混沌の目
「あれが言ってた目だよ」
街の入り口で呆然とする俺達に声をかける店主。
我に返り街を見渡すといつもは田舎ながら活気の
ある街だが今日は静まりかえっている。
「マダラ、あの目」
「ああ、間違いない!シャックスだ」
俺の問い掛けに答えるマダラ。
不穏な空気の中俺達に声をかける人物。
「おい、俺らの街に何か用か?」
声をかけて来た人物の方を振り返るとそこには
如何にもといった服装をした盗賊。
「お前らの街?まぁそれは置いといて、俺達は
食料の買い出しに来ただけだよ」
「ほぉ、食料をねぇ・・・」
「アキさん!!危ない!」
キン!!
会話の途中で盗賊達がアキさんに襲いかかる!
その間に奈美が割って入り攻撃を受け止める。
「ちょっといきなり何なのよ!!」
奈美が声を荒げるが盗賊達は下卑た笑みを浮かべな
がらこちらを向き口を開く。
「俺達はこんな田舎町で名もない盗賊で終わる訳に
行かねぇ!もっとどでかい事をやるんだよ!
あの犯罪集団 牙のようにな!!」
その言葉を皮切りに四方八方からうようよと
如何にもな風貌をした輩たちが姿を現わす。
「マダラ、これは?」
「シャックスの黒のカリスマだな」
俺の問いかけにマダラが答える。
考えていた事が確信に変わる。
どうやらこの街に出現したあの目はシャックスの
黒のカリスマの能力を宿している。
それに伴いこの街の黒き心を持つ者達が暴れ出した
そこで俺に一つの仮説が浮かびあがる。
「もしこの目が世界中に出現したら・・・」
俺の呟きにマダラがそっと頷く。
これは・・・事は一刻を争い。
「何をごちゃごちゃ言ってやがる!!」
俺達に痺れを切らし盗賊達が一斉に襲いかかって
くる。
戦闘力は大した事は無いがいかんせん数が多い。
「事情が変わった!即刻こいつらを倒す!」
俺の声に全員が動き出す。
「ひ、ひぃぃ」
食料品店の店主の悲鳴が聞こえる。
そこにガランが割って入る。
「親父少し隠れていろ!すぐに終わる」
ぶんぶんと顔を縦に振る店主。
圧倒的な戦力差に一人二人と倒れる盗賊達。
「でもまだ数が多いなぁ・・・よし!!」
奈美が何やら呪文を唱える。
奈美から放たれた光の魔法が盗賊達を捕縛していく
魔法の得意な奈美やガランの活躍によりかなりの
時間短縮に成功した。
後残すは盗賊のリーダーのみ。
「おい!最後の一人になったぞ!どうする?」
その俺の問いかけに無言で逃走を図るリーダー。
「敵前逃亡とは情けない!」
回り込んだマダラの強烈なパンチを受け吹き飛び
気絶してしまう。
先程までの怒号が止み一瞬の静寂が街を支配する。
「お、終わったのか?」
物陰からひょっこりと店主が顔を出す。
それに対して頷き答えを返す。
「み、皆んなぁ!!終わったぞ!!」
店主の声にどこからともなく姿を現わす街の人々。
先程までの怒号とは一転歓声が響き渡る。
どうやら盗賊達に怯え隠れて暮らしていた人々が
かなりいた様だ。
「あんたらはこの街のヒーローだ!
本当に助かったよ!何か礼をさせてくれ」
店主が俺に言ってきた。
盗賊達が目を覚ましてまた悪さをしないように
魔法で檻を作っていたガランが口を開く。
「我達は急ぎの用がある。礼は良いから食料と酒を
売ってくれ」
「世話になったあんたらから金は取れねぇ。
あこの建物が盗賊達のアジトだ。
あそこに奪われた食料なんかが置いてある。
好きに持って行ってくれ!」
店主や街の皆んなの声に甘える事にして盗賊達の
アジトから食料等を調達させてもらう。
当面の食料を確保した俺たちは口々に礼を言う
街の人達を背に神殿に戻る事にする。
この街で起きた事が世界中で起こっているかも
しれない・・・
この街の盗賊達は弱かったがもっと実力のある者が
動き出したらと思うとぞっとする。
この世界は一体どうなっていくんだ・・・