雪音
昔の携帯を取り出す。
データフォルダを漁り、ひとつの写真を開いた。
雪の写真。
それは北海道で撮られたものだった。
疎らに止まる車。ぽつりと数個浮かぶ街灯。
その他には何もない、ただ白いだけのだだっ広い土地。
夜に浮かぶ白はやけに寂しくて、でもその非日常感に憧れた。
この鳥籠の中のような、小さな小さな世界から出たことのない私にとって、それは想像もつかない世界。本に出てくる街と同じ。
渇望しても、絶対に届かないもの。
間接的にこうして知れることが、あの頃の私は嬉しかった。そんなことが多々あった。
……今はどうだ。
もう知ることの出来ない外界の様子。冷たく遮断された窓から見える範囲の物事しか分からない。
昔と変わらない、小さな世界で蹲って待っている。何かが変わるのを。
私は外を見た。窓についた水滴は拭く。
吹雪いていて、雪はいつになく厚く積み重なっている。
まるであの写真。駐車場に止められた数台の車や、広めの土地、殆ど荒らされていない真白な雪。
ここは東京なのだけど、今はどこか違うところに見えた。
夜なのに異様に明るく、これもまた異様に静かな外を見て思う。
私の弱音も、この雪は吸い込んで消してくれるだろうか。
写真の送り主は、この雪を見て思い出すか。




