○○○年 六月 三日
六月に入って初めての暑い日に、大汗を掻きながらやって来た小太りの冒険者……
あらイヤだ、こんな時に限って他の受付の娘がいない。
私はいつも通り嫌な顔も、笑顔を取り繕うこともなく対応した。
「すみません、くっ、薬屋はどこですか」
あらあら、ますますイヤだわ、この男。
声だけ聞いたら、めちゃくちゃイイ男じゃないの。
私はやっぱり顔色を変えずに、その見た目は半オーク、声は渋面の冒険者の対応をして、薬屋を紹介してやったわ。
いったい何だったのかしら……
けど、どうでもいいわ。あんな男。
けれど、あの声を思い出すと、ときめいちゃうの。
「すみません」
ああ、なんて渋くていい声なのかしら。
それから数時間後、あの男が仲間と共にやって来た。なんだか顔色が良くなってる。
あの男の仲間内の会話をこっそり聞いてみると、どうやらあの男は強壮剤を切らしてしまったらしい。元々、体があまり丈夫じゃないみたい……
それでも、冒険者をやらなくちゃならない理由があるみたい。別に気になるわけじゃないけれど。色々な理由や目的が、それぞれの人にはあるもので、それが面白くもあり、複雑にもなるのよね。
それにしてもあの男、顔はともかく。
渋くていい声だったわ──
イケボ、好きですか?(*ゝω・)ノ♥