舞台裏
違う舞台。
違うスポットライト。
だけど舞台上で輝く私も、舞台裏で汗を流す私もずっと変わらない。
あの頃が、一番好きだった。
季節すら忘れた。
ただ、狭い楽屋も、舞台裏の穏やかさも、鮮明に残っている。
狭い舞台、広い舞台。一人のとき、大勢のとき。
あんなに必死で輝いていて、でも少し恥ずかしかった日々はもうない。
中心で大声を張り上げたあの頃。
喋らずに雰囲気に混じったあの頃。
覚えきれずに泣きそうになったあの頃。
足が震えて仕方なかったあの頃。
ただ勝ちだけを狙ったあの頃。
皆の楽しそうな顔に嬉しくなったあの頃。
人前が嫌いで、顔は赤く頭は白く。
だけど舞台に上がるのは気持ちよかった。
人に見られるのが嫌いじゃなかった。
台詞も文章も、沢山覚えた。ひけらかすのが楽しかった。
意外に思われても、目立ちたかった。
今でも心から望むのに、その舞台も遠く遠く。
私は今、誰よりも低い位置でしゃがんでる。
見上げることしか出来ない。
あの頃の私をほんの少しも見ることが出来ないくらい、くすんでしまった。
もう一度、スポットライトに当たって、中心で拍手を受けたい。
それが勝ち負けでもそうでなくても、輝いていられたら。
そう思うから、私は今から這い上がる。
誰に何と言われても、胸を張れるようになるために。
今はただ、じめじめとした舞台裏だけど。