければ…俺の目的は果たされない。だから俺は、大学に入ってからも猛勉強した。

(ちな)みに学部は、法学部。別にこの学部に用はないのだが、この大学で一番優秀な学部が法学部だった為に入った。用はなくても、気になったことは調べる。お陰で、法律もまぁまぁ覚えた。高校時代は、第九条しか知らなかったが。「戦争の放棄・戦力の不保持・交戦権の否認」。あの頃は、こんな平和憲法どうでもよかった。しかし今法学部の生徒として、ふとこの法律を頭に思い浮かべると、「平和を望み、交戦権も放棄しているというのに、何故自衛隊が存在しているのだろうか。」という考えが浮かぶ。この法律がきっかけでよく調べ事をするようになり、成績もトップ3に入るくらいまで上り詰めた。因みに、この憲法第九条について調べたところ、既にこの考えが挙がっていたようだ。これが、立派な自分の意見だと思っていた自分が恥ずかしい。


さて。こんな勉強馬鹿になった俺でも、一応男なわけで…。まぁ、結構モテたりするわけで…

俺は、来るもの拒まずな男になっていた。

大学でも俺は、「顔も成績も良い、隙のない男」として有名だった。顔がいいと言われ、悪い気もしなかった俺は寄ってくる女達を利用して、経験を積んでいった…。


全ては、今でも何故か忘れられない、あの我儘お嬢様・神崎奈緒の為。

こんな苦労までしてこの大学に入ったのも、トップを目指したのも、全てが全て、彼女の為だった…。



「お互いお疲れ様、守!」

「お疲れ!」


卒業式。俺は最後まで、トップを貫いた。論文も、完璧だ。

そして、こんな堅苦しい学生生活も今日で終わりだ。少しだけ、肩の荷が下りた。しかし、俺にはまだやることが散々残っているのだ。そう、これからがスタート。今、その地点に立ったといってもおかしくない。俺の目的を達成する為の、スタートに。


「守ー!!」


遠くから、俺を呼ぶ女の声。髪は綺麗な黒髪、そしてロング。顔立ちも整っていて、周りからは美人だと評判の女。彼女は、大学に入ってから俺と…肉体関係にあった。


「卒業しても…ちなとまた会ってくれるよねぇ?」

「あ?何で?」

「だって…守は、ちなのコトいっぱい愛してくれたじゃん!」

「悪いけど…俺、お前のこと好きじゃないし。」


冷たくばっさりと言う。自分のことを「ちな」という彼女の名は、藤堂千夏(とうどうちなつ)。そんな彼女の目には、涙が浮かんでいた。


「酷い…でも、守はちなと、いっぱいしてくれたじゃん!」

「酷い?何が?好きじゃねぇもんは仕方ねぇだろ?だから、会わないし、連絡もとらない。それに、俺には好きなやつもいるし…。とにかく、お前邪魔。」


我慢していたのだろう。千夏は、目に溜めていたものを頬に伝らせた。そして俺を睨み付けると、語調を荒げて言った。


「ちなの気持ちは無視すんの!?今まで体求めてきてた癖に…最低!死ね、たらし!」


千夏はそう言うと、周りの白い目を気にする様子もなく、俺の元から離れていった。

しかし、納得出来ない。今まで、俺から千夏に体を求めたことなんて一度もないのに。ああ、あれか。周りから、同情をひくためにわざと言ったのか。それとも…この俺のイメージを下げたかったのか。どちらにせよ、このどちらかじゃなければ、あんな恥ずかしいことをわざわざ自分で言う必要性はない。


「うわぁ~…守、あの藤堂千夏と付き合ってたのかよぉ。」

「付き合ってねーよ。ただ、利用してただけだよ」


クスっと笑うと、友人は溜息をついて言った。


「ほんとお前、女の前と友達の前、キャラ変わるよなぁ。」

「キャラ?そんなもん、変えてねーよ。ただ…女は、世界に一人しか興味を持ってないからな。興味のない女に、わざわざ優しくしてやる必要はないだろ?」

「顔良し、成績良し。運動神経も多分良し。しかし、女癖は悪く、しかも女に対する態度も悪い。なのに女は絶えることなく寄ってくる。お前は女をひきつける磁石か!」

「かもな。」


友人からの軽い嫌味を、珍しく笑って流した。この友人の言葉を、うまいと感じた俺がいたから。

 友人と暫く話しこんでいた。気が付くと、小一時間かかっていた。俺達はじゃあそろそろ、と話を切り上げて、別れた。



―――25歳。大学首席卒業から、4年後。俺は、この若さにしてIT企業の社長になっていた。正直、法学部で得た知識なんて俺のこの目的には必要なく、卒業してからも猛勉強だった。そう、俺の目的。これこそが、俺の目的。勉強面という意味ではなく、俺は馬鹿だ。単純馬鹿だから、今でも…社会のトップクラスになれれば、神崎奈緒を探し出すことが出来ると思っている。こんな単純な考え方で、よくもまぁ社長なんかになれたもんだと自分でも感心する。しかし、単純とて周りの俺への評価は、相変わらずだ。「イケメンで頭脳明晰な、頼れる若社長」。イケメンで頭脳明晰って所は、変わっていない。けど、来るもの拒まずは学生生活でサービス終了したし、大学卒業後に猛勉強したし。勉強というのは、経済的なことと社会で生きていくための勉強。このお陰で、若社長でもなめられずにやってのけている。更に、「頼れる」とまできた。今のこの状況に、頬が緩まないといえば嘘になる。確かに神崎を探すためだけに今まで必死にもがいてきたが、目的をひとつ達成した今、金にも地位にも困らない状況。調子に乗らないやつがいるだろうか?


「立花社長。」


俺の名を呼び、ノックする。この声の主は社長秘書だ。


「入れ」


俺が応えてやると、彼女は社長室に入ってきた。

中村柚子(なかむらゆず)。艶やかな黒髪は肩の上位の長さで、可愛らしい顔にあったボブが印象的な彼女は、この愛らしい顔からは想像出来ないような気の強さを持っている。俺より年上ではあるが童顔で、下手すれば高校生にも間違われそうな彼女は、社長である俺にも怯むことなく働いてくれる、俺の大切な右腕だ。


「…社長?聞いてらっしゃいますか?」

「…勿論、聞いてますよ?」

「何で敬語になるんですか。」

「………」

「何で無言になるのですか。先程、何を考えてらしたのですか。」

「ごめん。俺が悪かったから、許して。中村。」

「…はぁ。全く、あなたは社長なんですから。考え事は後でにして下さいね。」

「ああ。…で、今何言ってたかもう一回言ってもらってもいいか?」

「承知致しました。」


にっこりと微笑んで、手にもっている資料を俺の机に置いた。


「先日申しました通り、正社員の最終面接は社長に行っていただきます。しかし、社長もお忙しいと考え、こちらも十分にそのことを考慮したつもりです。正社員は一人しか選ばれないので、92人中の3人を、社員たちに面接して決めてもらいました。ですから社長は、たった3人と面接していただければいいんです。ご理解いただけましたか?」

「ああ。面接時間は、10分程で文句ないな。」

「結構です。では、この正社員希望者の履歴書に目を通しておいて下さい。」

「分かった。中村、下がっていいぞ」

「はい。失礼しました。」


中村が社長室を出て行って暫く経ってから、俺はその資料に目を通し始めた。

パラパラとめくっていく。一人目は、男。二人目も、男。そして、三人目を見た。


信じられなくて、思わず持っていた資料をばさばさと音を立てて落としてしまった。

こんなの、驚かない方がおかしいだろう。何故なら、三人目は…


確かに、「神崎奈緒」と書かれていたから。

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