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○○○年 五月 十九日
今日はまた、戦士ギルドは大賑わい。理由は兎の大繁殖に、釣られて出て来た灰色狼の群れ、あいつら街道でも、お構いなしの大暴れ。
連日被害報告が入って来る。さあ冒険者さんたち、兎も狼も両方狩って来るがいいわ。
今年の冬は毛皮に困らなくて済みそうね。
けれど雪国の白色毛皮の狼が、一番良い毛皮なのよね。
血生臭い話は、ここで終わりにしましょうね、私たち受付は血の匂いと、汗臭い冒険者が苦手なの。
いつだって華麗にお仕事、楽しいわ。
数日後には兎のお肉が安くなりそうね、小さな生き物、小さな命。
私はありがたく頂くわ、彼らの生きてきた証を、無駄になんてしない。
けれどやっぱりかわいそう、野蛮な若い冒険者に追い回されて、でもね。
灰色狼にはご用心、年に何人かは、こいつの牙にかかって冒険者が死んでいるの。
こんなこと、言いたくはないけれど。
灰色狼に殺される様じゃ、その先はどのみち──生き残れないわ。