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My Little Rainbow  作者: kanoon
3/32

抱擁

付き合ってるのか、いないのか。

分からなくなるくらいに溶けて、同化して。




とく、とく、とく。

一定のリズムで刻む鼓動。

温かくて眠ってしまいそうな体温に寄り添って考える。

どうして私は彼の腕の中にいるんだろう、って。

付き合ってなんかいなかった。

「好き」なんて、聞いたことも言ったこともなかった。

恋愛をしている錯覚はたまにあった。

それは互いに、だと思うけど。

キスはした。それ以上はしなかった。

だからセフレって立場でもなくて。

慰め合い、寂しさを埋め合う、ただそれだけの関係。

それが少し恋愛に似ていただけなんだろう。

居心地は良かった。

干渉されないけど、人肌恋しいときは傍にいる。

抱かないのか、と思ったときも多々あった。

だけどいつも、こうして抱き締めて寝るだけ。

彼はきっと本命なのか遊びなのか何なのか分からないけど、居るんだろう。

私はまだ少し、恋と混同してるのかもしれない。

もぞもぞと頭を動かす。

もっと顔を近付ける。

彼の匂いがした。一緒に居て慣れた、落ち着く匂い。

彼は腕の力を強めた。

ずっとこうしていたいと思った。中途半端な立ち位置でいいから。


「おはよ」

寝起き特有の掠れ声。

私も少し甘えた声で返す。

くすぐったくなるような、甘い情景。

彼はまだ覚醒していない様子で、ゆっくりとキスを落とした。

軽く一瞬触れるだけのキス。それが心地良くて。

私は離れかけた唇を追いかけて、掠めるようにキスをした。

クスクス、と笑い合う。

「日曜日だし、もう少し寝ていようか」

なんて、どこの恋愛小説だろう。

でも私はまた彼の腕の中に収まる。


寝落ちる前に彼は呟いた。

「好き」の言葉を、聞こえなかったフリをした。

まだこの温もりを手放したくなかった。

何が正解か分からないけど。

一緒に居る理由なんて分からなくなるくらいに溶けて、同化して。


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