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一章

 しゃき、シャキ、たまに、バリ。

凝結したての冷えた膜は、踏むと聴き心地のいい音をたてる。

足元をよこぎるのは冬のカマキリ。

視界に入ったからには憂鬱だ。

行先は入学式。気のない君が代が流れる中、きっと俺は一人、不似合いなヒーローソングを口ずさむ。


「ふしぎ」

ぼくの名前は淡海昇。十二さいです。

住んでいるのは、東京にある町田という駅です。

僕の家には、お母さんとお父さんとお兄ちゃんが一緒にすんでいます。

学校も仲のいい友だちばかりで、毎日がとても楽しいです。

たいようがサンサン、きせつはもう夏です。

さいきんは暑くてねむれません。

今回の作文では、お母さんの歌ってくれるアンパンマンの歌について書こうと思います。

お母さんは僕がねむれないとき、いつもアンパンマンの歌を歌ってくれます。

かしはなくて、ラララ、ラララと歌います。

お母さんの声は、ぼくのむねのあたりでやまびこみたいに何度も何度も、はね返ってきます。

やさしくて、温かな、とにかく幸せな、幸せな気分になりました。

うまくせつめいできませんが、ぼくはふしぎに包まれました。

その声にすいこまれてしまいました。

歌っていたときのお母さんの表情はとてもきれいだったです。

ぼくはお母さんに、きれいだというと、お母さんははずかしそうに、笑いました。

なんでアンパンマンの歌を歌うの? ときくと、お母さんは笑顔で、お母さんにとってヒーローだからと言いました。

なんで歌しをラにするの? ときくと、悲しそうに、むずかしいからと言いました。

ぼくは今日もアンパンマンの歌をうたってもらいながらねむりたいです。


 「ふしぎに包まれた」この表現が教師達からウケ、この作文は高い評価を得た。

不思議という表現はすごく曖昧なものだ。

でも、他にどんな表現を用いても間違いになる。

下手に加工して、あの感覚を台無しにしたくない。

あの日々に抱いた感覚を大切にしたい。

俺はもうずっと長い間、あの感覚を求め続けている。

この作文を書いてから六年。

俺の置かれている状況は180度変わった。

家庭が崩壊したのだ。

両親は絶えない喧嘩の末離婚。

原因は父の不倫だった。

兄と俺は母の元で暮らしている。

正確には母が俺たちのもとで暮らしていると言うべきかもしれない。

住所は横浜市から町田市へと移った。

斉藤昇。

これが今の俺の名前だ。



 換気のためか開かれた廊下の窓から、風に舞う桜が覗けた。

すがすがしく春を実感した。

なんて、悠長なことを言っている場合じゃない。

時刻は十時三十分。

授業はとっくに始まっているのだ。

「また遅刻か、なあ斉藤、そろそろまずいぞ」

俺が重い引き戸を開けて教室に入るなり、教師の尾崎が真剣に俺を心配する。

さあきた。億劫でしかないやりとりの開始だ。

尾崎が黄色のチョークを俺に突き出した。

「で斉藤、何があった?」

色んな意味で、この間がたまらない。

軽く病みつきになりそうだ。

「遅刻です」

まっとうな答えに教室中が失望する前に、言葉を繋いだ。

「いや、通学途中に飛行物体が見えて、まさかと思い追いかけちゃったんですよ。とうとう俺の気持ちが彼に届いたんだって。あれは興奮しましたね。そりゃ遅刻もしますよ」

「ほー、で斎藤、その飛行物体の正体はなんだったんだ」

「ええ、やはりというべきか、その正体は俺の永遠のヒーローでした・・・それが誰かは皆さんもご存じですね」

「いや、何言ってんの」

「証拠はありますよ」

ボストンバッグの中をがさがさ探り、袋に詰められていない素のアンパンを掲げて見せた。

埃まみれだった。

「顔、わけてくれたんです」

笑うところだ。

「アンパン、わざわざ仕込んだのか?」

「わけてくれたんです」

遅れて二、三人の笑え声が背中にぶつかってくる。

耐えられない。

「それに・・・」

「もう、止めとけ」

「そーんなのはい〜やだ」

アンパンマンのマーチのメロディーに乗せて言った。

渾身のギャグは信じられないほどのスベリ方をした。

「あれ、アンパンマンは鉄板じゃなかったっけ?」と斜め後ろからかまけてくるのは優。

気恥ずかしさなしに親友と呼べる奴。

「いじられる分にはな。自分から言ちゃあ、イタいだけ」と後ろからちゃちゃを入れるのが甲斐。

「ってか、手が込んでる分つらいよな」と前のほうでウザイのは多分、小泉か将太。

うちのクラスでは遅刻する度に、朝のホームルームでひとつ面白い話をしなければならないことになっている。

朝礼に間に合わなければ、つけは終礼に回るだけ。

担任の尾崎も、単純に愉快と、遅刻の断罪も兼ねて、ふりを怠らない。

俺は遅刻の常習犯だから、この凌辱には慣れつつある。

バカなことをして恥ずかしがっている一時間前には、家の中で悪夢のような状況に置かれている。

慣れないのはこのギャップの方だ。

「よし、斉藤席につけ」

最後方の窓側の自分の席に向かい、傷心のまま席につくと、隣の席の早苗が一月前からアイプチで二重になった瞼を、しきりにまばたきしながらこちらを窺ってきた。

「斉藤君大怪我じゃん。薬、処方してあげよっか?」

「いや、心配しないで、ふれないで」

早苗はスカーフを指先で巻きながら、え、ひどくない? ともう一つ隣の鈴木美奈―ミーナに振りむいた。

ミーナは困ったように首をかしげて、チラッとこちらを向くので、反射的に視線が泳いでしまった。

早苗とは対照的に化粧の薄い彼女。

その分、派手さは無いが垢抜けていないわけじゃない。

何せ素材がいいから。

加工無しの奥二重で、茶色い瞳はどういう原理か常時潤んでいる。

艶のあるロングヘアーはカラーも巻いたりもしてないが、俺はそれでいいと思う。

流行の色に染まらない彼女は、ある意味では自己主張のできる子なのだ。

恐る恐るミーナを見据えると、ミーナは困ったように笑い、その視線を早苗に合わせた。

「まあ、そっとしといたあげようよ」

袖がまくられた左腕には、いつものピンク色の時計がはめられていた。

キラ星のようなラメが全体にまぶしてある。

幼稚な造りのその時計だけは頂けない。

いや、頂けというなら頂くけれども。

「あんたね、弱弱しい声で優しいこと言ってちゃだめよ。斉藤君は基本冷たすぎるから」

ミーナには独自の世界がある。

それは繊細なガラス売り場のようで、割れものの世界を闊歩するほど勇気のない俺は、その世界の入口で二の足を踏み続けている。

装いも甚だしく、ふてくされた早苗がちらちらとこちらを伺いながら、文句を言ってくるのを交わしていると、おーい静かにしろよ、と尾崎の注意が入った。

会話はトーンを下げ続き、教師が半ば呆れながら黙認する。

いかにも高校生な朝礼は進行していった。

俺の家とこの場所は明と暗。

ここで過ごす時間が楽しすぎて、また、家で過ごす時間がつらすぎて、気持ちが揺さぶられる。



 一時間目が終わった。

スピーカー越しの鐘が、俺達に授業の始まりと終わりを教えてくれる。

「おーい、昇」

常時、風邪をひいているかのようなしゃがれ声。

甲斐がお呼びだ。

「うーん、なに?」

今もそうだが、甲斐は鼻を手でかばいながら話す。

自分の鼻を他人の視界から遮るための防壁なのだろう。

それは逆にウィークポイントをさらけ出すことになっているのだが、本人はそのことに気付かない。

「冷静になってる場合じゃないから。やべーよ、おまえ。校長呼び出しだって。」

「知ってる。尾崎から聞いたよ。俺なんかしたっけ?」

「うーん、どうでしょう」

甲斐は多くの生徒に敬遠されがちだ。

理由はこの性格もあるだろうが、主に冷笑の癖らしい。

甲斐はよく笑うが、ほほ肉があがるような笑い方はしない。

微かに口元を緩ませ、少し目を閉じる。

そっと、にやつくのだ。

次の時間は生物室で実験だ。

授業内容は赤虫の解剖とのこと。

赤虫とは蚊の幼虫らしく、ならば殺すことにためらいはないが、唾液腺をピンセットで抜き取ったりするらしく、自分がピンセットを握っているところを想像しただけで気持悪くなる。

俺は教室から廊下に出た。

もう十分休みの三分の二が過ぎていた。

甲斐と話すにも歩きながらの必要がある。

なんでだよ? と俺が少しイラついて尋ねると、遅刻が二十回超えたからじゃん、と甲斐は即答した。

足早に生物室へと進む。

甲斐はこちらを向きながら、サイドステップに近い形で一歩前を行く。

生物室はこのフロアの一階上にある。

俺たちが階段のユーターンにさしかかったところで、上から二人の教師が降りてくるのが見えた。

甲斐は携帯電話を慣れた手つきでいじくっている。

今時珍しいのは百も承知だが、俺は携帯電話を持っていない。

贅沢が許されないからだ。

こいつはその俺の前で携帯電話をよく触る。

ちなみに、校内での携帯電話の使用はご法度だ。

降りてきたのは体育担当の後藤と国語担当の西川だ。

国語科の西川は去年入ってきたばかりの新人女性教師で、気が弱いから言いくるめられるが、万年ジャージ姿の筋肉君の後藤は、きっと自慢の筋肉をいかして甲斐のデリケートな頭を殴りつけるだろう。

二人は仲良く喋りながら階段を下っている。

西川が筋肉君にあわせているようにも見える。

甲斐が力溢れるげんこつをくらうことを少し期待したが、いつのまにか甲斐の手から携帯電話は消えていて、その行方は彼のズボンのポケットの膨らみが教えてくれた。

さすがに要領が良い。

教師達二人は俺達の前を素通りしていった。

挨拶を期待していたのか、西川が通り過ぎてからも数秒間俺の方を見ていた。

生物室につくとほっと一息ついた。

それにしても、校長直々に呼び出しとはご苦労なことだ。

校長はとても冷ややかな目をした人で、いつも近寄りがたい雰囲気を体中から放っている。

生徒は勿論、他の教師ともろくに会話しているところを見たことがない。

アナウンスが校内に響いた。

「二年文系一組斉藤昇君。至急校長室まで来てください」

淡々とした口調だ。

もうすぐ授業が始まるというのに、よっぽど重要なことらしい。

校長室は一階の購買の裏側にある。

せっかく階段を上ったのに、それをまた下れとは。

「大丈夫かい?」

心配してない事を悟らせる口調で甲斐が言った。

こいつの性悪な部分が今日はやけに目に付く。

今日もでいいか。

俺は親指を下に向けてやった。

「心配ありがとう。感謝で胸が痛いよ甲斐」

足のギアを最速のに合わせて校長室へと向かった。

面倒なことや嫌なことは早く終わらせたいのだ。

遅刻が理由で呼び出されたわけではないだろう。

わざわざ校長が出向くだけの理由があるはずだ。

その理由を想像する度に、背筋に悪寒が走った。



 どこかの避暑地にあるどこかの別荘にありそうな木造りのドアは、築五十年以上のこの学校には場違いなさわやかさを、辺り一面に放出している。

俺は木造のドアをノックして、失礼します、と断り校長室に入った。

ドアノブを握った時に、手に大量の汗をかいている事に気付いた。

部屋には校長の姿はない。

どうやら放送室からまだ戻っていないようだ。

俺は少し安心して、部屋を軽く見回した。

室内は和テイストの奥行きのある造りだ。

入ってすぐに目につく位置に、表面がガラス張りの異様に腰の低いテーブルがある。

上にはガラス製の灰皿が乗っている。

そのテーブルを挟む形で、バランスをとるためだろう、こちらもまた随分と低めな造りの椅子が二つ置かれている。

きれいに整理されているところから察するに、俺と校長はここで話し合うのだろう。

そこから少し奥に行ったところで、四隅が金具で補強されている、みるからに年季の入った立派なデスクが見られた。

デスクの上には、数多の書類が散乱していた。

ただ行事の度に演説しているだけ、と思われがちな校長という立場も実際はなかなか大変のようだ。

デスクのすぐ後ろからは、八重桜が散っていく様子が窓ごしに見られる。

いい造りだな、と純粋に感じた。

桜は母さんが最も愛した花。

だから、俺も桜が好きになった。

そのまま二、三分程、桜にみとれていただろうか、俺はドアのきしむ音に気がついた。

どうやら校長が到着したようだ。

校長の第一声は、遅れてすまないね、気を悪くしないでくれ、と意外にも謙虚なものだった。その口調も思ったよりずっと穏やかだ。

ただ、校長のかもしだしている雰囲気はやはり近寄りがたいものがあり、思わずたじろいでしまう。

校長の目元には、地層のようにいくつものしわが重なっている。

目元の隈は、不健康なほどに濃い。

髪は白が主体だ。

目の前にすると、思っていたよりも老けていた。

「まあとにかく座りなさい。少し長い話になるからね」

そう言いながら目を細めてみせる校長は、笑い方が下手くそだった。



 後方から授業開始のチャイムが聞こえた。

校長室にもスピーカーは備えられているようだった。

席についてから5分は経過したはずだが、一向に俺を呼んだ理由を話す気配がない。

校長は俺の仲のいい友達の名前や性格など、当たり障りのない会話を進めていく。

自から本題であろう話に入ることにした。

この人が俺との距離を近づけようとすることで生まれる間が嫌だった。

「遅刻しすぎたから、というわけではないですよね。もっと重要なことでしょう。それも他の生徒や教師に聞かれてはならないような話・・・例えば、家庭のこととか」

保険をかけたつもりだ。

弱点を指摘されるよりは、自ら告白するほうが、ダメージが軽い。

「頭の良い子だね・・・すまないね。本来なら私から切り出すべきなんだが、事が事だけに」

やはり。

最近は母さんの調子が優れなく、よく奇声を上げている。

近所の人が不審に思うのも無理ない。

しかし、この人の物言いはいちいち言い訳がましい。

俺は、校長の集団と群れなく個人にこびない振る舞いは、嫌いではなかった。

だが、蓋を開ければなんとやらってやつで、軟弱さが彼を人垣から遠ざけていただけのようだ。

そう考えると、甲斐と話していた時よりも更にイラついてきた。

校長の回りくどい話は、俺の弱点を長い間さらけだしているのだ。

それに、これ以上製作者の意図が見えない造りの椅子に座らせられると、腰が悲鳴を上げかねない。

さすがの校長も俺の嫌悪感を悟ったらしく、じゃあ、そろそろ本題に入ろうか、休み時間も限られているしね、と言った。

額の汗をハンカチでふき取っている。

ポロシャツの胸のあたりが汗で滲んでいる。

怖いのだとしたら、俺ではなく俺の置かれた状況だろう。

椅子に手をかける部分がないので、両手とも膝に置くしかなく、俺の姿勢は猫背に歪む。

俺の家庭事情は血生臭い。

両親が離婚しているのだから当然片親なわけだが、俺の場合、父となる人がいない。

このこと自体はさほど問題ではない。

むしろ、兄貴にとっては好都合だっただろう。

父の女癖の悪さは母さんを苦しめていた。

それなのに母さんは誰よりも、息子達よりも、父を愛した。

兄貴の嫉妬の感情は一つ解消されたことになる。

問題なのは、夫という存在を失ったことで、母さんが精神的に追い詰められイカれたことだ。母さんは薬に手を出している。

母さんが実際に薬を使用している姿を見たわけではないが、一時期みせていた皮膚寄生虫妄想や言動、唾液を飲み込むことをやめた口元などが、事実を教えてくれる。

正直、母さんと呼ぶのは便利上の話に過ぎない。

かつての母さんを知っているからこそ、とてもじゃないが、今の母さんを生人と認めることはできない。

あれは死体なのだ。

俺が怖いのは、母親が薬に手をしているということを知った時の周囲の反応だ。

母親が薬等に溺れていること知ったときの周りの反応は、あまり良いものではないだろう。

七割が同情、三割が軽蔑といったところか、もしくは逆の割合かもしれない。

自分の唯一の居場所を奪われたくない。

学園生活だけは家庭に干渉されたくない。

校長は俺の目を見ることなく話した。

「お察しの通りだよ。実は君の家庭のことなんだが・・・お母さんの調子が優れないようだね」

準備はできていた。

それでも、心臓が徐々に早いリズムを刻み始めた。

発音としては同じだが、質は明らかに変わっていく。

どくどく、どくドク、ドクドクと、より鋭利なものに。

校長は続ける。

「君の近隣の方から、夜中にうめき声のようなものが聞こえてくる時がある、とね。近所の方達は皆心配しているようだよ」

校長は最後に、多分この人の精一杯の表情を作って言った。

「どんなことでも相談してくれ」

この人は神経をすり減らしているのだろう。

俺に過失があるわけじゃないから、追い出すわけにもいかないし。

薬中の母を持つ高校生とくれば、スキャンダル性も抜群だ。

校長は顔から下にかけて小刻みに震えていた。

透明なテーブルは校長の足を隠さないのでわかった。

自分の足を見てみると同じように震えていた。

それが嫌で、俺はすぐに立ち上がった。

校長に無言で頭を下げ、そのまま部屋を出て行った。

侵食が始まった。

その日は誰にも、何も言わずに早退した。

自分の部屋のベッドに寝そべると、母さんの歌を思い出した。

芸がないとも言える、ラで紡がれたヒーローソングは俺を浄化する。

かつて、母さんは俺に勇ましい子になって欲しいと言った。

母さんは弱い人だったから、子供には別の未来を見たかったのだろう。

そして、自分を救ってほしかった。

でも、救えなかった。

俺は母さんの見た未来を裏切ってしまったのだ。

心の弱さは俺達家族に共通する。

本当に他人に優しくあるには、勇気も必要となる。

母さんがよく言っていた。

俺はどのタイミングで、それを失ってしまったのだろうか。

俺は追い込まれた時なんかは、こうして母さんの歌を思い出すようにしている。

今までだって、何度この歌声に救われたか、わからない。

でも、いくら鮮烈な記憶とはいえ、もう6年近く生の歌声を聴いていない。

脳内再生では救われはしても、追い求めているあの感覚には包まれない。

もう叶わない願望なのかもしれないが、もう一度、本当に一度でいいから、あの感覚に包まれたい。

もちろん、生の歌声を聴くことだけで、あの感覚に包まれるという保証はない。

今の俺には資格というか、状態というか、とにかく何かが不足している気がする。

憧れは昔はもっと近い所にいたはずなのに、今は霞むぐらい遠くに映る。

歌が終わると、俺の頭の中も室内も静寂に落ちた。

かつては、他人に顔をちぎってあげられはしなくとも、心を分け与えることは出来た。

今は―違う。

自分の幸福のためならば、他人の犠牲も厭わない。

そんなありふれた人間に成り下がってしまった。

未来に抱くことのできない感覚ならば、恋い焦がれるだけ無駄なのか。

幾度となく繰り返してきた思考に飽きたのか、急激な眠気に襲われた。



 俺の部屋は我が家の二階に位置する。

左隣の兄貴の部屋と右隣の洗面場に挟まれる形だ。

自分で言うのもなんだが、部屋にはホコリ一つなく、相当整理されている。

換気のための小窓が二つ並んでいる。

丁度俺の目線のあたりから、脇に添えられた薄手のカーテンをはたはたと浮かせながら、今日の風を受け入れる。

俺は余計なものは置かない主義なので、部屋の中には勉強用の机、小さな鉄製ベッド、漫画や新書や参考書が並べられている本棚、そして、窓際に置かれて風に揺れる紫のカーネーションぐらいしかない。

母さんは自然を愛した。

特に花が好きで、小さい頃はよく花の話を聞かされたものだった。

幼い俺がその会話に飽きると、決まって母さんは俺の瞳の奥を見て話し続けた。

自分以外に興味がいっているような気がして、俺がムスッとした表情をみせると、母さんは笑った。

「誰に嫉妬してるのよ。おかしな子ね」

綺麗な笑顔だった。

俺が疲れたそぶりを見せると、母さんはまた笑いながら言う。

「昇は男の子だから、お花の話は興味ないのかな。あのね昇、お母さんには夢があるの」

その夢は叶わなかったけれど。

「ここよりもずっと自然の多い所に行って、そこで暮らしたい。パパと、昇と、正の四人で。私達家族だけでいい。他には誰もいらない・・・四人で花を愛でながら一日を過ごす。駄目かな、昇達には退屈かな?」

いつからか、母さんは人嫌いになっていた。

窓際で揺れるのは紫の造花。

母さんが二番目に好きだった花。



 目覚まし時計のアラーム音がうるさい。

全く、今朝はなんとも目覚めの悪い。

時計と後味の悪い格闘をしたばかりだが、まだかなり眠気が残っている。

そのまま二度寝をしようかと思った。

しかし、尿意や喉の渇きなど、生理的欲求も負けてはいなかった。

毎朝のようにおこる板ばさみだ。

体のほとんどの機関がまだ眠っているのに、なぜか尿意だけは張りきって自己主張してくる。膀胱が破裂しかねないので、俺は結局ベッドから立つことにした。

黄色い小便を放出した後、手も洗わず部屋に戻ると、昨日代えたばかりのふかふかのベッドに腰掛けた。

我が家は縦に長い七十坪くらいの二階建て一軒家で、面構えはなかなか立派だ。

内部はところどころ剥げていて、年期を感じさせる部分もあるが、良く言えばレトロなわけだし。

俺達のような母子家庭がこのような家に住んでいるのは、皮肉を込めて父のおかげである。

父は誰でも一度は耳にしたことがあろう、某生命保険会社の重役を務めていた。

そのため俺達がまだ四人家族だった頃には相当な贅沢が許された。

望めば、どんな物でも手に入った。

それが彼なりの愛情表現だったのだろう。

しかし、あの作文を書いてから一年後に、父は母を捨て、俺達を捨てた。

手広く遊んでいたツケが回り、女の一人を妊娠させ、そのままそっちの家庭に引きずられていった。

父は慰謝料とは別に莫大な金を残していった。

その後、父と我が家との交流は一切無い。

母さんが父とつながる全てを捨てたためだ。

俺達が住んでいた横浜という土地も例外ではなかった。

母さんは父が残した金を使い込んだ。

ブランド品、車、インテリア家具、そして我が家。

父へのあてつけだったのだろう。

いくら金を使おうとも傷が癒えるわけもなく、やがて、母さんは自棄になり始めた。

そして、挙句の果てに手をつけたのが薬というわけだ。

薬に手を出したということを除けば、この話は全て俺が中学に入学した年に兄貴から聞いたものだ。

母さんが荒れていた頃、俺はまだ幼く、母さんのことは病気なのだと思っていた。

だから、治るものだって信じていた。

俺と兄貴は、母さんが薬を使用していることについて話し合ったことはない。

兄貴からその話題を振ってくることはないし、俺も同じだ。

暗黙のルールというやつだ。

どのような理由があったのか、二年前ぐらいから父の慰謝料の支払いは滞ったままらしく、現在我が家の生計は兄貴の稼ぎで成立している。

一見すれば、兄貴はとても我慢強い人だ。

俺の学校や母さんの看護のために、フリーライターという夢を諦め高校を中退し、家の生計を立てるために、今は日給の良い土木の職に就いている。

兄貴には感謝している。

自分の人生を捨てて、家族に尽くす兄貴の生き方はとても真似できない。

そう考えるように、自分に言い聞かせている。

極端に節約しているわけではないが、それなりに工夫して出費を抑えているにも関わらず、二人の家族を養うために、なぜ兄貴は不休で働かなければならないのだろうか。

許容される自問はここまでだ。

これ以上に具体的な疑問は、自分の心内ですら認められない。

我が家と俺自身のためだ。

死体と学校。

屍と学校へ通うために必要な家庭。

俺が目をつむることを選んだ最大の決め手は、あれは母さんじゃない、その思いだった。

一向に眠気が覚めそうにないので、洗面所の冷えた水道水で手を洗い、うがいした。

今日は特にすることのない日だが、必要以上の睡眠はあまりに無益で、まだテレビを見て話題を収集する方がましだった。

時計は昼を指していることだし「いいとも」でも見るかな。

母さんはリビングのソファーでうずくまるようにして眠っていた。

不規則な呼吸音が聞こえてくる。

このまま起きなければ、どんなに楽だろう、母さんにとっても俺にとっても。

いっそ本当に死んでしまえばいいのに、なんて事を兄貴が聞いたら卒倒するだろうか。

俺は寝起きのだるさをこらえて、二階の自分の部屋から薄手の毛布をとってきて、母さんにそっとかけた。

こうやって、すぐに自分の思考を裏切る行為をするのはいつものことだ。

すーすーと規則的な寝息が聞こえる。

母さんの寝顔は綺麗だ。

今の母さんは、寝ている時が一番美しい。

それからずっと8チャンネルのテレビ番組を観賞した。

回すのも面倒で、やがて目を使うのに疲れてきた。

無益なくせに睡魔はしつこい。

諦めて、少し昼寝をすることにした。

十七歳。

青春まっさかりの日曜に昼寝。

青春の無駄遣い。

本当なら友達と都心にでも繰り出し、はっちゃけたいところだが、母さんを補足できないところに行くわけにはいかないのだから、仕方がない。

土曜、日曜は俺がつきっきりで面倒を見る。

平日の朝は、俺は学校、兄は仕事のため、母さんをベッドに縛り付ける。

夜からは兄貴と俺が共同で看護する。

土曜、日曜に限って、俺と兄貴の両方が家を空ける必要のある時以外は、鍵の他に玄関のドアを複雑な構造のチェーンで施錠することで、俺たちの看護は大分楽になる。

チェーンは知恵の輪のようなもので、力ずくで外すことはほぼ不可能なので、あの母さんが開けられるようなものじゃない。

俺達の看護は母さんが禁断症状に陥った時に、外に出て醜態をさらしたり、他人、あるいは自分を傷つけたりするのを未然に防ぐことが目的だ。

母さんを家から出さなければいいわけだから、開かずのチェーンの効果は絶大だ。

さすがに、家に監視役のいない状態で母さんを野放しにすると、家がめちゃくちゃになりかねないので休日に限定されるが、前の晩の施錠を怠りさえしなければ、朝から母さんを縛り付ける必要もなく、少なくとも、土日の朝は俺もゆっくりできるのだ。

あとは母さんが暴れ回らないことを祈るだけだが、母さんにも休みは必要らしく、曜日感覚があるとは思えないが、土日は平日に比べれば静かなのは確かだ。

瞼をつむっても、なかなか眠りにおちない。

全体が眠いのではなく瞼だけが眠い、みたいな。

せめてもの抵抗として、眠る前に少し考え事をすることにした。

学校のこと、家のこと、自分のこと・・・校長の話。

一瞬で目が覚めた。



 夜になり母さんが目を覚ました。

目をしょぼつかせている。

「母さん、具合は?」

更に二回同じ質問を繰り返したが、答えてくれない。

最近は口数が急激に減りだした。

母さんから話しかけてくることはほとんどなく、俺や兄貴が何か尋ねても「ああ」や「うん」など気の無い返事しかしない。

また、時には今日のように無視を決め込んで、一人で思いにふけっていることもある。

俺はため息をつくことを夕食の準備に取り掛かかる決意とした。

今日の夕飯はハンバーグだ。

ボリュームがありながら実は低コストで作ることができるお得な料理だ。

緑のチェック柄のエプロンを着て、ひき肉を炒めている姿は同級生には見られたくない。

甲斐症があると誉めてくれそうな知り合いもいない。

七時頃。

ドアがきしむ時になる独特の低音が響いた。

兄貴が帰ってきたようだ。

「ただいま昇、母さん」

兄貴の声は低く掠れていて、優しさを感じさせる。

母譲りだろう。

母さんもどちらかというと、声の低い人だった。

兄の名前は正という。

背は百八十センチあるかないかぐらいだ。

高校時代にラグビーをしていた時の筋肉がまだ残っているらしく、家系に背いた筋肉質だ。

最大の欠点はだいぶ大脚な足。

歩いている姿を見れば、でかい体も手伝って一目でガテン系とわかる。

帰宅するのは深夜なので、服は大概バイトが終わってもひきついでそのまま作業着を着ている。

シミが広く分布した作業着からは苦労が滲み出ている。

「おかえりー」

なるたけ元気な声で出迎えた。

「ただいま。母さんの様子はどうだ?」

「いつも通りだよ。特に問題なし」

兄貴は相当疲れていたらしく、リビングに入るなり母さんが眠っているソファーの直ぐ下に、崩れ落ちるように寝そべった。

汗の匂いがハンバーグの匂いを押さえて、俺の鼻まで届いた。

「今日はいつもに増してお疲れだね」

嫌味に聞こえないようイントネーションに気をつけた。

兄貴は頭をかきむしる。

「まあな。でも、お前らのためだから。疲れになんか負けてられないだろ」

この人はよくお前らのためだから、と口にする。

兄貴がそれを口にするたび、兄貴に対する疑惑の念が浮かび上がってくる。

その感情を言葉として実体化させてはいけない。

もし、それが言葉として俺の脳内で理解されてしまったら、俺は兄貴に、それをぶちまけたい衝動を抑え切れなくなるだろう。

そうなれば、この家に完全に崩壊する。

我が家はぎりぎりのところで保っている。

夕食をテーブルに並び終えた頃、母さんが起きた。

当たり前のことだが、母さんも食事をする。

俺と兄貴は向かい合うように座った。

母さんは俺達の真ん中に位置する赤のソファーに座ったまま、動く気配はない。

どうやら、その場所で食事を摂るようだ。

俺がリモコンでテレビをつけ、兄貴が番組を指定した。

今夜はゴールデンのお笑い番組を観ることになった。

「昇、うまいよこのハンバーグ」と兄貴。

ハンバーグをナイフで切り分けている。

最初に全部切り取ってから、肉に手をつけるのは教養がない証拠だが、母さんの教育への情熱は兄貴には注がれなかったのだから、仕方がないことだ。

「マジで、今日は少し焦げちゃったんだけど、おいしいならよかったよ」と俺。

しっかりと、次に口に運ぶ分だけを切り取る。

「母さんも美味しいって言ってるよ」と母さんを代弁するのは兄貴。

母さんは一枚の形状を保ったままの肉の中央にフォークを刺して、かじりついている。

薬で歯をだめにしたせいか、肉を口に入れては噛み切れずに皿に吐き出す、を何回か繰り返した。

口から肉が出る時に、粘り気のある唾液の線が母さんの唇と、外に出た肉とを繋げている。

高く飛ばない凧の糸のように、だらりと垂れ下がっている。

母さんがナイフを使わない食べ方をするのは知っていたから、もともとこの人の分のフォークは用意していなかった。

フォーク一つ分の洗う労力を節約できるし、いちいち期待していちいち失望するのはしんどい。

「母さんにまで喜んでもらえたなら、最高だね」

俺がそう言い終えたその刹那、兄貴が悪戯っぽい表情を浮かべた。

少し、不安も読み取れる。

「ステーキだけに・・・素敵・・・なんてな」

違うよ、兄貴。

これはステーキじゃなくハンバーグなんだ。

さっき自分でも言っていたじゃないか。

兄貴がはっとした顔で、自分のフォークにささった一口サイズのハンバーグを見つめていた。肉をさしたままのフォークが食器の上に落ちた。

静寂の中で、高い金属音が響いた。

母さんが周りを興味しんしんに窺う。

それはユーモアがブラックに染まった瞬間だった。

兄貴の両頬が真っ赤に染まると、リビングに尋常じゃない空気が流れた。

俺はそれを吸わないように息をとめた。

「昇・・・今の・・・聞いてたか?」

兄貴の問いに、俺がかぶりを振ったところで会話がひと段落した。

次に会話がやってくるのはいつだろう。

家族間の会話は少ない。

兄貴はコミュニケーションをとるのが得意ではないし、今の母さんに会話に参加する能力はない。

テレビに他に向ける先のない意識をむけると、8チャンネルでお笑い芸人が必死にコントをしていた。

毒舌なキャラクターと自虐的なキャラクターとが織り交じっており、斬新ではある。

だが、肝心の笑いの間の取り方が下手くそなため、ちっとも面白くない。

兄貴のフォークで皿をひっかく音がとまった。

俺はつまらない芸人から兄貴へと目線を移した。

不可解なことに、兄貴は声を上げて笑っていた。

ただ、表情はほとんど緩んでない。

顔だけみれば、苦笑とさえとれる。

疑問に思い兄貴の視線を追った。

すると、24型のブラウン管のディスプレイに映りこんでいる、母さんの無表情な顔に行き着いた。

親戚がいらなくなったから、といってくれた家のテレビは、いらなくなっただけあり輝度が著しく低いのだ。

勘ぐらずに、俺も声を上げて笑うことにした。

母さんは左手で持っていたご飯茶碗を置いて、首だけ下げて、大袈裟に笑う俺の顔を覗き込んだ。

すると、何を思ったか母さんも無感情な薄ら笑いを浮かべた。

笑っていたときの俺の顔がよほど滑稽だったのだろうか。

それとも、誰かが笑っていると自然と自分まで可笑しくなってくるあの感覚が、母さんに残っていたというのか。

そんなわけがない。

母さんは死んだのだ。

証拠にこんなに下品な笑い方をしている。

でも、今この時ぐらいは、何も考えずに笑っていてもいい気がした。

テレビではコントをする芸人が入れ替わっていた。

芸人は総理大臣の格好を真似て、今の政治を風刺していた。

俺達はこの番組が終わるまで、ずっと笑い続けた。

どんな芸人がでてきても面白く感じた。

久しぶりに、我が家に笑い声が響き渡った。



 ピンクの花びらが風に迎えられ、そっと枝を離れる。

桜は今日も華麗に死んでいく。

今日は月曜日、ようやく家庭から解放される。

今朝は目覚めが良かった。

早く学校へ行きたい、早くこの家から開放されたい、その思いが俺を駆り立てる。

しかし、今日も遅刻をしなくてはならない。

これでとうとう二十一回目の遅刻だ。

学校は俺の安息の地といえる。

それにも関わらず、遅刻がかさむのにはそれなりの理由がある。

俺は毎朝七時に起きる。

毎日、夜中の三時ごろに母さんの様子を見る必要があるため、これ以上早い時間には起きることが出来ない。

学校は八時半から始まる。

俺の通学時間は十分足らず。

通学手段は徒歩だ。

俺が朝決まってすることは歯ブラシと洗顔だけだ。

この二つは、学校での俺のイメージを守るための最低限のエチケットだ。

朝食は抜くか、どうしても腹が減った時は通学途中にあるコンビニで、おにぎりを買い喰いしている。

コンビ二に寄る時間を考慮しても、八時に家を出れば余裕で学校の朝礼には間に合う。

それなのに、なぜ俺が七時に起きるかというと、母さんを縛り付けるのに手間取るからだ。

(縛るといってもなるたけゆるめにしているし、手の届く範囲に飲食類を置き、衛生面を考慮して介護用の紙おむつを履かせている。あくまでも近隣の人々、そして、母さん自身の安全を守るための最低限度の束縛だ)

大概は、母さんも抵抗することはなく、四、五分もあれば兄貴と俺で簡単に縛り付けることが出来る。

しかし、母さんの状態が不安定な場合は、縛るために要する時間が格段に長くなる。

一度暴れてしまったら、俺と兄貴の二人がかりでさえ押さえつけるのに苦労する。

ましてや兄貴は仕事の都合から、八時十分には家を出なくてはならない。

そうなれば俺と母さんのタイマンだ。

俺が必死で母さんを押さえつけようとすれば、母さんは死に物狂いで俺から逃げようとする。この鬼ごっこは長いときには一時間続く。

最終的に母さんは疲れ果て観念する。

俺は母さんに泣きつかれる。

やめろ、と野太い声で連呼される。

俺は母さんのためなんだと、言葉を理解するわけでもない屍に対して、無意味に優しく言い聞かせる。

あるいは、自分に言い聞かせているのかもしれない。

何かから逃げ惑っているという点では俺だって同じなのに、追いかける側を演じるのはしっくりこない。

その後の俺は確実に汗だくなため、ワイシャツを取り替え学校へと急ぐ。

そう、今日も鬼ごっこが始まった。

結局、鬼を捕縛し、学校へ着いたのは十時ごろだった。

通学の途中、ずっと今日の遅刻の言い訳を考えていた。

この時間だと、朝礼は終わっているわけだから、期限は終礼までということになる。

ウケないとわかっていながら、全力で挑み続ける。

そんな自分が好きだったりする。

俺はいつも通り、気持ちを入れ替え、眠たげな表情を作り、内心では意気揚々と授業中の教室へ入っていった。

いつか教師に言われたことがある、メリハリが大事、と。

納得。

ただ、その頃とはメリハリをつける対象がだいぶ違う。

読了ありがとうございます。

かなりの長編になっていて、物語が佳境に入るまでもうしばらくかかります。

最後までお付き合い頂けたら幸いです。

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