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ある受付嬢の非公開日誌  作者: 荒野ヒロ
七月から九月の終わりまで

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38/45

○○○年 九月 三十日

 気づいたら夏の暑さはもう完全に無くなっていた。過ぎ去る日を思っても仕方がないことだけれど、私も今年くらいは避暑地で、ゆっくりと休暇を取っても良かったかもしれないわ。


 涼しくなったというのに、冒険者達は来やしない。コボルド、ゴブリン、オーク達が、あなた達を待っている。

 早く()()()()()()()()()と、手ぐすね引いて待っている。


 ボコられる側が手ぐすね引いてるなんて聞いたら、クラドニアで名の知れた──今は亡き喜劇王も、草葉の陰で悔しがるでしょうね。

「そんな笑える奴が亜人共に居たのか」

 そう言って墓場からひょっこりよみがえったりするかもね、あまり気持ちの良い話ではないけれど。


 暇になったまま昼になった。新米や見習い受付嬢達を先に食事へ行かせ、私と数名の事務員が残ることになる。


 そんな時にやって来たのは、例の若い冒険者の二人組。──ところが今度は、二人の弱そうな少年を連れて来ている。

 びくびくとした新入りの顔を見る限り、カツアゲにでもあっている様子だ。一応彼らは、首から下げた銅階級章を見せたので、滞在名簿に書き込んでおく。


「大丈夫だって、ゴブリンの群れくらいなら、俺たちで余裕だからよ」

 などといつもの様に威勢の良いことを言っている。こいつらは反省するという事を忘れた猿なのかもしれないと、本気で考える。

 あなたたちは、ゴブリン相手に武器を奪われて逃げ帰った事を忘れたのか──と言ってやると、二人は慌てながら「最近はゴブリン()()を相手にだって、勝てるようになりましたよっ」とムキになって答えた。


 メネレアが根気良く討伐の助言をした賜物たまものかしら、あのお馬鹿な二人組がゴブリン相手とは言え、活躍できる日が来るとはね……

 私は「だったら、その二人を守ってやりなさい」と声をかけて彼らを送り出す。


 まだまだ頼りない冒険者たちの後ろ姿を見ながら、次の休暇にちょっとした冒険をするのも良いかもしれないと考え、私は一人、受付で笑ってしまう。

クラドニアは商業国として知られている割と大きな国(一部だが海にも面している)、しかし近頃は豪商や商会が力を持つようになってきて……みたいな話はここでは出ません(笑)


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