○○○年 六月 二十六日
主人公の氏素姓がすこしはっきりしてきたかな?
という回でした。
読んでくれたら嬉しいです。
今日は自宅でお客が来るのを待つ……いらないわ、別にお客なんて。だって私には、関係のない人だもの。
私は戦士ギルドで同僚と共に働いたり、冒険者が強くなって行くのを見るのが楽しいの。
お見合いなんて、退屈過ぎてやってられないわ。
しかも相手は、十歳も歳が下のガキだって言うじゃない。いったいどういうつもりで、こんなお見合いを私にさせるのかしら。父うぇ……お父さんは。
それなりに着飾って皮張りのソファーに座る私、なんだか置物になった気分よ。
侍女兼乳母のカサンデラ曰く、着飾れば「それなりに美しい」私を飾り立てて置物にしてくれたわね、ありがとう。最高の気分よ。
今度お礼に、あなたの靴の中に蛙を忍ばせてあげる。
いいのよ、お礼なんて。
そうして置物を演じている内に、見合いの相手がやって来たわ。
あらあら、やだわこの子。やたらと情熱的に私との婚約を望んで来るじゃない。
でもね、あなたに教えてあげる。
私は、強い男が好きなの。
かつて英雄とまで言われた祖父だけれど、今はもう見る影もない。けどね、私はその祖父が元気な頃に、自ら進んで剣の稽古を付つけてもらったわ。
なーに、元英雄のお孫さんが覚えた手慰みの剣の技なんて、騎士貴族様の腕の前には敵わないと思ったでしょ? 大丈夫、安心して。
祖父は容赦のない人だったから、女子供でも剣の稽古で手を抜いたことなんて、一度としてなかったわ。
だから、さあ。あなたも剣で──私を手に入れてご覧なさいな。




