遠距離
好きと嫌いの交差。
暗い部屋に零れる、「ただいま」。
この家には、私以外の記憶はない。
私はあの笑顔も温もりだって知っているのに。
「会いたい」
電気も点けずに佇む。
背中にピタリとついた扉が、やけに冷たい。
伝えたいこと沢山あるはずなのに、我が儘に愛想尽かされるのが怖くて。
貴方は私には眩しすぎる人、高嶺の花だから。
なんでこんな不毛な恋をしたんだろう。
「好きになんて、ならなきゃ良かった……!」
涙が溢れて止まらない。
拭う指は今はない。
止める術なんて見当たらない。
貴方に会うこと以外には。
「嫌いにならせてよ……」
悔しい。
私ばかり好きが大きくて。
貴方の居ない道を進みたいと思っているけど。
結局私は貴方の姿を自然に追いかける。
こんな思いするくらいなら、貴方になんて出会わなければよかった。
貴方に「もっと好きになって」なんて言わない。
だから、私に貴方を嫌いにさせて。
貴方のことを簡単に諦められるように、嫌いになりたい。
どうしようもなく好きで、でもこの状況を打破することもできなくて。
涙が出て仕方ない。
辛くて怖くて苦しくて。嫌いになりたいのに、どうすれば嫌いになれるのか分からない。
こんな思いしたくなかったよ。