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三生の守り神  作者: LUCA
第1章 妖生
8/31

その五

*2019/4/5 改稿

なんとか吐き気とめまいを耐え抜き周りを見てみると、数時間ぶりに見る守人稲荷神社の様子は大きく変わっていた。

あれってもしかして?

社の奥には、今日わたしを跳ねようとしたものであろう車が、未だ運び出されずに放置されていた。とりあえず立ち入り禁止と書かれた看板とポールが設置されているものの、わたしたちの位置からは、無残に潰れたボンネットと、車内の状態が見えないほどに罅割れたフロントウィンドウがはっきりと観察できた。

「そのようですね。」

「あのまま助けてもらえなかったら、どうなっちゃってたんだろう...ゾッとするよ。」

「そうでしょうね。ですが、あなたは私の願いを聞き入れ、自ら未来を変えたんですよ。それよりも、もう日も暮れそうですし、帰りましょう。」

「そうですね...って、やっぱりわたしの家なんですね。」

苦笑するわたしに、彼女は、狐の顔でもはっきりとわかるような笑顔で返す。

「ご家族には、近所で捨てられていた小狐を拾った、と説明してください。私はそれを信じ込ませる術を使いますから。」

輝狐が名案とばかりに説明を始める。

だが何とか明るくしようとするものの、お母さんの死を意識してしまうと、どんどんと気分が落ち込んでいく。彼女はわたしの変化に気付いたのか、不思議そうに尋ねた。

「どうしました?何か気に触るようなことを言ってしまいましたか?」

ゆっくりと首を振りながら、わたしは先日母の身に降りかかった不幸について語り始めた。

********************

お母さん、仁美ひとみは、わたしが生まれてすぐに離婚して以来、仕事をこなしながらもわたしのことを愛し、育て上げてくれていた。一人っ子のわたしはお母さんとの二人暮らしで、彼女は唯一、完全に信頼することのできる家族だった。

しかし1週間前、車で職場に向かっていた時に、突然隣の車線から外れ暴走した運送トラックに衝突され、お母さんは命に関わるほどの重傷を負った。そしてその数時間後、彼女は病室で静かに息を引き取ったのだ。

警察の捜査の結果、事故は相手の居眠り運転が原因と判明した。しかし、理由など、家族を亡くし悲しむわたしには関係のないこと。お母さんからは大きな一軒家と全財産が残され、加害者からは損害賠償が支払われたため、住む場所と生きていくための最低限のお金は確保できていた。しかし金銭など、悲しみを増長するだけのものだった。

こうして1週間が経過し、わたしは未だ悲しみから立ち直れず、学校にも通えず、1人家に引きこもっていた。

********************

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