人形になったボクタチ
初投稿です。昔の出来事を書いてみました!
これは子供の頃に起こった話
或る一夜に起こり表面的には何も変わらないのに
みんなの中の何かが壊れてしまった話
子供の頃、姉とボクは頻繁に、それこそ長期の休みになれば、従兄弟の家に遊びに行っていた
姉は3歳年上、従兄弟は姉と同い年、最後に従兄弟の家にいったのがボクが小6だからお互い受験もあって疎遠になったと思っていた
表面上は
遊びに行ってた従兄弟の家は両親ともに医者の裕福な家庭で、従兄弟の兄妹は何不自由なく暮らしてた
初めて遊びに行って驚いたのか家政婦さんがいたこと
いるところにはいるもんだね
うち?うちはしがないサラリーマン家庭だよ
母親の兄姉は頭がよかったらしく、皆医者になったりしてる
うちの母親は甘やかされて育ったせいか、勉強はイマイチだったらしい、あ、性格もイマイチ
甘ったれた元お嬢様って感じ
そんなわけでか、姑とはソリが合わないのか夏休みとか長期の休みがくると、伯母のところに逃げるように転がり込んでた
ボクたちも旅行気分で新幹線に乗っていったものだった、父親と祖母のことなど気にもとめず
従兄弟の家はなかなかに広く4階建て
1階は医院と薬局、2階から4階が住居、屋上まであって、住居と言うよりはビルみたいだった
市内の北のほうではあるが、駅に近いためいつも患者さんでいっぱいだった
夏場なんかは盆地特有の暑さをさけるため、エアコンの効いた待合室にお年寄りがいっぱい
そんなわけで繁盛?してる裕福な従兄弟の家が羨ましくもあった
従兄弟はなんでも買ってもらえるし、昼間は親もいないから遊び放題、家政婦さんが気に入らないとクビにしたり、まるでその家の王子さまって感じ
子供の頃は憧れてた
崇拝していたといってもいいくらい
だってゴマすっときゃ最新のゲーム機も貸してくれるし、マンガやソフトもカバンいっぱい借りて帰ったことも
だけどぱたっと疎遠になったんだ
急に、なんの理由もなく
ようやく思い出したのは大学に入った年の夏の日
盆地特有茹だるような暑さの中「あの人」に再会してしまったから
見た瞬間に思い出してしまった
あの夜のこと
「蓋が外れてしまうんやね、やっぱお師匠のお孫さん・・か」
あの人が呟いてるまに、鮮明に思い出した
あの夜、「王子さま」がボクタチに何をしたのか
閑話
ボクタチには祖母が二人いた
母方、父方の双方に
父方の祖母は元々は華族の家系だったらしい
ただ没落甚だしい時期に育ったのか、気性も激しく、ひとにも厳しいひとだった
まあ、孫には普通に優しかったよ
母方の祖母はとにかく穏やか
生涯最後の祖母対決の時などは、ただ、うんうん、そやね、あなたも大変やね、と一方的に聞くだけ聞いて、ニコニコして
ただその時感じたのは役者の違いというか、母方の祖母の芯の強さだった
以降この話で祖母とは母方の祖母のこと
祖母は所謂院長夫人でなんと10人もの子供を育て上げたというからすごい
子供も9割がお医者さんだからね
本人は違ったけど、病人、怪我人に慣れていて下手な看護師さんより頼りになると言われてた
その祖母がどういうわけかいつもお守りを作ってくれて、それがまた効くと言うか安心するというか
中に何が入っていたのかはわからなかったんだけど
思い出してしまった
祖母が得意としていたもの
「王子さま」があの夜にしてしまったこと
誰が記憶に蓋をしたのか
なんの因果か
あの夏休み、いつものように従兄弟の家に遊びに出かけたボク達はいつものように遊び放題だった。
ちなみに、
伯母家
英兄さん、沙羅姉さん
我が家
由紀姉さん、ボク
の構成だけど、由紀姉と沙羅姉が一緒にあそんで、英兄にボクが纏わり付いてた感じかな?
エアコンの効いた部屋でゲームしたり、流れるプールに行ったり。夏休みを満喫するって感じで。宿題?ボクは集中してやるタイプなんで、最後にとっておいてますよ、いつも。
いつもと違うのは、伯母の休みに母が温泉に行こうと言いだしたこと。一泊で。
子供達のテンションが上がったのは、伯父さんも海外の学会にでるとかでいないこと。
まぁ、子供達も大きくなってるし、なんとかするでしょ、と。
ちなみにボクは料理が得意だったから休みは大体母親の手伝いしてた。だから、なんでも作るよ、って意気込んだけど、結局家政婦さんがカレーを作って置いとくことになった。
とにかく子供達だけになる夜は特別でワクワク感がたまらなかった。だからかもしれない、少しの違和感に気付かずにボクタチは罠に陥ってんだ。
従兄弟の英兄さんはその頃はなんというか、天才肌なんだけど、どこか尖ってるというか、いわゆる不良ではないのだけど、うん、尖ってた。
まるで悪い事に対しての線引きに挑んでるみたいに、母親はどこまで、父親はどこまで許してくれるのか試してるみたいだった。良くイタズラして怒られてたね。伯父さんも温厚なんだけど、寝るまで怒号が飛んでたことも。
イタズラにしても、レベルを少しずつ引き上げる感じで、ただ違う方面から攻めてたから、怒る方も大変だったと思うよ。
自分に対しても何かしら挑んでるのか、筋トレしてみたり、屋上にモデルガンのシューティングレンジを作ってみたり。
まぁそこまでは許容できたけど。
伯父さんのタバコを持ち出して吸って、屋上にてふかしてるとこに居合わせた時に、「拓海ちゃんも吸ってみや?」って言われて思わず英兄さんのタバコを吸ってしまった。激しく咳こんだよ。大人はなんてもの吸ってるんだ、と。いまは平気なんだけど。
「拓海ちゃんも共犯やね」と笑われて、なんか恥ずかしいやら、腹立たしいやらで真っ赤になってたみたい。
タバコの件は結局伯父さんにばれて大目玉。伯父さんも禁煙すると宣言するはめに。そのうちまた吸い始めたけど。なんでかやめられないよね、タバコって。
脱線したけど、そう、許容できる範囲。ここまでは。
彼の興味の範囲が生物へと向きだした時はだんだんと怖くなっていったよ。
最初はどこかのYtuberみたいにありの巣に液体をながしこんでみたり。
昆虫の採取はまだましだけど、解体はちょっとね。
猫にエアガン向けてるときは、いつか自分に向けられる日が来るのかと慄いたり。
そんなこんなで、彼の興味が人に向くのは自然の流れだったのかもしれない。
誰も止める大人のいないあの日は彼にとって格好の日だった。
その日、朝からいい天気で、いつものようにボクタチは隣町の遊園地にプールに行ったり、お化け屋敷はあそこは怖いから入らないよ。とか、まあ一日中遊んで帰ってきた。
夕方くらいから天気が崩れて、今で言うゲリラ豪雨って状態に。
あぶないから家政婦さんは早めに帰ってもらって、夕飯はカレーを温めてみんなでたべることにした。
辛いカレーの後は甘い果実って、英兄さんが、
「桃あるよ、拓海ちゃんたべる?」
「食べる!」
「なんで拓海だけなのよ?私たちの分は?」
沙羅姉さんから抗議の声が上がりましてみんなたべることに。
桃は美味しかったよ。ジューシーって感じで。
その時点での違和感は、英兄さんが自分で桃を切ってたこと。それもえらく丁寧に。いつもは他人にやらせるのにね。
食後はみんなでテレビゲーム。カートのレースをワイワイしながらやってたら、そろそろ寝る時間となりお開きに。
はやく
英兄さんはいつもならもっと遅くまでイケるやろと言ってたのが、いち早く歯磨きしてさ。
珍しいこともあるね。と3人で顔を見合わせてた。
「拓海ちゃん、俺の部屋でねる?」
と聞かれたが特段読みたいマンガがあったわけでもないから、丁重にお断りをいれたわけですよ。
ピカッ!っと雷が光り雨は土砂降り。少し心細くもあったが、早くねることにした。
音が聞こえた気がした
窓を叩く雨音に混じって
トントンと階段を上がってくる
となりの由紀姉さんの部屋?なんで?
…目が覚めた。
夢?いや、まだ動いてる、つぎはボクの部屋だ
カチリとドアが開いて、入ってきたのは
「英兄さん?どしたの?眠れないの?」
「拓海ちゃん起きてたのか…」
「うん、いま目が覚めたけど雷かな音がした気がして」
「そやね、雷の音がでかいから、他の音にはなかなかきづかないよな」
「英兄?」
「拓海ちゃんは才能ありそうやけど気づかないのかな?」
「英兄さん?なんのこと?」
「術のことはお祖母さんから聞いてない?」
「術?なんのこと」
「お祖母さんは1番才能がありそうなのは拓海っていってたけど、まだなんも仕込んでないんか?」
「??」
「まぁそのほうがやりやすいか 」
「英兄「捕縛」?!」
ありえない光景が広がっていた。
両腕を黒い糸のようなナニカが縛りながらくいこんでくる。
皮膚にぷつっとはいりこんでなお締め付けてくる。
「いた…な、なにこれ?」
「術やで、亜流の符呪ってとこかな、さっきの桃にタネを仕込んだから発動は簡単やねん。」
英兄さんはボクをベッドに横たえる。
「な、な、な、なにをするの??」
「拓海ちゃんに興味があるんや」
「えええええええええ」
「少し黙っとき、」英兄の指が唇に触れ、
「ん〜〜」唇の端から黒い糸のようなので縫い込まれてく
「あ、喘ぎ声は出してええよ」
そんなぁ…
身動きできないし声も出せない、外は大荒れで、大人も帰ってこない、絶望的ですよね。
英兄は覆いかぶさって服を脱がせに来た。
パジャマのしたのパンツに手をかけボクが観念したとき
「あんた!なにしてんのや!!」
祖母の声がして二人とも壁までふきとばされた。
次から次へと、と思っていると、祖母の影のような形をしたものが近づいてきた。
「拓海ちゃんに渡したかったものがわたせんかったな。それが心残りや。英の不始末は弟子に頼んだ。記憶を蓋してしまうことになると思うけど、ま、きにせんとき、会えなくなるのは寂しいけどそれだけや、また何処かの彼方で」
そう言った後、スゥーっと消えていった。
呆然とただ呆然としかできないボクの耳にまた場違いな音が入ってきた。
ピンポーン、ピンポーン
玄関のインターフォンがなってる。
英兄さんはまだ起きてないし、沙羅姉さんと由紀姉さんも心配。
降りながら確認すると、沙羅姉さんも由紀姉さんも人形になってた、、
なんで?涙を浮かべながら玄関のドアをあけとあめにぬれながら、細身のスーツの人物がいた。
「どちらさまですか?」
「師匠の孫の不始末に対応に来た」
一通りの惨状を見て、まずは英兄さんの処置に入った。
「なんか天才って紙一重って言うけど、このこはひとりで突っ走ってはるねぇ。一旦術に関する記憶操作と、制限を掛けとくわ」
言いながら、英兄さんの額に紙をペタペタと貼り付け、耳の後ろに筆で刻み込んでいた。
「あなたは祖母のお弟子さんなんですか?」
「1番弟子やと気取ってるつもりや」
「なんの?」
「…符呪、符術と呼ばれるもんや。いま教えても記憶わ蓋するで、みんな、な」
ボクは「人形になってた、由紀姉さんと沙羅姉さんは助かるの?」
「助かる、キミの助けがあればなお良し」
「良かった〜、助けてください」
「良いお返事やな」
人形状態の沙羅姉さんと由紀姉さんを助けて、皆を寝かせた後は…
「記憶、封じるの?」
「お師匠さまとの約束やから、今日の出来事は明日にも響くねん…大人しく封じられときや 」
「はい…」
そこからが大変だった帰ってこないはずの伯母や母が帰ってきて、明日お通夜があるというのだ。
だれの??
祖母だった。
あの後の従兄弟のことはよく覚えてる。
いままで出来たことができなくなったのか、苛立った様子が頻繁にみえた。
ただ全体的には丸くならざるおえなくなった感じかな。いまでも祖母をそばにかんじてるらしいし。
ボクは?
思い出してしまった。
盆地特有茹だるような暑さの中「あの人」に再会してしまったから
「蓋が外れてしまうんやね、やっぱお師匠のお孫さん・・か、手ほどきはウチがやらなあかんのでしょうね。」
それはまた別の話。
最後まで見ていただいてありがとうございます。