○○○年 五月 二十七日
今日はびっくり、なんと、この街のギルドに、白金階級の冒険者が来たらしいわ。
私が知る限り、この街に白金階級が来たのは、初めてのことよ。
その冒険者は四十代後半くらいの男で、四人の金や銀階級の冒険者とパーティを組んでいるみたい。
私は受付から離れた──後方の作業場で事務をしていたから、ちらりとしか見れなかったけど、いかにも死線を潜り抜けてき来た男。という風だったわ。
ああ、この街にいる全ての「ぼんくら冒険者」に、爪の垢でも煎じて飲ませたい……
とか考えながら受付に立っていたら、その白金階級のパーティの若者が一人でやって来て、こう言うの。
「すみません、我々のパーティは、すぐに別の街へ向かうことになりました」
理由を聞くわけにもいかず、滞在名簿から彼らの名前を削除する。
別の若い男がまた一人来て、受付での作業を済ませた仲間にこう言った。
「おい、行くぞ……まったく、何だってルゲールトとルゲイエルを間違えるかね。うちのリーダー様はあの歳で、耄碌し過ぎなんじゃないの」
つまりこういうことなのだ。彼らの行くべき場所は、ここルゲールトの街から北西に数百キロ離れた場所にある──都市ルゲイエルだったのだ。
ついでに言うと、そもそも国が違う……