○○○年 六月 八日
朝一番にやって来た冒険者。たった一人で冒険しているみたい。遺跡や迷宮を探索して宝の発見を狙ってる、盗掘者みたいな奴かしら。大抵の場所は冒険者に開放されているけれど、中には遺跡に入るのに許可がいる場所もあるからね。
それにしても、この男……気配を隠している様子。もしかしたらやばい奴かも。
ギルドに登録されている者の中には、稀にだけど犯罪者が紛れている。こういった奴らは見つけ次第、即、階級章は没収、永久追放措置をした上で、国の法に則って処罰する。
罪人紛いの連中がギルドに所属していることは、多くの国と繋がりを持っている戦士ギルドにとって大問題だ。
七英雄──正確には九人とも、十人だったとも言われているけれど──が設置した戦士ギルドに、賊が混じってるなんてことになったら、英雄さんに怒られちゃうわ。
七英雄の一人の尽力によって、各国に設置が決まったギルドは──今では、多くの人々の生活を支える重要な機関。
我々は、その組織に身を置くものとして、いつも冒険者の素性には気を配っている。
だけど今回は問題ないみたい、午後になって、あの男の正体が分かったの。
身分を隠して戦士ギルドで仕事をしていた、貴族の青年だったのだ。討伐依頼をこなして帰って来たところを、執事の連れて来た私兵に拉致られて行ったわ。
貴族だと傲っていない若者の中には、戦士ギルドの重要性を理解して、その中に進んで飛び込んで来る者も多いの。
気持ちは分からなくもないけれど、仲間を持った方がいいんじゃないかしら。
孤高を気取っているのでなければ、だけどね。