#:15 〜衝動〜
「「…………………」」
重なったモノを瞬間に離すと、二人は背中を向け合った。
流れる沈黙が、高鳴る鼓動のおかげで気にならなかった。
俺、ファーストキスしちゃった!!しかも、神崎と!!嬉しいような…いや、うん。嬉しいんだよ。嬉しいよなぁ、俺っ!!ホラっ、神崎も顔真っ赤じゃん!もしかして…俺のこと好きなんじゃ…?って、つまらない自惚れはいーんだよっ!
「守…………」
「なっ…なんだよ…」
いきなり名前を呼ばれた俺は、少し声が裏返ってしまった。
「最低っ!!」
ええええええええええええ
「見損なった…」
あややややややややややややや
「あたしの、半径二メートル以内に近づかないでっ!近づいたら即解雇っ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
あー俺、
泣きそう。
その後、神崎は教室から出て行った。俺は教室に一人取り残された。
あの仕打ちはねぇよ。うん。助けてやったのに。つかあれ、事故チュウなのに。ひどすぎる。
俺だって、下心があって助けたわけじゃねーんだよ…っていうのは、ちょっと違うかもしれない。もし、倒れかけたのが神崎じゃなかったら、俺は助けてたのかな…?
なんてな。
奈緒は、自宅へと向かっていた。時折、あの時の守の唇の感触が蘇る。しかし、不思議と嫌じゃなかった。思い出しても、嫌悪感というよりは…。恥ずかしくなった。あの時、咄嗟に否定できたからよかったけど。実は、このままでもいい、と思ってしまった。守が好きとか、きっとそういうのではない。自分の中に、守への恋愛感情があるなんて考えられない。奈緒はそっと目を閉じた。その時思い浮かぶのは、守の顔。
(こんなに鮮明に思い浮かべるなんて…)
奈緒は、思い出しては顔を紅潮させた。“それは恋だよ”誰かが言った。“でも、奈緒は宏明のことが好きなんだよ!”また誰かが言った。そんな声を聞く自分は、相当病んでいるのだろうか。そう考えながら、二つの意見を頭に浮かべて考えた。頭の中が混乱してきて、考えるのを止めた。そして、一人で叫んだ。
「守のことなんか…だいッッッッッッッッッ嫌いだ〜〜〜〜〜っ!!!」
・・
振り向き、大声で叫んだ。少しすっきりした反面、ココロに何かもやのようなものがかかった気がした
。
「何…コレ…」
奈緒は気づいているだろうか?自分の顔が、真っ赤であることに。