日常の崩壊
初めまして!初投稿となります。
誤字・脱字はなるべく少なくしようと思いますが、もし確認された場合お手間でなければ教えて頂けると嬉しいです!
どうも皆さん、はじめまして。僕の名前は御幣島 悠斗。
成績も平均。運動神経も良くもなければ悪くもなく、容姿については中の中。
ごくごく一般的な、本当にどこにでもいるような男子高校生だ。
そんな僕は今日も、朝食を食べ、愛車の自転車で学校に向かい、授業を受け級友と話し、部活をしていない僕は、放課後になるとすぐに家に帰り、晩飯を食べたら風呂に入って寝る。
そんな何も変わらない日常が過ぎていくのだと思っていた……
つまり、このような言い方をするという事は、僕は今日この日、非日常の世界に足を踏み入れる事になるのであった……
☆☆☆☆☆☆☆
けたたましい音を立てて鳴り響く、目覚まし時計の音と共に、僕の朝が始まった。
ベットから転げ落ちて、目が覚めると床にいるのも……大体、いつも通りだ。
目覚まし時計を止めると、時計の針は六時を指していた。
僕はそのまま食卓へ向かい、既に準備されていた食パンと目玉焼きを食べ、鏡の前で、だらしない顔をした僕と対面しながら歯を磨き、学校へ向かう為の準備をした。
ここで全く関係のない話をするが、目玉焼きに醤油をかける人やソースをかける人、ケチャップをかける人もいれば、挙句の果てにマヨネーズをかける人もいるが、マヨネーズとケチャップを混ぜたものを目玉焼きに付けて食べるのが、僕流の食べ方だ。因みに家族からの理解は得ていない。
そうこうしているうちに、準備を終えた僕は、いつものように愛車の自転車に乗り、学校へ向かった。
どうでもいい事ではあるが、電車通学を避ける為に、僕は自転車で通える高校を選んだ。
友人の中には電車通学が苦痛になり、高校中退したやつもいる。本当にどうでもいい事ではあるが。
通学途中、僕は一匹の黒猫と目があった。通り過ぎる数秒の出来事であった。
だが、何故かはっきりと覚えている。
黒猫の綺麗な青色の瞳が印象に残った。青色と言うよりは、吸い込まれるような空色だ。
黒猫の瞳に心を奪われていると僕は電柱にぶつかった。
「うわっ!」と声が漏れ、なんとか体制を立て直し振り返ると、既に黒猫の姿はそこにはなかった。
その後は何もなく無事に僕は学校に辿り着いた。
いつものように自転車を停めて、いつものように教室に入った。
そして、いつものように教卓から見て一番後ろの窓際にある自分の席に座った。するとこれまたいつものように…
「みーてーじーま! おはようさん!」
この声の主は、クラスメイトの友江 大輝だ。あだ名は「ユウダイ」。
ちなみに中学の時に僕が付けたあだ名だ。
こいつとは小学校が別であったが、なんと同じそろばん教室に通っていた。
その為、小学4年の時からの腐れ縁である。
そろばん教室に後から入会したのはユウダイなので、僕の方が先輩なのである!
……いや、もうそろばん教室には通っていないので、関係はないんだけどな。
「おう。おはよう」
「御幣島ぁ、昨日のドラマみたかぁ?」
「あぁ、見た見た。秋空だっけ? お前の好きなアイドルが出てる奴だろ?」
「そうそう! 今回のみなちゃん、マジ可愛かったぁ! でも、このドラマの最後に、キスシーンとか来た日には俺……俺ぇ……」
「何一人で暴走してんだよ。あ、そろそろ予鈴なるから、自分の席に座っとけよ?」
「へいへ~い」
暫くして予鈴がなり、1時間目の授業が始まった。いつもと変わらず。いつもと同じように。
いつもと変わらず昼休みが来て、いつもと変わらず午後の授業も終わっていった。
そう、本当にいつもと変わらない日常が続いていた……
「よう、御幣島ぁ。今日もすぐに家にかえるのか?」
「そうだな。学校にいてもする事ないしな。ユウダイは今日も部活か?」
「まぁな。大会も近いし、張り切らないとな!」
「そっか、頑張れよ。じゃ、俺帰るわ。またな。」
「おう、またな!」
そうして僕はいつも同じように、家に向けて帰ったのだ。
いつものように自転車に乗り、いつものように帰っていると、またあの黒猫がいた。
黒猫は塀の上を悠々と歩いていた。
何故かはわからないが、俺は自転車を停めた。
黒猫を見つめていると、吸い込まれるような空色の瞳と目があった。
ここで不思議な事に、僕は動く事を忘れて、息を飲んで黒猫の挙動を見ていた。
黒猫は塀から飛び降り、そのまま僕に近づいてきた。
黒猫は僕の周りを、グルグルと回り始め、暫くすると僕の自転車の前籠に飛び乗った。
気が付いた時には、前籠に入れていた俺のカバンから財布を銜え、そのまま前籠から飛び降りた。
――そう、僕の財布を盗られたのだ――
「え? ちょっ、待て! それ今月の小遣い、全部入ってるんだぞ!!」
事の重大さに気が付いた僕は、咄嗟に自転車にまたがり、黒猫を追いかけた。
僕は本気で自転車を漕いだが、黒猫は余裕があるのか、僕を挑発するかのように、または確認するかのように度々後ろを振り向きながら逃げていた。
そんな猫の様子を気にする事が出来ない程、僕は必死になって黒猫を追いかけた。
暫くすると黒猫は薄暗い路地裏に入っていた。
急いで僕も路地裏に入ると、そこは行き止まりになっていた。
黒猫は行き止まりにある、塀の上で財布を銜えながら座っていた。
「はぁ……はぁ……よう。黒猫さんよ。はぁ…その財布、返してくれないかな?」
息も絶え絶えの状態で、なぜか僕は黒猫に対して話しかけていた。
すると黒猫は塀から前転するように飛び降りた。
着地すると黒猫は、黒と白をベースとした、ゴシック調の服を身にまとった少女になっていた。
所謂ゴスロリという奴だな。流れるよな黒い髪の向こうには、透き通るような水色の瞳が光っていた。
――そう。黒猫が少女になったのだ――
さも当たり前で、いつも通りのような事を言っていると、思われているかもしれないが、いつも通りなわけがない。
手品かと疑ったが、今僕たちがいるこの路地裏には、少女を隠せるような場所もなく、もっと言えば猫を隠せるような場所すらなかった。
僕は驚き言葉を失い、パニックを起こしながらも状況把握をしてた。
しかし、少女は僕の様子など気にも留めず、まじまじと僕を観察した後、「ふむ」と言いながら頷いた。
「やはりのぉ……今朝見た通り、お主の中に滞在しておる、マテリアルの量は半端ないみたいじゃのぉ」
「……え?」
聞きなれない言葉と、今起きた出来事により、僕は目を白黒させて、アホみたいな顔をしながら、アホみたいな声を出してしまう。
少女は綺麗な黒髪をかきあげながら。
俺を舐めるように見た後に「そうかそうか……」と言いながら、何やら勝手に納得したように頷き始めた。
「やはりのぉ。お主には、コアが見当たらないようじゃな。これだけのマテリアルをもっておるのに、コアがないとは、なんとも不憫な話じゃのぉ……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。さっきから言ってる事がわかんねぇぞ?! まず、なんで猫が人間に変わってるんだよ! マテリアルとかコアとかなんなんだ!?」
「まぁまぁ、慌てるでない。色々と説明する前に、先にこれを返してやろう。ほれ」
少女に言われて財布を追いかけていた事を思い出した。
少女の手から財布を受け取った後、次は盗られないようカバンの奥の方にしまい込んだ。
少女はツカツカと、回るように歩き始め「何から説明したらよいものか……」と呟く。
「……お前は……何者なんだ?」
まだパニックから立ち直っていない頭をフル回転させながら、この状況を把握する為に少女に質問した。
「おお、そうじゃのぉ。まずはそこから説明しようかの。妾の名前は"シャルル・ヴェルディン・ムース″じゃ。敬愛を込めて、シャルル様と呼んでくれてもよいがのぉ」
僕は軽い頭痛を覚え、眉間を指で押さえながら
「つまり、名前から察するに、シャルル様は日本人じゃないのか?」と問いかけてみた。
「にゃはっは! 本当に言うとは面白い奴じゃのぉ。さて、その質問の答えじゃが、まず前提として、お主らの言う人の枠には属さぬとでも言っておこうかのぉ」
「はぁ?人の枠には属さない? 一体どういうことだ?」
「そうじゃのぉ。どう説明したらよいものか。……そうじゃ。お主は童話や御伽噺で、妖精やら精霊等という言葉を、耳にした事はあるか?」
「ああ、ピーターパンに出てくるティンカー・ベルとかだろ?」
「そうじゃそうじゃ、なら話が早いのぉ。妾はその類似の存在と言えるわかるかのぉ?」
「はぁあ!? お前、何言ってるんだ? あれは御伽噺の中に出てくる、空想上のものだろうが!」
「にゃっはっは!人間という奴は、自分が理解出来る範疇を超えると、すぐに狼狽え始めると聞いておったが、誠のことじゃったようじゃのぉ。ま、すぐには信じろと言う方が難しい事は妾も理解しており……が、ひとまずは、そういう事で納得してくれると助かるかのぉ」
「……わかった。とりあえず妖精や精霊の類って事で納得しよう」
正直に言うと。まったく理解が追いついていない状態ではある。
だって考えてみろ。妖精? 精霊? そんな事を言われて、はいそうですか。
なんて納得出来る事なんかじゃ決してないと思う。僕はそう思う。
……しかし、仮に妖精だと仮定する事で、目の前で猫から少女に変わった事への説明にもなりうる。
なので、一旦僕はその仮定を信用するという事で納得をした。ただ、まだ目的が分かっていない。
「……シャルル様。別の質問をしたいんですが、なんで僕の財布を盗ってここまで誘い出したのでしょうか?」
「ふむ、良い質問じゃの。三つ理由があっての、一つ目は人前でこの姿に変わる事に躊躇ったのじゃ。そして二つ目がこの姿にならんと、お主のコアが確認できなかったからじゃな。」
「っていうか、そのコアとかマテリアルって一体なんなんだ?」
「なんじゃ、そこから説明が必要か?ほんに難儀なもんじゃのぉ」
「知ってるのが常識みたいな言い方だけどな、こちとらそんな言葉初耳なんだよ」
「ふむ、話しが長くなるがよいかの?」
「出来るだけ手短に、そしてわかりやすく頼む」
「にゃはっは! 難しい注文じゃなぁ。まぁ、善処はするが余り期待するでないぞ。」
シャルルは「ふぅ…」とため息をつくと説明を始めた。
「まずは。マテリアルから説明しようかの。マテリアルと言うのは、体内に流れるエネルギーの事じゃな。そのエネルギーは魔法に変換する為に使われるものなのじゃが、魔法に変換する前のエネルギーの状態の事をマテリアルじゃ。ちなみに種族や生まれによって呼び方は様々で、魔素や魔力と言う者もおるが、一般的にはマテリアルが主流じゃ。ここまでは大丈夫かの?」
「全然大丈夫じゃねぇよ!魔法って言ったかお前?」
「ああ、魔法と言ったぞ? そう言えばそうか、お主は知らぬかったのかも知れぬが、この世界には魔法が普通に存在しておる。理由は知らぬが、お主ら人間達の中で、魔法を操る者たちは表立って行動を起こすような事はせんようじゃし、仮に表立って行動した輩は秘密裏に隠ぺいされておるようじゃがな。」
何言ってるんだこの子は。この世界に魔法があるだって?
魔法なんて、ゲームや物語の中だけじゃなかったのかよ。
表立って行動しない理由なんて、人間社会で魔法なんて使う奴が現れたら、世界中大パニックになるからに決まってるだろう
……って事は、やっぱり存在しているとも言えるのか?わからなくなってきた。
「はぁ……わかった。この世界には魔法がある。その前提で続きを聞くから早く言ってくれ」
「すぐには理解できぬかもしれないじゃろうから、ひとまずはそういう物だと思って聞いてくれれば良い。さて、話の続きじゃが、魔法を操る上でマテリアル以外にもう一つ必要な要素があってのぉ」
「それがさっきお前が言ってた、コアとかいうやつか?」
「なんじゃ、察しが良いの。お主が言うた通り、もう一つの要素はコアじゃ。正式にはマテリアルコアと言っておる。こちらも呼び方は様々で、魔核と言う奴もおる。このマテリアルコアを通して初めて魔法は具現化するわけじゃな。」
「そのコアが、僕にはないって事なんだよな?」
「そうじゃ、何故か分からぬが、お主にはコアがないのじゃ、なのにお主は、平均的な魔導師10人分のマテリアルがあるのじゃ」
この辺りで一旦話を整理すると
・マテリアル:魔素/魔法力。ゲームで言うところの、MPのようなもの。このマテリアルを消費して、魔法を操るそうだ。
・マテリアルコア:魔核。魔法の核のようなものらしい。マテリアルをこれに通す事によって初めて魔法として発動するらしい。
うん……。
もう完全に、オカルトの世界だなこれ。
もういいや、財布も取り返したし、これ以上、この子の相手をすると、頭がおかしくなりそうだ
……そうだ、帰ろう。うん。おうちに帰ろう。
「そうか。なるほど。よくわかった。じゃ、僕、家に帰ります。君も早くおうちに帰るんだよ」
「な、ちょっと待つのじゃ!」
そう言い残して、踵を返し立ち去ろうとしたが、そうはいかなかった。
この電波系黒髪ゴスロリータは、いつの間にか、僕の目の前に立ちふさがっていた。
もう本当に勘弁してくれ。
「まだ話は終わっておらんと言うのに、帰ろうとするとは、一体どういうつもりなのじゃ。全くもって、せっかちな男じゃの。まだ本題にすら入っておらんと言うのに……」
「まだ話があるのかよ。ていうか、まだ本題にすら入ってなかったのか? 今までの話は、前座って事かよ?!」
「前座以前の話じゃな。お主はまだ観客席にすら入っておらぬ。ただパンフレットを、見終わっただけじゃ」
「これだけ時間を掛けて、まだパンフレット見ただけなのかよ!」
「まぁ焦るでない。本題は極々短時間で終わる。少し話し合いの場を設けるだけで済むものじゃ。妾としても、魔法について1から説明せねばならぬと想定してなかったのでのぉ。」
「いや、そこは想定しておけよ!」
このままでは一向に話が進まないな。
ま、本題は短く済むようだし、さっさと終わらせて、家に帰るとするか。
「それじゃ、本題をさくっと説明してくれ」
「そうじゃな、このまま長々と話しておっても先に進まぬ」
少女はそう告げると、ふわりと飛び上がり塀に腰掛けた。そして、少しの間をあけた後に、こう告げた。
「端的に申すと、先ほど言っていた3つ目の理由が本題なのじゃ。……妾はお主に、取引を申し込みにきたのじゃ」
「取引? 一体何を言っているんだ?」
「妾はお主のマテリアルの多さに興味を惹かれた。それ程までにマテリアルを内包しているにも関わらず、コアがないなぞ、珍しいとも言えるし、何よりも不憫じゃからの。じゃから、妾はお主に魔法を扱える術を与えようと思うておった。その代わりに、妾の頼み事を聞いて欲しいのじゃ」
「はい? さっきコアがないから、僕には魔法が使えないとか言ってなかったか?」
先ほどの話、つまり少女が言うパンフレット的な話の中で、魔法を使う為にはマテリアルとマテリアルコア、その二つが揃って、初めて魔法は使えるものだと説明を受けた。しかしながら、僕にはマテリアルコアがない。いや、実際には知らんが、目の前のこの子がそう言った。よって、僕には魔法は使えない、はずなのだ……。
「そうじゃ、確かに先ほどお主が言った通り、今のままではお主には、魔法は使えぬ。それもそのはず、通常はコアがなければ、一人では魔法を使う事が出来ぬのじゃからな。じゃがのぉ、お主が妾と契約……いや、取引をする事により、お主は魔法を使う事が出来るのじゃ」
「まてまて、今契約とか言っただろ!?」
「にゃっはっは! まぁ、気にするでない」
「気にするわ! まぁ、いいか。で、お前と契約だか取引だかをすると、マテリアルコアが貰えるか?」
「半分は正解じゃ。マテリアルコアは後から誰かに譲り受けられるものではない。生まれ持ったものじゃからの。じゃが、マテリアルコアがなくとも魔法を操る術はある。妾はそれをお主に授ける訳じゃ」
「なるほど。で、何をしたら僕は魔法を使えるようになるんだ? それ相当の代償が必要なんだろ? まさかとは思うが……魂と引き換えとか言うんじゃないよな?」
「たわけが。そんな訳なかろう。魂がなくなっては、魔法を使えるようになっても意味がないであろう。……代償ではないが、妾はお主に頼みたい事があるのじゃ」
「頼み? 一体なんなんだ?」
「大雑把に言うと……童を助けて欲しいのじゃ」
「俺が? 助ける……?」
「そうじゃ。まぁ、助けると言うと少々大袈裟じゃが、まぁ、つまりは、そういう事になるのぉ。端的に言うと、お主のマテリアルを妾に分けて欲しいのじゃ」
「僕のマテリアル?」
「そうじゃ。妾が現世で、この姿を維持する為には、マテリアルが必要なのじゃ。じゃが、マテリアルはそうホイホイ集める事が出来ないものなんじゃよ。他人のマテリアルを奪うか、譲り受けるか、自らの力で生み出すか……。妾は現世では自ら生み出す事が出来ぬ。かと言って、害無き者から奪い取るような真似もしとうない。じゃから、お主からマテリアルを定期的に譲り渡して欲しいという訳じゃ。」
「なるほど、な……理解できたような、出来ないような……」
「しかしまぁ、今すぐマテリアルがなければ消えてしまうという訳でもない。つまりは、急を要している訳でもないという事じゃ。言わばこの取引は、妾の単なる気まぐれじゃよ」
少女はくるくるとその場で回りながら、続く言葉を紡ぎ始めた。
「故に今すぐ返事が欲しい訳でも、妾としてはお主が取引に応じるかどうかも、どちらでもよいのじゃ。単純にお主に興味があって、こうして近寄っただけなのじゃからのぉ」
少女はそう言うとぴたっと止まり俺を指差した
「お主程のマテリアルがあれば、妾にマテリアルを分け与えたところで、何かがどうかなるという事はない。つまり、お主にとってはデメリットはほとんどない取引という訳じゃな。じゃから、単純に魔法を使いたいかどうかだけで考えれば良いのじゃ」
魔法が使いたいかどうか、か……。
興味がないと言えば嘘になる。
魔法が使えれば、箒を使って空を飛んだり、不思議な力を使えたりする訳だ。
想像するだけでロマンが溢れてやばいな。
だが、是が非でも使いたいのかと言われれば、そうでもない。
常識的に考えてみれば、人様の前で、いきなり魔法なんてぶっ放した翌日には、新聞のトップ記事待った無しだ。つまり魔法を使える事を隠しながら生きていく事になる。
……。
「さて、と。そろそろ日も暮れる頃じゃ。立ち話はこのくらいにして、お主の家にでも行こうではないか」
「はぁ?! なんで僕の家なんだよ!」
「まぁまぁ、良いではないか。お主の返事が出るまでの間じゃ、それにのぉ」
少女がその場でバク転すると、また黒猫の姿に戻っていた。
『この姿ならば問題あるまいて』
「はぁ……もう、勝手にしてくれ……」
――これが僕の非日常の始まりであった――
※毎週月曜日に更新予定!更新が遅れそうな場合は、活動報告でお伝え致します!