その四
今日は3部分連続投稿の予定です。
*2019/3/23 改稿
輝狐の表情は、いつか笑顔へと変わっていた。
「はい、それで大丈夫です。最後に狐の耳と尾が外れた姿を思い浮かべながら、『変化の術』と唱えてください。」
さっき姿見に移っていた姿を思い出して、そこから耳と尻尾を取り除いて...
「変化の術!」
術名を言葉にした途端、わたしの視界は真っ白な光に包まれた。そして光が治ると、いつの間にか耳としっぽの感覚が戻っていた。
「成功...かな?」
「おめでとうございます!」
満面の笑みで、輝狐が歩み寄ってきた。
「一回で成功するとは、流石ですね。これをどうぞ。」
手渡された手鏡には、腰まで伸びたライトブラウンの髪に、茶色い瞳のわたしの姿が映っていた。
「あれ?前の私になろうと思ってたのに。」
「私は今の髪の方が好きですよ?」
「そうですか?...じ、じゃあこのままにしてみます。」
慣れない褒め言葉に少し照れて、そっぽを向いてしまう。
「それでは、今日の練習は終わりにして、人世界に帰りましょうか?」
「輝狐さんも人界に戻るんですか?」
不思議に思って尋ねると、彼女は当たり前のように答えた。
「はい、あなたが一人前の守り神になれる日まで、共に過ごすつもりですよ。」
「えっ!?でも神様なのにどうやって...?」
「このように。」
わたしの声を遮り満足気な顔をした彼女は、突如光を発しながら小さな狐へと姿を変えた。
「えっ、えっ!?」
そして驚き固まったわたしを他所に、彼女は不思議と口も開けずに、言葉を放った。
「さて、帰りましょうか。」
跳んできた彼女を抱きとめると、足元には魔法陣のような文様が浮き上がった。そしてついていけずに立ち尽くしていると周りの景色が歪み、、耐え難い吐き気を感じ始めたところで二人は人界の、元いた神社の中へと転移されていた。
一応、瑠花と輝狐の言葉は意識的に変えるようにしています。
例: 瑠花=妖怪 輝狐=妖生
瑠花=わたし 輝狐=私
などです。わかりにくいところも多いかもしれませんが、これからもよろしくお願いします。