表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気力をなくした元バーテンダーが地獄あたりでバーをやるハメになりました  作者: 高山シオン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/47

西馬と地獄のゆかいな仲間たち

「おぅい」

 店の外から呼ぶ声がする。

「おぅい!おいらも仲間に入れてくれよぉ」

 寂しそうに言ってきたのは、トラパンだった。彼は体が大きすぎて、狭いバーの入り口から入れず、店の外から指をくわえて覗きこんでいたのだった。


「ムリだよっ!」

 デコ目が意地悪く言う。

「仲間に入りたかったら、そのデカい腹を引っ込めろよ!」


「そんなぁ……」

 トラパンが情けない声を出した。今にも泣きそうだ。獄卒なのに。鬼、みたいなものなのに。

 そもそも、腹がどうのいう次元ではない。もちろん、腹も出ているのだが、それ以前に、全体的に体がデカすぎて、バーの入り口を通過することができないのだ。自力ではどうにかできる話ではない。猫型ロボットか何かに、スモールライトを出してもらうとかしないとムリ。

 

 そんなトラパンを見て、西馬は子供の頃に読んだ「泣いた赤鬼」を思い出した。でも、どんなストーリーかは思い出せない。赤鬼と青鬼がいました、という冒頭の部分と、赤鬼が泣きました、というシーンだけが、ふわっと浮かんできたのだった。


「つまんないの……」

 トラパンは、ひとり、しょんぼりと店の入り口から離れようとした。そして、ドン!と誰かを突き飛ばした。

 ドン!ではなく、ボウン!だったかもしれない。トラパンの出っ張ったお腹に、誰かがぶつかって、吹っ飛んだのだ。


「キャッ!」

 女の悲鳴が上がった。ハズキルーペののコマーシャルのごとく。

「わぁ!」

と、トラパンも悲鳴を上げたが、おっとりした口ぶりのせいで、ちっとも驚いているふうには聞こえない。

「あれれ?」

 トラパンが周囲を見回す。自分のお腹にぶつかった奴がいたはずなのに、姿が見えない。

「消えちゃったのかなぁ……」


 と、その時だった。ガサガサ!と、怪しい林の入り口の草むらが動いた。トラパンが立っている位置から2メートル以上は離れている。

 何者かと眺めるトラパン。

 ガサガサ……の後、ガバッと勢いよく立ち上がったのは、長い髪でほぼ顔が見えなくなった細い女だった。某・ホラー映画の主人公(?)のような姿だ。「きっと来る」やつだ。


「ちょっと!」

 髪を振り乱して、女が怒鳴った。その目が怒りに燃えまくっている。彼女は、衆合地獄の女だった。

 つまり、普通の人間の女ではなく、地獄で罪人を痛めつけるのが仕事の「獄卒」のひとりだった。トラパンや一本角などの獄卒との大きな違いは、「容姿に優れた女」という点だ。

 

 つかつかつかつか……。

 ただでさえ怖い獄卒の女が、肩を怒らせて、鬼のような形相でトラパンに詰め寄ってきた。

「何すんのよ!いきなり女を突き飛ばすなんてサイテー!」


「お、おいら、突き飛ばしてないよう……」

 トラパンが、女の鋭い視線に耐えられず、目を泳がせながら答える。

「そ……そっちが、す、すぐ後ろに立ってたから……」

 だんだんと語尾が小さくなっていく。


「はぁ?」

 女が声を荒げる。その声たるや、鋭いムチの一振りのような勢いだったので、トラパンがギュッと肩をすくめた。

「こっちはね!あの林の中までぶっ飛んだのよ!?あんたのせいで!あんなところまで!死んだらどうすんのよ!」

 女が林を指さして怒りまくる。いや、あなたが倒れていたのは、あなたが指さしているより、もっと手前ですよ、とはトラパンには言えない。ただ、情けなさそうな顔で突っ立っていることしかできなかった。


 そんなやり取りを、バーの店内から、一本角、デコ目、そして西馬が見ている。

「獄卒って死ぬのか?」

 一本角がデコ目に聞いたが、デコ目は何か考え事でもしているのか、答えなかった。


 しばらく鼻息を荒くして怒っていた女だったが、ふと視線を感じて我に返った。一本角やデコ目に対して、凄みを効かせると、

「ちょっと、何見てるのよ!」

と、鋭く言い放った。言葉のひとつひとつが、矢のようにビュンビュンと飛んでくる感じだ。


「うへ!こわっ!」

 一本角が肩をすくめた。その頭の上を、女が放った言葉の矢がかすめていった。

「女って怖いだけだな!あんなの、どこが良いんだ?なあ」

 そう言ってデコ目の肩をポンと叩く。


「え?」

 デコ目は何故かぼんやりしていて、一本角の言葉を聞いていなかった。それどころか、顔が赤くなっている。


 そんなデコ目の様子を見て、西馬は(まさか?)と思った。

 デコ目の前で、手のひらをひらひらさせてみるが、デコ目の大きな瞳は、西馬の手のひらを透視して、その先に立っている人物(?)……というか獄卒に注がれていた。ややこしい。


(いや、まさかの、まさかだ!これは……)


 かつてバーテンダーとして夜の仕事をしていた彼は、男女のいろいろを、それはそれは、たくさん見てきた。

 だから気がついてしまった。


 デコ目の胸に、矢が刺さっていることに。それは女が放った言葉の矢ではなく、いたずらなキューピッドちゃんが放った恋の矢らしい。


(こんな場所にもあるんだ……恋なんてものが……)

 しみじみと頷く西馬なのだった……。

物語が新たな局面を迎えるっぽい(キャラクター任せ)。ゆっくり、ゆ~っくりと、進みます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ