修也の真意
奈美が扉を開けると一人の可愛らしい顔をした
俺も見覚えのある意外な人物がいた。
「こ、こんにちわ!おばさん」
そこに居たのは前の世界でも何度も会った事がある
奈美の母親の恵美さんだった。
「直樹久しぶりね。最近見ないから心配してたのよ」
「直樹一ヶ月位引きこもってたもんね。お母さん
一つお願いがあるの?」
「お願い?お金ならあげないわよ!」
「そんなんじゃない!あそこにいる彼に尋問魔法を
かけて欲しいの?」
その言葉をきっかけにほのぼのした空気から
一変張り詰めた空気に変わる。
修也の顔を鋭い目付きで見ながら恵美さんが
口を開いた。
「いくら可愛い娘の頼みでもそれは無理ね」
「お母さんお願い!!」
「奈美あなたもこの術式がどれほど危険な物か
分かっているでしょう?」
「それは分かってるけど直樹の命が懸かってるの
だからお願い」
「僕からもお願いします!!」
始めは難色を示していた恵美さんだったが
奈美と修也が必死に事の次第を説明していくと
ため息を一つつき恵美さんが口を開いた。
「修也君貴方はそれでいいのね?」
縦に大きく頷く修也。
それを確認し俺の顔をじっと見つめ口を開いた。
「直樹もそれで良いの?もし彼が言ってる事が
本当だとしたら貴方は凄い大きな困難に立ち向かわ
ないといけないのよ」
確かに恵美さんの言う通り修也が言っている事が
本当だった場合俺は犯罪組織「黒牙」に身を置く
事になるかもしれない。
そうなればかなり危険も着いて回り今までの様な
生活は出来ない。
それはギルドに入ってもそうだろうが・・・
「でも俺は何もしなくて殺される位なら最後まで
自分の能力の可能性に賭けてみたいです」
俺がはっきりと答えたのを見てクスッと笑い
恵美が口を開いた。
「直樹は昔から変わらないわね」
昔の俺も今見たいな感じだったのか??
奈美の方を向いてもうんうんと頷いている。
そうこうしているうちに修也を見つめ
何か聞き取れない言葉で詠唱が始まった。
詠唱が終わり恵美さんが修也に手を翳すと
修也の背後に死神の様な者が鎌を持ち現れた。
初めて見る光景に絶句する俺を他所に
恵美さんからの質問が始まった。
ちなみに恵美さんの術式は2つ質問が可能らしい。
「修也君貴方が直樹を組織に引き入れようと
するのは直樹を守る為?」
「はい」
死神の方を見る恵美さん。
死神は微動だにせず動かない。
どうやら修也の言っている事は本当らしい。
「貴方が過去に王都ギルドで人体実験を受けたのは
事実かしら?」
「はい」
死神はまたも微動だにせずそして低い唸り声を
上げながら渦を巻いて消えていった。
かなり神経を使うのか汗をかき疲れた様子の
恵美さんが口を開く。
「修也君が言っている事は全て真実みたいよ」
「だから言ったのに!!」
どうやら修也の言っている事は全て本当らしい。
そして何故か修也は俺を守ろうとしてくれている。
そこが引っかかり修也に問う。
「どうして昨日会ったばかりの俺をそこまで
守ろうとするんだ」
「君となら上手くやれそうって思うのと
何か不思議な力を感じるというか?まぁ勘だね」
どこまで楽天的な奴なんだ。
まさかの勘だとは思わなかった。
しかし不思議と嫌な感じはなく俺自身も強くなった
事である程度の自信がついたのか??
俺ならやれるんじゃないかと思う様になっていた。
その後恵美さんにお礼を言い修也と奈美の三人で
俺のアパートに戻る事にした。